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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
第四章 鋼人形(ゴーレム)と傀儡少年(パペット)編 
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【#078《ヤドリ村への襲撃》】

【深夜、イグナシル開拓地・ヤドリ村・キリヤ宅】



「良夜!何が起きてるの!?」


「わからない……だが、奴等が来たらしい」



良夜はどこか遠くを見てるような、死んだ魚のような眼で答えた。

それに反して、事情を詳しく知らない魅紅は普通の反応を取る。



「奴等!?奴等って誰!?」



そんな言葉に良夜の中で何かが切れた。



「普通そうだよな!その反応は正しいよ!よく漫画やアニメでは、何かトラブルが起きると“奴等”って表現するけど、実際言われてみると曖昧過ぎて分からねぇよ!ちくしょー!」


「りょ、良夜が何に(いきどお)っているのか分からないけど、私達も移動した方が良さそうじゃないのかしら!?」


「ああ、そうだな……奴等が来ちまうもんな……」


「どうしたの? 何だか騒がしくて目が覚めちゃったよ~」



半寝ぼけ状態の舞と、わりと目が覚めている様子のキリヤかま自宅から出てくる。


奴等が何かは分からないが、火事がこちらへ拡大してくる可能性もある。

とりあえずは、全員で逃げようと考える。



「良夜さん……僕は大丈夫です!皆さんを連れて、この通りを抜けた先にある大通りを左へ真っ直ぐ向かって下さい!馬車でしたら半日ほどで都市へ着けると思います!」


「教えてくれるのは有難いが、キリヤはどうすんだ!?」


「僕は……村の皆を助けに行きます!」


「それなら私達もいくわ!」


「うん!一宿一晩のお礼もしたいし!」


「駄目です! 奴等が来たんですよね……。でしたら、僕は行かないといけないんです……!皆さんを巻き込みたくない!」



キリヤには有無も言わせない迫力があった。直ぐにキリヤは火事が起きている村の中心へと向かった。


良夜は直ぐに気付いた。


キリヤの瞳に宿る意思は怒り……そして、悲しみだった。そういう眼をした人間を他にも知っている。復讐者のものだ。今まで信じていた者に裏切られ、その悲しみと怒りで相手を殺そうとする者の眼。



(その先は、修羅の道だぞ……!)



━━━かつて俺が歩みかけた道。一度、修羅に呑まれれば引き返すのは困難だ。


『大丈夫です。私がついています。例え修羅の道を歩もうとも、私が良夜君の道標となり、必ず正しい道へと引き返させてあげます。だから、堕ちないで』


━━━そんな言葉を思い出す。あの時の俺には、道標となってくれる者がいた。だけど、今のキリヤには……。



「魅紅、舞……話がある」


「「うん」」



二人とも良夜の話を素直に聞いてくれた。

キリヤを助ける。だが、奴等と言う存在が気になる。ともなれば、戦闘にもなるだろう。だからこそ、キリヤの今の状態の事。それが過去に自分が陥っていた危険な状態であることを、この二人には知っていて貰いたかった。


その結果━━━俺が忌み嫌われる様なことになっても。


その覚悟の上で良夜は話した。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



村の中心まで駈けてきたキリヤが見たのは、火に包まれる村と住民達の姿だった。

それだけではない。ズシン!と大地を揺らす足音を起てて、住民を踏み潰し、握りしめ、惨殺の限りを尽くす巨大な人間━━━否、鋼人形が村を蹂躙していたのだ。



「そん……な……」



更に足音は続く。



「うそ……今までは一体だったのに……」



村を破壊し、人を惨殺していた鋼人形は一体だけではなかった。その数は三体。住民は抵抗することも出来ず、逃げ回るしか出来なかった。



「三体もいたら村の自警団じゃ敵わない……」



村人はキリヤにわき目も振らずに逃げていく。まるで統一されていなく、蜘蛛の子を散らすようにバラバラに逃亡していた。その中に立ち尽くす事しか出来ないキリヤは、当然浮いていた。



ズシン!ズシン!



大地を揺らす足音を起てながら鋼人形は近付いてくる。



「うっ!」



ビクビクしながら、固まって動けない。そこを鋼人形は巨大な拳を打ち込んできた。



「うわああああ!」


「キリヤぁぁぁあ!」



鋼人形の拳を良夜が羅生で完全に防いでいた。



「間に合ったみたいだな……!」


「良夜さん……!? どうして戻って来ちゃったんですか!」



一発で壊し切れないと判断した鋼人形は、残り二体も近付いてくる。

三体同時に攻撃をしようとしていた。

まさか、知能があるのかとも考えたが、もう一つの結論が出た。人形を操っている術者が近くにいる。

良夜はそれが有力だと思った。いくら、絶対の強度を誇る羅生でも、術者である良夜がまだ魔力と霊力の調和が出来ていなく、長い時間結界を保つ事が出来ない。

そこをあの質量で何度も攻撃されたら、5分と持たず破られる。



「キリヤ、お前を助けに来た。まあ、なんつーか……泊めて貰った恩返しだとでも思ってくれ」


「そんな……僕は何も……」



キリヤはふと気付く。村を焼いていた火がみるみる消えていく。



「どうなってるの……雨が降ってる訳でもないのに……」


「いや、これは俺も驚きなんだがな……コレ、魅紅がやってるんだよ」


「火を消すのを!?」


「どうやら、魅紅は火性質の魔法を全て操れるみたいでな。今も村に広がる火を一手に集めてるみたいだ」


「……すごい」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



湖では、逃げてきた村人が何名かいて、彼らは異様な光景を前に驚嘆していた。



(周囲の炎を手元へ引き寄せるイメージ……この感覚ね)



魅紅の両手に村の火が集まりだし、巨大な炎球が作られていた。

ただし、この技術には膨大な集中力を要するため、汗が止まらず魔力も消費していった。



(これで全ての炎を集め終えた!)


「舞!これで村の火は消えたわ!救助に行ってあげて!私はこの炎球を消してから向かうから!」


「うん!」



次回へ続く!!


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