【#062《My Memory DaysⅩ》】
冷たい風が吹く。夜と言う闇の中で燃える炎は、禍々しさすら感じさせた。
そんな炎の中に二つの命が消えた。
屯朶雅と屯朶紗弥加、真美の両親で当然ながら妹である麻夜や舞の両親でもある。
「麻夜……」
麻夜は見てしまった。
一体いつから居たのか。いつから見ていたのか。真美は焦る心を圧し殺して考える。
いくら極限の戦闘の中に居たとは言え、国連で様々な訓練や経験を得てきた真美は、周囲に気を張り巡らしつつ、視野をも広く見る事が出来る。
その観察から麻夜が来たのは、ほんの今さっきだ。いくら思い返しても、戦闘中に麻夜の姿はなかった。となれば、いま来たと言うことになる。
どうやって、自分に気取られずに近付いたのかは分からなかったが、麻夜が来たタイミングは最悪だった。
「姉さん……いま……お父さんとお母さんが……」
真っ青になって訪ねてくる麻夜に、真美は心臓が締め付けられたかのように苦しくなる。
「さっきの……光になって二人が消えたの……私知っているのですが…………」
少しの沈黙の後、まさか……と言葉を紡ぐ。
「元素の終焉……じゃないですよね……?」
ズグンッと胸が苦しくなる。
━━━何か……何か言わなくては……。
━━━麻夜に事情を……でも、話したら堪えられないかもしれない。
━━━だけど、黙っていたら余計に怪しまれる。ただで際、誤解してもおかしくない状況だし……。
様々な言葉を考えるが……
「…………」
何も言えなかった。真美自身も、今の現実を受け止めるだけで限界だったのだ。そこにこのトラブルは、許容範囲を越えていた。
「私の……勘違いじゃないんですね……」
「麻夜……」
現実を認めたのか、麻夜の目には涙が溜まっていた。
「何をやっていたのですか……?」
「……え」
「姉さんは、何をやっていたのですか?まさか、姉さん程の実力があってただ見ていただけなんてことは無いですよね!?」
麻夜は涙を流しながら、強く真美に押しよる。
実際、見ていただけではあったが、それには理由があった。
だけど、責任感の強い真美は、その理由を話すのが逃げだと思い、見ていただけと認めた。
その後に、両親の想いを、死んだ経緯を説明した。
「何で……何で……止めてくれなかったのですか……村も焼かれ、両親を失い、私達だけでどうやって生きていくんですか……死んだ家族にも……もう会えないんですよ!?」
「麻夜……!だから、だからこそ私が守る!父さんと母さんの分も私が……!」
「両親が死ぬ間際で際も、何も出来なかった姉さんに守る何てことは出来ないですよ!」
その言葉は今まで受けてきた苦しみや痛みのどれよりも、痛く苦しかった。頭痛もしてきていた。
今の麻夜にかける言葉も、弁明する言葉もない。
ただ謝罪することしか出来ない。
「ごめんなさい……」
「謝らないで下さい!姉さ……貴女なんか家族じゃないです!」
「……っ!」
「あ……」
真美が今度こそ本当に許容範囲の限界を越えてしまった。
家族じゃない……家族を守って言われたのに、その最後に言われた言葉は真美に取って致命的なストレスを与えた。
だからこそ、涙を流し、泣いてしまった。
麻夜も見たこともない姉の泣いている姿を見て、自分の言ってきた言葉の冷たさに気付き、真美に謝ろうと近付こうとした。
「あの、姉さん……その……」
「うぅ……麻夜……?」
ズォォッ
その瞬間だった。大気から雨のような細かい黒いエレメントのような光が出現し、麻夜に向かって飛んでいった。
(あの禍々しいオーラ……まさか、そんな……!)
真美がそのオーラの正体に気付き、麻夜の手を掴んで避けさせようとしたが━━━それは間に合わなかった。
黒いオーラは麻夜の身体に纏われていき、やがて口からも体内へ入っていく。
「うぇ……ぐぅ……!姉…さ……ん……」
黒いオーラが入り込んだ瞬間、麻夜の意識は途絶えた。そして、髪と眼の色が紫色へ変色し、身体からは黒いオーラが漂っていた。
「こんなことって……」
今にも崩れそうな真美を見た麻夜は笑った。
「あはははは!無様ですねぇ、姉さん」
「麻夜……ううん、廡魔!あなたまだ滅びてなかったの……!」
「ああ、うん。廡魔って言うんですね、私の中に居るのは」
「え?」
何だか様子がおかしい。操られているように見えなかった。
麻夜の言葉には、確かに麻夜の意識を感じる。これはどういうことなんだと疑問を覚える。
「どうやらですね。その廡魔は私を乗っ取ろうとしたみたいですけど……残骸程度では私のエレメントを扱い切れなかったみたいですね。むしろ、私の覚醒を促してくれました」
そう言うと、麻夜の右手から紫色のエレメントが集まりだし、刃を作り上げた。
「エレメント・ブレード……!」
「私も潜在的に使えたみたいです。攻撃系の元素支配」
クスリと笑って、麻夜はエレメント・ブレードを振りかざした。
次回へ続く!!




