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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
第三章 屯朶三姉妹編 
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【#048《ヒュースを追え!》】


麻夜や舞が用意した昼食を終えた後、良夜と魅紅は草原区域の丘の上に建つ白い塔の所へ来ていた。



「この塔の頂上にある球状の真ん中辺りだ」


「文字が書いてあるのよね……。あの手日記によると、この塔の意味は━━━」



魅紅は魔力を足に集めて、塔の上まで跳躍する。そのまま右手に魔力を込めて、塔の壁に手を付けて落ちないように体を垂直に止める。



「魔力で壁に張り付いたのか……」



改めて魔力の便利さに驚嘆する。



「それで何て書いてあるんだ?」



良夜は魅紅に読みに行かせたのには理由があった。本来なら、好奇心や自分で行動したがる性格的な部分から、自分の眼で見たかった所なのだが、よくよく考えてみたらアルカティア語を読めない事に気付き、行くだけ意味の無いことに気付いた。


今になって最初に意気揚々と、塔へかけ上がろうとしたことに恥ずかしさを覚える。



「手日記の通りね……“屯朶の同志よ、ここに眠る”。間違いなく慰霊碑よ」


「そこには屯朶の人間の遺体が埋まってるって事か」

「多分、違うわね。ここは丘の上だし、掘ってもすぐ崩れちゃうわ。恐らく、魂として眠ってるって事じゃないかしら……」


「なるほど……そういう事か。だが慰霊碑って事は間違い無さそうだな。━━━となると、あの名があるかどうかだが……」


「待って。いま探してみる……」



魅紅は何人もの名前が書かれた石碑を指でなぞって調べていく。やがて魅紅は探していた人物の名前を見付ける。



「……あったわ」


「本当か!?」


「えぇ……二人とも確かに名前が書かれている」


「やはり……となると“彼女達”は━━━」


「━━━何をやってるのかな~、二人とも?」


『!?』



突如現れたのは、屯朶真美だった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



屯朶の家近くの広野から少し離れた場所で、最氷追撃班は足を止めていた。



「まさか、こんなにも早く遭遇するとはな……」



シンは青ざめた表情で告げる。



「早すぎるのは問題だな」



ケイも目の前にいる少女、ヒュースを見て状況を分析した。

彼らは屯朶の村を出てまだ間もない。そんな場所で、早々に目標である最氷・ヒュースと接敵(せってき)すると言うことは、時間稼ぎがままならないという事になる。

また、ヒュースの目的が何かは知らなくても、確実に良夜達のいる方向へ向かっていることが分かる。



「……警告する。私に課せられた(めい)は、天塚魅紅と不確定能力(アンノウンスキル)所有者を捕らえること。……邪魔をするなら、死ぬはめになる」



淡々と感情の無い声で告げていくヒュース。ケイ達は畏怖した。この子は間違いなく強い。そして、告げた発言に嘘偽りがない。どういう環境で育ったかは分からないが、人を簡単に殺せるような子供を作った世界に、怒りすら覚えるケイ達。



「どうしようか、伊座波君」


「出来るだけ傷は付けたくないから、手荒な事はしたくないんだが……」


「……退く気はないと判断。邪魔者は排除」



ヒュースの周囲から冷気が放たれる。その冷気は一瞬の内に大気を()てつくせ、広野を広範囲で凍らせ白銀の世界を作り出した。



「そうも言ってられないな……!渕垣!風代!やるぞ!」


(伊座波君があだ名で呼ばなくなった!?本気って事だね、これは)


希少能力(レア・スキル)『閃光光来』発動!風代は虚無封解で相手を防御に徹しさせろ!攻撃をする余裕を与えるな!」


「分かった!希少能力(レア・スキル)『虚無封解』発動or『瞬脚』!」



ユウはダンッと地面を蹴って、ヒュースの真横に移動した。



「出力20%!『崩壊拳』!」



右手に虚無の魔力を纏ったユウのパンチは、それだけで爆発の力を得る。

虚無封解とは、世界からずれた軸に存在する虚無(ゲヘナ)へと繋がる扉を開き、ゲヘナに滞在する魔力を供給出来る先天的能力だ。

虚無封解発動中のユウは、無限の魔力を操り、無限が故に押さえきれず、攻撃の度に魔力爆発を起こすのだ。


またケイの閃光光来は、自らの体を光学物質へと変換させるもので、その気になれば光速並の瞬脚を使う事も出来る。


そして━━━



「渕垣!結界で、オレたちを援護してくれ!」


「オケ!任せろ!希少能力(レア・スキル)『夢想顕現』発動!」



シンが両手から放った波動は、やがて辺り一面を覆い尽くし、中はオレンジ色の世界へと変貌を遂げた。

これこそ夢想顕現の力である。一定距離を結界で包み自身の領域(テリトリー)を作る。そのテリトリー内では、シンが考えたことを現実に現出させる事が出来る。ただし、結界内のみなので実際は幻想である。それでも精神ダメージは食らうので、攻撃に当たりすぎると精神崩壊してしまう恐ろしい能力だった。



「顕れよ、無数の武具達よ!」



すると、虚空に突如無数の剣や銃器が顕れた。

弾丸が刀剣が投擲(とうてき)される。


同時にケイも速度でジグザグに動きながらヒュースの背後に回る。



『これなら当たる!』



誰もがそう思ったが、現実は違った。



爆発も弾丸刀剣も死角すらも、攻撃はヒュースに当たることはなく直前で止められていたのだ。


ヒュースを守るように四方を囲むように作られた氷の壁にだった。



「……『氷牢四柱』」


「マジかよ……三人がかりで倒せないとか、こいつは本当にAランクなのか……?」



次回へ続く!!

 

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