【#081《舞の強さ》】
【深夜、イグナシル開拓地・ヤドリ村】
「あれれ?どうしたの?かかってきなよ?」
「言ってくれるな……がはっ!」
「喋らないで!」
舞に治療されながら、良夜はキリヤの挑発に反応するが、腹を鋭い刃で刺された状態で無理をするから、吐血してしまった。
「舞さんの治癒じゃ回復しきれないか~残念」
「う……」
舞は唇を噛む。悔しかった。約たたずな自分が許せなかった。
私は真美お姉ちゃんのように強くないから、一緒に戦うことが出来ない。
私は麻夜お姉ちゃんのように治癒力がないから、傷を癒す事も出来ない。
舞は想い悩む。
辛かった。キリヤの言葉が胸に突き刺さる。
「……気に……するな……舞は強い……俺を助けに来た……今も必死に手当てしてくれる……」
「良夜くん……私は」
そんなこと言って貰える資格なんてない。助けたい人を助けれないで、どこに強さがあるのか。どんどん暗い事を考えて言ってしまう。
それが顔に出ていたのか、良夜は優しく微笑んで舞の頬を撫でた。
「……お前は勘違いしている……真の強さは力じゃない……」
「どういう……意味なの?」
「……心だ……お前は家族を失っても……ここまできた……人を助ける心もある……それは誰もが持てるものじゃない……俺にも魅紅にもだ……舞だけの強さ、それを自覚しろ……!お前は!あの立派な姉達の一番の強さ、精神力を持っているんだよ!ゴホッコホッ!」
痛みに耐え兼ねて意識を失ってしまったが、良夜の言葉は確かに舞に届いていた。
「心の強さ……お姉ちゃん達の本当の強さ……」
舞の中に暖かい空気が流れ込む。その空気が舞の中に眠る力を目覚めさせた。
そして、麻夜の形見である結晶が光る。
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気付くと真っ白な世界に舞はいた。
「ここは……?」
辺りを見ても何もない。床や壁といった感覚とは無縁な世界だったが、舞はどこか懐かしさを感じていた。
すると、ちょんと舞の頭をつつく感覚がする。
「誰!? ━━━!」
振り返った先にいたのは麻夜だった。
「舞、会いたかったですよ」
「麻夜お姉ちゃん……!?」
突如の亡き姉との再会。涙より身体が動く。赴くままに麻夜へ抱き着く舞、麻夜も舞を抱き返してくれる。
やがて涙が出てくる。しばらく泣いて、麻夜との再会を喜んだ。
「麻夜お姉ちゃんがいるって事は、私死んだのかな……覚えがまるで無いんだけど……」
「ふふ、違いますよ。ここは霊界ではありません。言うなれば、舞の心想領域……つまり、心の中です」
「私の……? でも、麻夜お姉ちゃんがどうさているの?」
「私達が舞に残した結晶石です。あれは私達が命尽きる前に、能力と意思を一つの結晶に具現化させて生み出した物。舞の成長や想いによって力を発動するようにしていたんです」
「そ、それじゃ、麻夜お姉ちゃんも……真美お姉ちゃんも結晶の中で生きているの!?」
「生きていると言うには語弊がありますけど、魂としては居ますね。普段は眠っていますが」
「そう……なんだ……良かった」
死んでいる事に変わりがないと麻夜は言いたかったのだが、舞に取っては姉たちが側に居てくれると、それだけでも嬉しかったのだ。
「話したい事もいっぱいあるのですが、余り時間がありません。なので、舞。手を出して下さい」
「え? こ、こう?」
麻夜は舞の手を両手で優しく握る。
「今回、貴女が結晶石を発動させたのは想いの力。その想いに応える能力を授けます」
麻夜が白く光出す。
「え、え? 能力ってどういう事?授けるって?」
色々疑問があったが、麻夜は笑って誤魔化した。
「授けるのは生前私が持っていた希少能力の『生成回帰』。使い方は頭で分かる筈です」
「希少能力!?そんな能力あったなんて知らなかったよ!?」
「ふふ、真美姉さんしか知らなかったと思いますよ?両親にも内緒にしてましたから」
笑顔で淡々と言う麻夜だが、舞は着いていけてなかった。
「時間切れですね。最後に二言━━━今回は想いが鍵になりましたが、次は成長して鍵を見付けて下さいね。私達は舞をいつでも見守っています」
その言葉と共に白い世界が無くなり、同時に舞は現実で意識を覚醒させた。
新たな力を授かって。
次回へ続く!!




