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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
  第一説「屯朶舞過去篇」
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【#059《My Memory DaysⅦ》】


麻夜は判っていなかった。真美に舞を護ってと言われたのに、なぜ一人で村へ向かって歩いているのだろう。


不思議な感覚だった。


誘われるように、引き寄せられるように、引っ張られるように、足が勝手に歩を進めていく。


意識はある。だが、意思はない。しかし、抗えない。自分でも自分のことが分からなかった。何をしたいのか解らなかった。


唯一わかるのは、大切な人達に対する心配な余りの恐怖の感情。自分には何も出来ない(いきどお)り、悔しさ。そして、自分に対する困惑。



(私どうしちゃったのでしょうか……心まで弱くなってしまったら……私は……)



心では悩みながらも、足は真っ直ぐ村へ向かっていた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「お父さんに真美、私と1つになりましょう。村の皆のように」


「オイ、そろそろ茶葉は止めたらどうだよ?四外魔王の生き残り、廡魔クリュリオス!」



紗耶香は優しく笑ったと思ったら、形相を一瞬にして変えた。



「まさか正体まで割れてるとはなァ、クカカ!」



醜悪な笑みを浮かべる。真美は母の顔で、母の声で、勝手な事をされるのに怒りを感じた。



「母さんの身体から出ていけ!“素粒砲”!」



真美の(てのひら)からエレメントを砲撃として放った。



「クカカ、出ていけと言われて出ていくか!この女にはまだ用があんだよォ!」


(まだ?紗耶香の身体を乗っ取ったのには偶然ではなく理由が……?確かに、最初村へ駆け付けた時、廡魔は真美の友達に入り込んで接近してから紗耶香の身体へ移った。いま思うと、廡魔は最初から紗耶香が狙いだったと言うことか!)



紗耶香は再び元の優しい表情に戻った。



「ふふ、家族にそんなもの(素粒砲)を撃つなんて、お仕置きが必要ですね」



バッと手を素粒砲へ向けると、黄色のエレメントが丸く凝縮された形で、五つ空中へ出現した。



「“素粒五連砲”」



五つの素粒砲は、一つ一つが真美のより大きく、しかも五つの内の一つが真美の素粒砲を相殺するかと思ったら、紗耶香の素粒砲は真美の素粒砲を吸収し、より出力を高めて雅と真美へ襲い掛かる。



「うそ!?私の攻撃を吸収した!?」


「そうか……!今の紗耶香のエレメントにも真気功の効果が付与されているんだ!」


「それってエレメントを吸収しちゃうってこと!?それじゃ、攻撃のしようが……!」


「いや、まだやりようはある!真気功を止める方法が!」


「真気功を止めれるの!?」


「あぁ、元々“真気功”ってのは、紗耶香のエレメントを使って行うものだ。だから、紗耶香の身体に溜まっているエレメントをなくしちまえば良いんだよ」


「ど、どうやって……?」

「こうやって!」



その瞬間、雅は瞬脚を使って紗耶香の懐へ入り込み、青く光った右手が紗耶香の体を貫いた。


真美は唖然とした。本当に父が母を手にかけたのかと思った。


だが、それは違った。



「こ、これは……!キサマァ!」



紗耶香の口から紗耶香ではない、廡魔の言葉が出てきた。



「よぉ、廡魔!演技はしないのかよ?」



雅は挑発するかのように喋った。

紗耶香の体を貫いたと言うよりは、すり抜けた右手には黄色く光り輝く球体が握られていた。

その球体は紗耶香とまだ繋がっているが、今にも切れそうだ。

何が起きているのか分からない真美は、必死に焦る紗耶香(廡魔)と笑みを浮かべる雅の態度が理解出来なかった。



「な、何をしているの!?」


「お前には初めて見せるな。これは俺のオリジナルでな、“イジェクト”って言うんだが……簡単に言うと、相手のエレメントを光球化させて抜き取る技だ」


「エレメントを抜き取るって……」



真美は驚く。母の“真気功”も去ることながら、父の“イジェクト”なる技も、屯朶の歴史の中で常軌を逸していた破格の技だった。


それこそ自分の“跳脚”が可愛く見えるぐらいに。



「で、でも、エレメントを全部抜き取ったら……!」


「流石は真美だ。気付くのが早いな。確かに母さんは、今後エレメントを使えなくなるだろうな。勿論、“真気功”も“縁感知”もだ」


「それじゃ━━━」



イジェクトも使えない、そう言おうとした所で、雅はいつもとは違う厳粛させるような表情で言った。



「だからなんだ」


「え?」


「屯朶の生き残りは、俺ら家族以外には居ない。今さら屯朶一族の誇りだの、御三家としての役目だの関係ない。もっと言えば、操られたとは言え、この事実を知った紗耶香は堪えられない。また同じ過ちを繰り返すんじゃないかと。なら、そんな力ごと無くしてやるのも悪いことじゃないと思う。何より、これ以上廡魔の野郎に紗耶香を好き勝手させたくないしな……」



最後の言葉だけは、優しい表情でありながら哀しい瞳をしていた。


実際、廡魔が紗耶香に憑依しているのは真気功があるからだ。それが無くなれば、廡魔の力も衰える。だからこそ、廡魔も必死になっている。その様子から見れば、雅のやろうとしている手が有効なのか分かる。



「させ……るかよォー!」



廡魔は必死のあまりに、予想外な行動を取った。



次回へ続く!!


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