【#058《My Memory DaysⅥ》】
「……母さんと父さんは探さないと……」
目を赤く腫らしてこそいたが、冷静さを取り戻し、これ以上の哀しみを作るまいと現況となる敵をエレメントを飛ばして探していた。
その中で遺体がなかった両親の捜索も同時に行う。万が一と言う可能性もあったが、そうなっていないよう願い、最後の希望を見付けようとしていた。
真美の体から緑色のエレメントが流れ出て、村中へと走らせていく。
(誰も見付からない……いくら相手が魔王級だったとしても、ここまで一方的にやられるものなの……?)
戦争以降戦いから退いたとは言え、御三家の一角として実力は衰えて尚、一人一人が高位魔導士クラスだ。
それが僅かな間に全滅など、とても信じ難いものだった。
(しかも、外傷が無いのはなぜ?一体どんな攻撃をされたの?)
冷静になった頭でも、分からないことだらけで、油断すると大切な人達が死んだ事を考え出してしまい、焦りや哀しみで気がおかしくなりそうになる。
しかし、その時だった。
「!? 見付けた!」
真美は人のエレメントを探知し、直ぐに跳んだ。
そして、その人物を見付けた。黒く綺麗な長い髪に、その女性が着ている服装を見て直ぐに分かった。顔こそ後ろからだったので見えないが、間違いなく母“紗耶香”だった。
「良かった……母さん、無事だったんだね!」
真美は紗耶香の元へ寄っていく。その時、真美は現実から目を反らしていた。
「……」
「母さん、どうしたの?返事してよ……」
村人の死因、母の縁感知以外にあるもう一つの力、そして━━━
「どうしちゃったの……?私だよ……真美だよ……っ」
「…………」
そして、目の前の女性から感じる殺気。現実から目を反らさなければ、最悪の結果を想像してしまう。
だからこそ、真美は紗耶香に問い掛ける。いつもの優しい表情と声で安心させて欲しい一心で。━━━しかし。
「……真美、どうして来たのですか……」
ゾクリとした。紗耶香はいつもと変わらない表情と声で告げた。この惨状の中で見せるべきではない優しい笑顔と暖かい声で。
「全くしょうがない娘です。家に居れば少しは生き永らえたのでしょうに……“真気功”」
「そんな……その力を……!」
「チッ!ボケッとするな!」
紗耶香を中心に風が集束し出した瞬間、どこからか雅が飛び出し、真美を抱えて空へ跳脚した。
瞬間、地上では紗耶香に向かって淡い色のオーラが吸い寄せられ、そのオーラは村を焼いていた火や草木、地面から際も吸いだし取り込むように紗耶香の体へ吸収されていく。
「父さん……?な、何が起きてるの?村の皆も死んじゃって、しかもエレメントが抜き取られたかのような死因で、なんで母さんが私を攻撃するの?おかしいよ……だって……だって、いま母さんが私に向けた真気功は、周囲のエレメントを抜き取って自らの力へ変換させる危険な技なんだよ!?これじゃあまるで━━━!」
「落ち着けっ!」
ガツンっと頭突きを食らった。
「いた……な、なに……」
「良いか?落ち着いて聞け。この惨状は確かに紗耶香の真気功によるものだが、これはアイツの意思じゃない」
「どういうこと……?━━━まさか、廡魔クリュリオスの仕業!?」
「お?奴の事を知っているのか?……そうだ。どういう訳か、昔に討伐された四外魔王の一体が生き残っていたんだよ……それが、よりによって“廡魔”だとはな……自分を討伐した屯朶への憎しみで蘇ったのか。何にせよ質がわりぃ」
「母さんの中に廡魔が……(廡魔は存在があやふやな者……本質は霊体に近しいと記されていた。だから、母さんの縁感知でも捕らえきれなかったって事ね。今日は嫌な予想が当たりすぎる……)」
「真美、俺が母さんを抑える。その間に元素奔流波を撃って、母さんを昏倒させてくれ!」
「母さんを撃つの!?それも元素奔流波を!?無理だよ!母さんの肉体が持たない……!」
「それなら大丈夫だ!今、母さんの身体には村人の有上の生命と周辺の木々等の無上の生命のエレメントを取り込んでいる!物理攻撃は完全に効かない!だからエレメントを直接流し込む技が今の紗耶香を止める唯一の手なんだ!」
「……わかった。村の人の命を使って戦う母さんが可哀想……手がそれしかないなら、やるよ!」
「悪い。重い決断をさせちまって……。早く母さんを解放してやろう!」
「そうだね!」
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「麻夜お姉ちゃん、どこー?」
自宅で家族の帰りを待っていた舞は、麻夜を探して家中を歩き回っていた。
だが、麻夜の姿はどこにも見当たらなかった。
「どこ行っちゃったのー?」
次回へ続く!!




