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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
  第一説「屯朶舞過去篇」
76/140

【#070《空回りする想い》】

大地が揺れる。地震の如く。良夜達はバランスを崩し、地面に膝を付く。


一人だけ真っ直ぐ立つ支土は、からかい気味に良夜を小馬鹿にする。



「ふふ、まるでひれ伏してように見えるよ。不確定能力者、君はどうやってこの状況を打破する?」


「はっ!仲間を先に帰らせたのはこの為って訳かよ……自然現象である地震を起こすなんてとんでもねぇな……ゲームならチートキャラだぜ、てめぇは……くっ!」



強がってはみたものの、やはりまともに立つことが出来ない。


そもそも地震と言う自然が巻き起こす災害の前には、人間は手も足も出ないに決まっていた。


まして良夜は、魔法には(うと)く自身の能力も完全には把握していない。

そもそも大地が揺れている現象を防ぐ術なんてある筈がなかった。


それは宰や魅紅も同じだった。しかし唯一、その中において行動に移せた者がいる。



「大地の元素(エレメント)よ、収まってー!」



舞だ。舞は両手を地面に当てると、白いエレメントが地面へと流れていき、それは瞬く間に辺り一帯に行き渡った。そして、地震は徐々に収まっていき、やがては震動一つ無くなってしまった。



「や、やった……」



嬉しそうにしている舞だが、その反面良夜達はポカーンとしていた。



「え、えと……ご迷惑でしたか……?」



何か間違ったことをしてしまったから、皆に唖然とされてしまったのかと勘違いした舞は、気まずそうに目線を落とすが、その考え事態が勘違いだった事に気付かされる。



「すげぇ!それがお前の能力なのか!?地震を収めるとか、普通出来ないぞ!助かった!ありがとうな!」


「え?え?あ、あの……」


勢いよく舞の両手を握って、振ってくるからだ。今まで良夜の事を少し怖い人だと思っていた。でも、こんな笑顔を見せ、素直に喜ばれたら良い人なんだなと考えを改める。 



「ま、まだ……貴方と話したい事がありますから!前を見て歩む、その先にある楽しい未来……私には実感がありません。貴方の意見を聞きたいんです……っ!」



顔をしっかり見つめていってくる舞、良夜は少し考えた後、優しく舞の頭を撫でてあげた。



「えぅ……あ、あの!」



顔を赤くして、良夜に抗議しようとする。



「そんなことか。実感なんて湧く筈ないだろ?良いか、教えといてやる。何もしないは何も生まれない。それが小さかろうが、大きかろうが何かをやることは、そこに大小の差はあれど必ず前進を生むんだ。前を歩むと言うのはそういう事だ。そして、行動を起こす事はいつか自分の成長となる。楽しい未来、幸せな未来はそうして手に入れて行くものだろう!」



そんな良夜の言葉を聞いて、舞からは涙が流れてきていた。それが舞からか、それとも真美や麻夜なのか……それとも。


魅紅や宰も首を振って微笑んでいる。


心が安らいでいくのを舞は感じていた。だが、それでも不安は残っていた。

あの廡魔襲撃事件以降、今日に至るまで自分なりに努力をしてきた。それでも悲しみは消えなかった。



「でも……前を進んだ先に幸せがなかったら……」



それが本心だった。良夜の言葉は本物だ。それは分かっていた。だけど、今までの苦難や不幸から、そんな未来が想像出来なかった。信じられなかった。



「なら俺が幸せな未来へ導いてやる!これから先、不幸だなんて思わせない。辛いなんて言わせない。一人が不安なら俺と来い!」



良夜が立ち上がって、舞へ手を差しのばす。空の彼方より朝日が昇ってくる。

舞に取って良夜が、今は亡き家族に、明るく輝いて見えていた。


ここまで自分の事を想ってくれているのが嬉しくて、いっそう涙が流れる。



「……ぃ……」



零れ落ちる涙を拭いて、舞は両手の手を掴み取った。



「……っはい!宜しく……お願いします……っ!」


「ああ。これが最初の一歩だ!」


 

良夜に引っ張られるまま立ち上がる。心が暖かった。真美と麻夜が安心してくれているようにも感じた。



━━━ありがとう、真美お姉ちゃん、麻夜お姉ちゃん。

━━━ありがとう、良夜君。



ゴォッ!



「“羅生”!」



飛んできた何かを良夜は結界で防いだ。



「話も終わった所だし、そろそろ再開しないかい?」


「良いのかよ?お前に魔法は二度も“舞”に防がれてるんだぜ。魅紅や宰も空気封じや地震起こし際無ければ最強だ!」


『……』



魅紅と宰は気恥ずかしそうに照れていた。



「あれ!?何で黙るんだよ!?待てよ!何か言ってくれないと、俺が恥ずかしいだろ!?」


「しょ、しょうがないでしょ!良夜が恥ずかしいこというから……普通最強とか言われないし……」


「うっ!」


「うむぅ……最強を目指してはいたが、最強に見合う実力を持ってないだけに……恥ずかしいな」


「ガチな反応!?」


「わ、私は良いと思います!」


「フォローありがとう!でも敬語は使わなくて良いから!気軽に来てくれ!」


「はい……あ、うん!それじゃ、素直に言うの良いと思うけど、言われた側になって考えると恥ずかしいかも!」


「ぐはっ!気軽過ぎる!言い直さないで欲しかった!」


「ぷっ!あははははははは!」


『?』



突如、支土が大声上げて笑いだした。



「笑うんじゃねぇ!」


「あははは……ごめんごめん。君が打ちのめされているのが可笑(おか)しくてさ!」



最早、良夜の顔面は真っ赤だった。



「オーケー。今日は退くとするよ」


「ハァ!?何でだよ!」


「いや、今の君を見ていると笑っちゃいそうでさ!」



だからさと言葉を付け加えた。



「次会うときまでには強くなっていてくれよ。早乙女(笑)くん」


「おい!名前のあとにほくそ笑んだろ!?おい━━━」



言うが早いか、支土は眼を光らせその場から一瞬にして消えた。



「あの野郎━━━!」


(今の光……転移?)



魅紅だけが支土が消えた方法を理解していたが、どうやってその魔法を発動させたのかまでは解らなかった。



次回へ続く!!


読み終えたところで一つ。



今回のサブタイトル。



最後の良夜の恥ずかしいセリフの事を意味しています(笑)



勿論


その他の意味もあると思いますが……?

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