【#079《ゴーレムvs良夜!》】
【深夜、イグナシル開拓地・ヤドリ村】
鋼人形と良夜は接戦していた。火は魅紅の尽力により消火出来たが、思うように能力を使えない良夜は、徐々に圧されてきていた。
「ハァ!ハァ! くそ……!こいつら固過ぎるぞ!」
(普通ゴーレムって言ったら、ファンタジーの常識じゃ土だろう!土なら能力無しでもやり合えるってのに……!)
かつて岩をも砕いた伝説を持つ良夜でも、鋼ともなると話は別で、まさにお手上げ状態だった。
(やはり能力を使うしかないか? さっきキリヤを助ける時に使ったが、あれだけで激しい頭痛がした)
「ゴォォォォオ!」
「良夜さん来ます!ゴーレム来ますよ!?」
「チッ!こりゃ寝込むのは避けれないな!」
良夜が再び霊源結界を使おうとした瞬間、後方から炎と水が同時に放射されてきた。
攻撃してきたゴーレムは2つの放射に耐えきれず、地面へと倒れた。
「水と火……魅紅か!」
だがそこにいたのは、魅紅ではなかった。
「舞!?」
「ま、間に合って良かったぁ……」
息を切らして、汗を滲ませていたが、さっきの攻撃は間違いなく舞が放ったものだった。
証拠に舞の右手からは火が、左手からは水が纏われていたからだ。
「お前、そんな力があったのか?」
ずっと攻撃魔法等を扱えないと思っていた舞が、ゴーレムを倒す程の攻撃を出来る事実に驚きを隠せない。
「わ、私にもよくわからないんだけど……なんか、イメージしたら火とか水とか色々出せたの」
舞自身も驚いていたのか、両手や火水を見て戸惑っていた。
(イメージしたら?これがエレメントの力なのか? それに色々と言うことは……)
「とにかく助かったよ。ありがとう」
「うん!」
「そういえば魅紅は?」
「魅紅ちゃんは湖に残って、避難してきた村の人達を守るって」
「そうか。 つまり、こいつらは俺達でやるしかないって事だな」
「そうみたいだね……」
二人は迫り来るゴーレム三体見て顔をひきつらせる。
「舞はバックアップを頼む!俺が突っ込む!」
「え!?ダメだよ!能力使えないのに、大ケガしちゃうじゃん!」
「……いや、能力を使う」
「そんなの尚更ダメ!エレクシアはまだ身体に馴染んでない!今能力を使ったら、中の霊力とそれに引き寄せられる外の魔力が混ざりあって、拒否反応を起こしちゃう!」
「……っ」
「そう……なんですか?」
舞の話を聞いていたキリヤが驚いた様子で訪ねてくる。
「れ、霊力って何ですか……? 魔力と混ざると拒否反応が起こるって、良夜さんは何者何ですか!?」
色々と確信ある事を聞かれてしまう。こう言った混乱を避けるため、自分が地球と言うアルカティアの住人から見て、異世界である場所から来たことを内緒にしたかったのだが、今は緊急事態だ。
「悪い、今はゴーレムに集中する。その説明は後で必ずするから、お前も湖へ避難してくれ」
説明する覚悟は決まった。後は目の前の状況を解決する。
戦場となるこの場に子供を残すのは、余りに危険だ。本当なら舞にも避難してもらいたいが、今は少しでも戦力が欲しかった。
いざとなれば、我が身を犠牲にしてでも舞を逃がすが、そうなった時に二人も守りながら避難させるのは難しい。
だからこそキリヤには立ち去ってほしかった。
「良夜さん前!」
「!?」
ゴーレムが走り出した。
「あの図体で走れるのか!?」
これではキリヤを避難させれない。三体の内一体でも、キリヤの方に行ったら直ぐに追い付かれてしまう。
「くそ! こうなったら、三体倒すしかないか……!」
「良夜くん、5分です!5分ぐらいでしたら、能力をセーブすれば反動も小さくすみます!」
「セーブして5分……」
ゴーレムが良夜達の間合いに入った。数トンにま及ぶ威力の拳が降り下ろされる。
バガァッ!と地面は真っ二つに割れ、捲れ上がる。
三人とも潰されてしまったのか。
「……ならさ、全力なら何分だ……?」
砂煙で黙視できないが、声だけは聞こえる。そしてゴーレムの拳が持ち上がっていく。
「全力がどのぐらいか分かるけど……多く見ても1分と考えてくれれば良いと思う」
「ハッ!1分か……上等!相手は魅紅ですら一体倒すのに2分程要した。ここまで分が悪い喧嘩は久しぶりだな!」
砂煙が晴れて良夜達が見えるようになる。全員無事だった。霊源結界の羅生で完全に防がれていた。
キリヤと舞は良夜の後ろで守られていて、ピンチにも関わらず良夜は楽しそうに笑っていた。
「30秒で終わらせてやる!霊源結界“弐ノ型・霊装”!」
銀色の光が良夜に纏われていく。結界のエネルギーを、身体へ纏う事で身体強化した。
良夜はゴーレムの拳に両手で触る。
「あんのクソ師匠の技なんて使いたく無かったが……!八卦無天流“双天手”!」
ドパァァァッン!
破裂したかのような音と共に、ゴーレムが吹き飛んだ。圧倒的な質量のゴーレムが吹き飛ばされた。
感情の無いゴーレムには、この凄さが分からないが、舞やキリヤは唖然としていた。
「魔法……じゃない……ただの打撃で?」
「……すごい……」
「正確には掌打。中国の武術をベースに、あらゆる格闘技を混ぜて作った我流ってクソ師匠は言っていたが……って、言っても分からないよな」
はは……と軽く笑い飛ばすが、凄いことには代わりなかった。何せただの体術で、ゴーレムを吹き飛ばしたのだから。
「まあ、その辺の説明も後でするから、今は戦いに集中しよう!」
「う、うん。そうだね!」
起き上がるゴーレム、他二体も向かって来ている。
「砕いてやる!」
次回へ続く!!
どもども、焔伽 蒼です!
お待たせいたしました!やっと投稿できました。去年もそうでしたが12月は忙しく、ペースが遅れてしまいました。
そして、遅れたのにはもう一つ理由がありまして、今回から焔伽蒼が投稿している二つの作品「俺はリア充になりたい」と「未来の彼方」を再開することにしました!
元々投稿停止するつもりはなく、休止状態になっていた二つですが、見てくれている方もいるという事で、改めて投稿再開させて頂きます。ペースはアンノウンスキルより遅いかもですが、更新してくのでよろしかったらどうぞ。
ちなみに俺充の方はリレー形式の小説でして、僕「焔伽蒼」と、「私は白猫である」や「コール・オブ・ガンバレット」等をなろうで投稿している「堀川猫柳」さんで交互に創っています。物語の打ち合わせなどは一切していないので、新たな気分で見れると思います(笑)
他にも二人の作家さんがいたのですが、わけあって参加できなくなってしまいました。申し訳ございません。
ミラカタは僕の初投稿長編作品です。主に武術や学園がメインです。
では!