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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
  第一説「屯朶舞過去篇」
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【#053《My Memory DaysⅠ》】


「私と麻夜が死んだあの日から、舞は背負わなくてもいい重荷を背負うはめになったの」



真美の話を聞きながら、良夜が皆が感じていた疑問を問う。



「真美さんと麻夜さんが亡くなってるのは分かった。それは手日記にも慰霊碑にも証拠として記されていたからな」


「この世界の文字、良く読めたね~」



今度は軽いいつもの感じで、おちょくってくる。



「ああ、似非し━━━ハーベルトがくれた魔道具があったからな」



良夜はポケットからメガネを取り出した。レンズの部分には薄くだが、魔法陣が描かれていた。



「あらゆる文字等を読めるようにする翻訳魔法具らしい」


「流石は天塚一族の筆頭執事だね。そんな高価な物まであるなんて。そういえば、君達以外の仲間も水臭いよ~。出ていく時ぐらい挨拶させてくれても良いのに~」


「やっぱバレてたか」


「勿論だよ~。だって、私達は“そういった事”には敏感だし」


「それが屯朶の異常能力(シリアル・スキル)って事かしら?」



魅紅の質問に、真美は素直に答える。



「そうだよ、御三家だけ持つ異常能力、屯朶のは“エレメント”と言って、存在の元素や源と言われる核を支配する力で、死んだ私と麻夜がここに()るのもエレメントのおかげなんだ」



そこで真美はまた口調と雰囲気を真剣な感じに変えて、「だけど問題があって……」と言う。



「エレメントは死んだ私達には使えない。使えるのは生きている者……」


「つまり、三女の舞さんって事になるのね……」


「……そう。舞の潜在能力は屯朶の中でも突出していた。あの子は、認められてないの……私達が死んだ事を。そして、責任を感じてるのよ……“私達を殺した”って」


『!?』


「屯朶舞が貴女方姉を殺した……?」


「何があったっていうのよ……」


「……まさか、廡魔(むま)……」



廡魔と言う言葉を聞いた真美が苦笑する。その笑みには、悲しさや怒り等が含まれている感じにも見えた。



「今から観せるね、10年前に起きた出来事を……」



真美がぼそぼそと何かを呟くと、良夜・魅紅・宰の目の前が真っ白になり、記憶にない映像が映し出される。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



━━━10年前、メティアと言う名前も無く、屯朶の村「メティア」創立7周年を迎え、一族の人間もまだ数十人がいた頃の記憶。



屯朶当主の家は長にも関わらず、村から少し離れたところにある草原区域に建てられていた。理由は実に単純で、二代目当主である(みやび)が「村ん中窮屈だから、広々した場所に住みてぇな」が理由である。ちなみに発言後、3日で自作しその日の内に引っ越した。

ただ、そんな自由奔放な当主に不満を持つ一族の人間も多く、当主交代の声も多く挙がっていた。



「おとーさんっおとーさんっ」



椅子に座り、自室で書き物をしていた雅の裾をくいくいっと引っ張られる。

そこにいたのは、舞(7才)だった。



「お!どうした、舞?」


「あそんであそんでー」


「ダメですよ~。お父さんは、仕事中なのですから」



ドアの辺りから声を掛けてきたのは、雅の妻“屯朶紗耶香(さやか)”だった。



「フッ、紗耶香よ。可愛い我が娘と遊ぶ事と、当主としての書類仕事。どちらが大事か、選ぶまでもねぇ!」



フッと雅は笑う。



「舞、遊ぶぞ!」


「うんっ!」



娘をこよなく愛する父親だった。



「後で仕事もして下さいね、あなた。それに覚えていますか?今日は真美が帰ってくるんですよ?」


「勿論、忘れるわけないだろ?仕事柄滅多に休めないせいで寮暮らしをしている真美が、帰郷してくるんだからな~!」


「真美お姉ちゃん帰って来るの!?」


「ああ。今日は久々に家族が全員揃うな!」


「やったー♪」



舞は両手を上げて、無邪気に跳ねながら喜んだ。



「母さん、麻夜はいつ帰って来るんだ?」


「夕方には帰って来る予定です。麻夜も楽しみにしてましたよ、真美姉さんに会えるって」


「麻夜は愛情深いからな。姉妹が揃うのが嬉しいんだろ。その辺は母さんに似たな」



クスッと紗耶香は優しく微笑み、舞の頭を撫でる。



「それでしたら真美は、あなたに似ましたね。心の強さとか。何せ17歳と言う若さで、国際連合軍の三大隊長に任命されたのですから。史上最年少と言っていましたし」


「親として誇らしいな。麻夜も持ち前の器用さと優しさを生かして治癒術師になるために頑張っているしな」


「むぅ……」



二人が世間から見たら親バカだと思われそうな会話をしていると、舞がプクーと口を膨らませてむくれていた。



「おとーさんも、おかーさんも、お姉ちゃん達のことばっか!つまんないつまんない!」



そんな我が子の姿に、二人は苦笑した。雅は舞を抱き上げる。



「おいおい、舞は一番凄いんだぞ?お前には才能が在るんだからな!」


「さいのー?」


「そうだ。いつかお前は誰よりも強く、優しい人間になる!な!」


「ふふ、そうですね。貴女の才能は、お母さんやお父さん、それにお姉ちゃん達ですら持てなかった物なのですから」


「真美お姉ちゃんや麻夜お姉ちゃんよりもすごいの!?」


「ええ♪」


「ああ!」


「やったやったー!」


「可愛いな、我が娘は。親は子供の為ならどこまでもバカになれるな~! お?」



すると、雅が何かに気付く。



「大気のエレメントが反応している。真美が帰って来るな」


「ホント!?」


「この流れだと、5分後に庭へ着地ですね」


「おでむかえする!」



舞直ぐに外へ飛び出し、庭に着くと空を見上げる。そして待つこと数分、空に緑色の光が見える。

その光は、真っ直ぐ庭へ向かって落ちてくる。

気付くと、雅と紗耶香も外に出てきていた。



ヒュォォウン!と風を切る音と共に、緑色の光を纏った女性が降り立った。落下の衝撃等は、まるで風や空気がクッションになったかのように、速度を完全に殺していた。



「おかえりなさーい!真美お姉ちゃん!」



緑色の光はやがて消える。真美が能力を解除したからだ。


真美は抱きついてくる舞を抱き返した。



「ただいま~。背延びたんじゃないの、舞~?」


「うんっ!延びた♪」


「お帰り、真美」


「お帰りなさい」



笑顔で出迎えてくれた両親に、真美は笑顔で返す。



「ただいま。お父さん、お母さん♪」



『to be continued』


どもども、焔伽(ほとぎ) (あおい)です!


My Memory Days(マイ メモリー デイズ)、略してMMD篇開幕です!この言葉にはいくつかの意味が込められています。例えばMyを「わたし」と「舞」等です。

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