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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
第五章 夜魅・奇襲編 
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【#084《都市・クレイシス》】

【午前、イグナシル開拓地、イシス街道】



「キリヤ君がゴーレムを操る術者だったなんてね……流石に驚いたわ」



イグナシル開拓地からクレイシスへ出る為に、イシス街道を馬車で移動していた。

その道中に俺と舞は、キリヤとの一件を魅紅に報告していた。



「にしても、只者じゃないわね……あれほどの錬金をするなんて、並の魔力じゃ出来ないわよ」


「だよね。それこそ大魔導師クラスの魔力保持者じゃないと、あそこまで錬金術を多様するなんて不可能だよ」



魅紅と舞がそう言うのも(うなず)ける。

キリヤが去ってから間も無く、ヤドリ村は砂のようになって崩壊していった。

家や家具等その全てが錬金術で造られた偽物だったみたいで、最後はただのさら地になっていた。


そして魅紅から聞いた話だと、湖へ逃げてきた村人十数名も錬金術によって造られていて、しかも急にゴーレムへと姿を変えて襲ってきたらしい。


結果、村をまるまる一つ造り出した上に、二十近いゴーレムを同時に操っていたと言うことになる訳だが、まだアルカティアの知識に(うと)い俺でも分かる。

キリヤの魔力量は桁が違う。



「そう言えば10体以上のゴーレムをどうやって倒して来たんだ?」



ゴーレムは一体一体が一筋縄では行かない強さを持っていた。

見た目通りの破壊力、見た目に反した機動力、苦労してやっと倒せるあのゴーレムを、魅紅はどうやって10数体のゴーレムを一人で倒して来たのだろうか。



「あ~……えーと、言わなきゃ駄目……?」


「……」



何だ……? 今一瞬だったが魅紅の表情が強張ったような。


言いたくない事情があるのか?


だとしたら無理に聞くべきではないよな。



「いや、大丈夫。言っても良いと思ったら教えてくれ」


「え……?」


「“え?”って何?」


「まさか“いい”って言われるとは思わなかったから……」


「だって聞かれたくなかったんだろ? 親しき仲にも礼儀ありだ」


「……そう」



そっぽ向いてしまった。


……あれ? 俺、間違ったこと言ったか?


顔を前へ向けてしまったから、荷台に乗っている俺からは様子が確認出来ない。


怒ってるのか?怒らせてしまったのか?



(……やっぱり良夜って変わってるわね……普通は天塚の人間のことなら、些細なことでも聞き出して来るのだけど、この人は違う……)


「どうした、魅紅」


「え?え? 何が!?」


「いや、いま笑ってたような気がしたから」


「そ、そんなことないわ!気のせいよ!」


「そ、そうか……」



やはり怒っているのだろうか……、顔を一切向けてくれなかった……。


これ以上は、機嫌を損ねるような発言はしないようにしないとな。焼かれる。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



良夜達がヤドリ村があった地を馬車で出発してより三時間後、イグナシル水湖に一人の少女がやってきた。

白衣で身を包み、顔は帽子で見えなくなっていて、何もない開拓地の中心にある地にも関わらず荷物の一切が無く、また連れすらも居ない不可思議な少女だった。



「ふむ、ここが呪力の発信源か」



少女は目の前に広がる風景を見ていた。地面どころか湖までもが消滅し、巨大なクレーターが出来上がっている異様な風景を。



「思った以上に凄いな。半径100M四方に渡って、全てのものが焼滅させられている」



地面や木々だけではなく、湖すらも消し飛ばしてしまう力に、少女は惹かれているようだった。



「噂には聞いていたが、天塚一族の異常能力(シリアル・スキル)がこれ程までとは。 ボクの探求心がそそられてしまうじゃないか」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



クレイシスに着いた。ヤドリ村から馬車で五時間掛かったが、やっとたどり着いた。


改めて思うが、アルカティアの建築物って地球に似ているんだよな。

ここクレイシスだって、ちょっと昔のロンドンみたいな感じだし、違うと言えば所々に浮かんでいる家とか、変わった形の時計塔があるくらいだ。



「あの時計塔の円盤って魔法陣か?」


「そうみたいだね……微かにだけど魔力を感じるし」


「どういう効果のある魔法陣かは分からない感じか」


「ごめんね、余り外の世界に触れた事が無かったから……」


「いや、仕方ない。俺にだって地球の全てを知っている訳じゃないからな。個人レベルじゃ俺もお前も大差ない……パソコンも持って無かったし」


(これって、励まして……くれているのかな?)


「あれは魔力増幅装置よ」



後ろから魅紅が答えを出してくれた。



「馬車、預けてこれたのか?」


「ええ。今回は街に滞在するから、馬の世話をしてくれる所に預けて来たわ。朝昼夜食事つきに一日二回のブラッシングまでしてくれるそうよ」


「因みにおいくら……?」


「1泊15000セル」


「馬の癖に……!」



アルカティアへ来てから、通過の事を調べてわかった事がある。

単位は日本の円と同じだ。こちらで15000セルと言えば、日本でも15000円と言うことなる。


だから馬の預け賃が15000セルと言うのは破格なのである。つうか、流石はお姫様!



「そう言えば話を戻すが、魔力増幅装置って何をやるために造ったんだ?」


「うーん、そうねー。説明するのは簡単だけど、この街の名物みたいなものだし、夜になったらまた話すわね!」



人差し指を立てて、軽快に笑顔を向けてくるが……気になる。とりあえず俺と舞は、夜を待つことにした。



「さて、宿を確保して情報管理局へ向かうわよ!」


「ああ」


「何だか元気だね、魅紅ちゃん」


「本当にな」



次回へ続く!!


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