熱き想い…そして決意! 9
え~っと、あのキャラ誰ですか?って感じなんですが…
キャラ変わり過ぎって怒らないでください;
― 城の貴賓用治療室 ―
細かな細工が所狭しと施された高い天井、柔らかく上等な毛布に寝台、眼は覚ましたが頭に薄っすら靄が掛かった様で自分の置かれた状況が分からない。
タカキは少なくとも此処が初めて目にする場所である事だけは分かった。
「知らない天井だ…」
言ってみたい台詞ベスト10に入っているなきっと…素で言えたよ!ちょっと、いや結構嬉しい!!…しかし、此処は何処なんだ?
起き上がろうと力を入れると「ズキリッ」と左肩の辺りが痛む。
視線を左肩に落とせば白い布がキッチリと巻かれている。
あぁ、治療されているって事は、助かったのか…ッシ、シオン!!
急いで起き上がろうとした瞬間に、何か柔らかいものに身体を固定され再び寝台に戻される。
な、何だ?!
でも何だか良い匂いが…しかもこの感触…そっかぁ~これが天国、天国なのねぇ……
「タカキィ!目が覚めてよかたったよぉ。2日も寝てたんだよぉ、タカキィ~」
うるうると涙を溜めた瞳で抱きつきながら心配そうにタカキを見つめるシオン。
耳元で聞こえる甘やかな声…ぎゅうっと抱きしめられているのに気持ちいいって…こ、これって…
「シ、シオン様!?」
自分の身体を固定しているモノがシオンと判り、慌てて身を起こしつつシオンの肩を掴むと確りと見える位置に引き剥がすタカキ。
だが瞳を潤ませたシオンとまともに目を合わせる事となり返って緊張してしまう。
「むぅ!違うでしょタカキ!シオンでしょ!シ・オ・ン!はいっ!」
「へ?あ、はい。シ、シオン」
勢いに負けて主を呼び捨てにしてしまうタカキに追い打ちを掛けるよう、シオンは上目使いでお強請り攻勢に打って出る。
「うふぅ、よろしい…でね、タカキ。あの時あんな状況だったし…もう一度聴きたいな」
「へ?な、何をです?」
「もうっ、私の事をどう想ってくれているのか、みたいな…」
最後の方は自分でも恥ずかしくなったのか声が小さくなり、視線もチラチラと忙しなくなる。
マジですか…;
「わ、わかりましたシオン…ん、んんっ…行きます///」
「…はい///」
「…好きなんですよシオンのことがどうしようもないくらい好きなんだ。これからもシオンをずっと守り続けていきたいんです!」
は、はずかてぃ…って、何言っちゃてるんだよ俺!ダメだろこんなセリフはイケメン専用機だよ。
「…こ、こんな感じで;」
「嬉しい…このまま私のせいで貴方の目が覚めなかったらって、どうしていいか分からなくなって色々…頭の中がぐちゃぐちゃになって…でも私ね、これだけははっきりと判ったの…タカキの事が好きなんだって…そう気がついたの。私すごく我儘なの。だから、これからも私と一緒にいてほしいの…」
「もちろんですよシオン」
「…タカキ」
お互いの存在を確かめ合うように、恐る恐る互いの手を伸ばし、愛おしそうにゆっくり身体を寄り添う。
シオンはその柔らかな頬をタカキの右肩に乗せるとまるで猫のように目を細めながら身を摺り寄せる。
「あぁタカキィ、ん~タカキィ…ふにゃふにゃん…ゴロゴロすりすり」
「あのぉ、シ、シオンさん…いつもとキャラが違うような;」
「だぁって~相手が出来たら一度甘えてみたかったんだもん」
「あ、あのぉシオン様?」
「だぁかぁら~…シ・オ・ンでしょ!!」
「はひぃ、シ、シオン」
「よろしい。で、なぁ~にタカキィ?…ふにゅにゅ、すりすり」
既に身体も密着しており、タカキは色々と大変な状態に…理性を保つために兎に角「真面目な話」をしなければとクラクラとする頭を無理に働かせて何とか言葉を発する。
「え~と;…こう近付けてるって事は、恐怖性は克服出来たのですね?」
「そうなの。これもタカキのおかげなんだよ…ね……タ…カキィ……んっ…」
シオンはその大きな瞳を閉じると、その細い頤をやや上へと向けてくる。
タカキも自然とシオンの頬に手を当てる。
キ、キスで良いんだよな…こ、この展開は…いいのか…ありがとう作者様~。
タカキが意を決しシオンの唇へと距離を縮めようと動き出そうとした時に「スゥ~」っと音も無く近付く影が現れると、「ルルルル~」と意味不明な泣き声を発する。
「おほっ!」
「きゃっ!」
至近距離で涙目の中年男(フォール王)を見てギョッとするタカキにつられ、シオンも行き成り登場した父王に驚きタカキとの距離を離してしまう。
嬉しさと不機嫌を混ぜた複雑な表情のフォール王は艶のあるバリトンの声でシオンへと語りかける。
「…克服出来たのだなシオンよ」
「はい!お父様。これもタカキの御蔭なんです!」
ピトッ
一度離れた身体に気が付き再びタカキへと身体を摺り寄せるシオン。
「い、いやぁ~///」
床まで付くんじゃないかと思うほど鼻の下をデレデレと伸ばすタカキに、「ギュッピィ~ン」と音が出てもおかしくないフォール王の鷹のような鋭い目が光る。
「ほぅ。タァカァキィ?…感謝しておるぞぉ!」
フォールはそう言うとシオンの視線からは見えない位置である左肩(治療した部位)に手を置くと、指がギリギリと鳴るほど力を入れて締め付ける。
にこやかな言葉と表情の筈なのに目が笑っていないフォール王に、生存本能が警鐘を鳴らし続けるタカキ。
「だがなタカキ…シオンとそのような関係はまだ早くはないか、のぅ…ん?」
ギリギリギリ…ギ、ギュウ~
く、くるひぃ、激痛で息が止まる!…今までの心地良い感触が…き、消えてゆく…
「お、王様。じ、自分もそう思いますです」
「そうだろそうだろ、関心、かん…し…ハッ!この気配は?!」
フォールの余裕の表情が消え、急ぎタカキから手を離すと、グワァ!と空気を鳴らさんばかりに扉のある方へと振り向く。
すると音も無くゆっくりと開く扉が目に入る。
だが脳内では何故か「ゴゴゴゴゴゴゴ…」と重い何かが動いているような幻聴が響き渡る。
扉の奥からはこの国の王妃であるレイナ=クレセントが笑を湛えながら入室してくる…笑っている筈なのに何処か怒気を孕んでいるような瞳がフォールを映している。
「アァナァタァ~」
「レ、レイナ!」
「全く…空気読めない人なんだから」
「だってお前、シオンがシオンがぁ」
「はぁあっ?」
レイナの王族の手本のような美しい笑顔がまるで聞き分けのない子供にウンザリとする親の顔に変貌する。
「いい?観ていれば判るでしょ!…あれはシオンから求めていったんです」
「だってだってぇ…シオンが…目に入れても痛くないくらい可愛いシオンがだよ…」
「うっさい!」
「ひぃ;」
「んとに…たぁくぅ…目に入る訳ないし!あんた城に戻って反省会よ!良い所だったのによぉ(ボソ)」
「そ、そんな…今、いいところて言った?良い所って?」
「はいはい、あなたは外で待ってなさい!」
何故か「ハウスッ!」と幻聴が聞こえる空間を切り裂くようにレイナはツカツカとタカキのベッドへと近づくと、タカキとシオンにしか聞こえないよう持っていた扇子で口元を隠し、含みのある笑顔と共に言葉を発した。
「お見苦しいところをみせちゃて、おほほほ…シオンを頼みますよタカキ殿。いえ、婿殿かしらねぇ」
「もぉ、お母様ったらぁ~///」
婿殿って…ある必殺な時代劇だと婿殿はしりにひかれるタイプやん…って、俺もそうなるん?
起きてから色々有りすぎて…もう無理…あぁファーストキス…これ夢落ちとかないよ…な…。
周りがキャーキャーと騒がしくなってきたような気がするが、重い瞼を開ける事が出来なくなったタカキは今日という日が夢落ちでない事を祈りつつ意識を手放すのだった。
夢落ちじゃないよw




