【#000《プロローグ》】
早乙女良夜、見た目は普通の一高校生だが、目付きが鋭いのと背が高いと言う事から、周りからは怖がられたりしていて、それを悩みとする少年。
2013年7月、初夏。高校1年生の良夜は、いつものように朝早く学校へ向かっていた。
眠そうにあくびをしながら、川付近の土手を歩く。家を出てから、学校近くまでは土手沿いに歩いていけるので結構気に入っていたりする定番コースだ。
なんて言ったって人が少ない。つまり自分の顔を見た途端、道を譲ったり、目を背けられたり、避けられたりと言う反応を周りにされ、心を傷付けられないで済むからだ。
ちなみに良夜には両親が居ない。10年前に忽然と姿を消してしまったのだ。逃亡説や死亡説、又は自殺説等が考えられたが、その答えを知る者は現れなかった。それからは親戚の人が面倒を見てくれたり、幼馴染の家族が良くしてくれたおかげで不自由な生活はしないで済んだ。
「あっつぃ~。マジ暑い~。ああ、熱い~~」
茹だる様な声をあげ、愚痴を呟く。太陽光がジリジリと降り注ぎ、身体から汗を流す。
そんな良夜の横を歩く少女、幼馴染の美月夢奈は笑顔で人差し指を立てて、静かでおっとりした声で説明を始める。
「暑いと思うから暑いんです。寒いと想いましょう。想像してみて下さい。ここは北極。周りは一面雪や氷による白銀世界。氷の下にはマイナス数十度と言う冷たく深い海。そこに飛び込む可愛いペンギンさん達。ほら、どんどん涼しくなって━━━」
「━━━そして未だかつてない海底で噴火が起きてマグマが溢れる。そのせいで海は沸騰するほどの温度に。更には天変地異による急速な温暖化。海にも陸にも逃げ場を無くした可哀想なペンギン達は焼き海鳥に……」
恐らくは焼き鳥を海風に言ったのだろうが、海焼き鳥……水気多そうで不味そうだと思う。
「ペンギンさぁーん!?ううっ、ぺ、ペンギンさんが、タレやしおの味付けにされて定価105円で売られちゃいますよぉ~!えぐっ」
妄想ペンギンを本気で心配してガチ泣きし出す隣を歩いている少女、美月夢奈だ。
家がとなり同士で幼稚園の頃からの付き合いであり、昔から今まで世話好きで、両親の居ない良夜の為に夜ご飯を作ってくれたり、家の掃除をしてくれたりしている。今でも良き友人として、一緒に登下校したり、時には今みたいにからかって遊んだりしている(主に良夜が)。
昔は小さかった夢奈も、中学後半頃から背も良夜より少し下ぐらいまで伸びて来て、出会った時から綺麗だと思っていたオーシャンブルーな彩りをした長い髪も見惚れるほど鮮やかになっている。
ルックス面も中々だ。背の高い良夜より少し小さいと言うことは、平均的に見れば夢奈も長身になる。その長身に推定“Dクラス”の胸に、細くなく太くなくの肉付き良い身体をしていて、まさに美少女と言う言葉が相応しいような少女だった。
「まあペンギンは気にするな。所詮は想像の世界の話だ」
「そ、そうですよね。想像の話ですもんね」
「そうだ。故に暑いものは暑い」
「はぅ!私の考えた暑さ対処法が今崩れ去りました……」
しょぼーんと落ち込んでしまう夢奈。とりあえず良夜は慰めるのも兼ねて頭を撫でてやると、「はふぅ」と可愛らしい声を上げて、元気さを取り戻してくれた。
(うん、やっぱ夢奈は元気な表情が似合ってるな。こいつが落ち込んでると、俺まで調子が狂うんだよ……)
撫でながら夢奈の顔を見ていると、視線に気付いたのかきょとんと良夜に顔を向けてくる。上目遣いで(背的に)。
「どうしました、良夜君?」
「いや、なんでもない。取り敢えず学校向かうぜ、夢奈。このペースだと流石に遅刻だ」
「はい♪」
二人は土手を歩いていく。
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別時間列次元世界、つまり良夜達の視点から見ると異世界と言われる世界に当たる場所にも人間がいた。
それは地球のように丸い星で、違うと言えるのは面積の7割を広大な大地が占めていて、残りの3割が海となっている特殊な点だ。
そして最も特異な点がある。この世界━━━いや、この星の人間は魔法と言われる力を使うことが出来る。また魔獣や魔族と言った人外のものまでいる。現住民はこの世界を【アルカティア】と呼んだ。
そんな異世界アルカティアの辺境、見渡す限り枯れた大地が地平線まで続く土地“アースレイク”の中心地に巨大な洋風の城が建っていた。
凄いのは城の大きさだけではなく、城壁の厚さ高さだ。まるで要塞。要塞の中に城が建てられていると言った感じだった。
そして、その城の長い廊下を一人の少女が歩いていた。深紅を表現するかのような紅く長い髪を靡かせ、身のこなしの良さを引き立てるようなスレンダーなルックスをしていて、胸こそ控えめだが、他のチャームポイントで補って余り得る程の物を持っている可憐な美少女だ。
しかし、その少女は何やら不機嫌そうな様子だった。
「ばかばかばか!お父様のバカ!今度と言う今度は許せないわ!我慢の限界よ!」
「御嬢様、御待ち下さい。主も貴女の事を想ってあのような御話をしたのです。どうか御理解を」
お嬢様と言われる少女の後ろに着いて歩いているのは、この城の主であるお嬢様の父親の秘書だ。同時にお嬢様の執事も兼任している。
朱色のオールバックヘアーに、細い目にぴったりなフレームのメガネをつけて、タキシードをピシッと着こなしている。見るからに真面目で固そうな人柄だった。そんな彼をお嬢様は、煙たそうに見て溜め息をついた。
「ハーベルト、私はもう決めました。お父様は冥利の事しか考えてない。今回の“お見合いの件”だって、当日に知らされたのよ?教えたら断られるからって!」
「それは確かに主に非があるかもしれませんが、だからといって家を出るなど御考え直し下さい」
「それだけじゃないわ!私にあの力があるからって、今の生活は余りにも窮屈過ぎるんです!これじゃあ籠の中の鳥だわ!」
「しかし、こうでもしないと御嬢様を狙う者もいますし……」
「ごめんなさい……」
お嬢様は申し訳なさそうにしながら、右手を執事であるハーベルトに向けた。
「! 御嬢様!?」
「貴方の頼みでも今回ばかりは聞けません」
その瞬間、紅い炎が渦となってハーベルトの視界を遮った。そして炎が消えた時には、既にお嬢様の姿はなかった。
「炎系転移……御嬢様、本気で城を出ようと言うのですね……それなら、私にも考えがあります!」
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逃げ切ったお嬢様は、城の中庭へ来ていた。緑豊かな草木が植えられていて、側には噴水や休憩所等もある。太陽光が噴水の水を照らし、キラキラ宝石のように輝いているのは見物だろう。
しかし、お嬢様はそれらの光景を無視して、奥の広場へ向かった。
「ここからなら逃げられるわね」
「御嬢様、そこは“転移広場”ですよ。どこへ行かれるのでしょうか?」
その声を聞いたお嬢様はビクッと肩を振るわせた。
「もう追い付いたの……」
「御ふざけなど御止め下さい」
「イ・ヤ!」
お嬢様は手を振り払った。その瞬間、空から炎弾が降ってきた。あらかじめ炎弾を空へ飛ばしていたようだ。
「!? 炎弾などいつの間に……!」
しかし、言葉ほど焦った様子もなく、ハーベルトは必要最低限の動作で炎弾を交わしていく。
「用意は周到にするべし。ハーベルトが教えてくれたことよ。そしてこちらの準備は終ったわ」
ブォンと足元に魔法陣が浮かび上がる。そこから放たれた光は、お嬢様の身体を包み込んだ。
「しまっ━━━」
そこで初めて焦りの様子を見せるが時既に遅し、光が消えると同時に魔法陣も消え、お嬢様の姿も見当たらなくなっていた。
「……腕を磨きましたね……魅紅御嬢様」
『to be continued』
どもども、焔伽 蒼です!
僕の癖は、いつもあらすじは長いのに、後書きが短いです。ですが…!後書きってぶっちゃけネタ尽き早いのです!葵せきな先生(生徒会の一存作者)の苦労が伺えます。いえ、尊敬します!
それでは今回始まりました異世界の不確定能力は、色々な設定が独自で創り出した者になるので、特殊な世界観になるやもしれません。勿論、説明を求められれば答えますし、理由も教えます。
何かあればどうぞ!^^
最後に、男キャラはかっこよく、女キャラは可愛くを精一杯表現していく所存であります、はい!
では、今後宜しくお願いします!!