【#046《屯朶の謎に迫れ!》】
「屯朶雅の手帳か」
良夜と魅紅が屯朶の村の書物庫で見つけた一冊の手帳。
しかし、その手帳はボロボロで文字がかすれたり、ページが破れたりしていて全てを読む事は不可能だった。それでも二人は、読める範囲でその手帳を読んだ。
1ページ目【×月○日 初代当主、穂乃香様が亡くなられて一月。ざまあ。一族の者と話し合った結果、なぜか私に二代目当主への就任式が行われる事になった。私の意思尊重は無いのだろうか】
「王族や貴族にはたまにあるのよね。本人の意思と関係なく王座を継承されることって」
「その辺は俺の世界と変わらないんだな」
魅紅と良夜は再び手帳のページをめくった。2ページ目は破れていたので、次のページを読む。
3ページ目【×月○日 私は逃げた。理由、当主だなんてめんどくさいからだ(爆)】
「おい!1ページ飛ばした間に何をしてるんだ!?しかも“(爆)”って何だ!」
「つ、次のページを見てみましょ」
ペラ……とページをめくる。4ページ目には血が付いていた。
4ページ目【×月○日 奴等との激戦の末、私は敗北をした。敗者は勝者に従うのみ。仕方ないので、就任を認めることにした】
「激戦の末って……どこまで就任するのが嫌だったんだよ……」
「なんか言ってるセリフが武人みたいね……」
二人は全部見てると長くなりそうなので、ページを早見していった。そこであるページに目が止まった。
13ページ目【×月○日 娘が生まれた。妻と話し合った結果、名前を真美と名付けることにした】
『!?』
その名前に二人は反応した。
「真美?ひょっとして、三姉妹長女の真美さんのことか!?」
「わからないわ……よ、読み進めてみましょう!」
要点だけを抑える為、そこからは飛ばし読みをしていく。
どうも途中から屯朶雅は、日記を付けるのが定期的になって来ていて、1ヶ月に一回や数ヶ月に一回のペースになっていた。
96ページ目【×月○日 今日は三女、舞の七つめの誕生日。私は一族を揚げて祝うことにした。なぜなら、屯朶の里「メティア」を造り上げてから7周年を含んでいたからだ】
「三女の舞……間違いないわね。二代目当主は、あの三姉妹の父親だったのよ」
「そうみたいだな……。この村は舞さんが生まれたと同時期に造ったのか。問題はここからだな」
「そうね。屯朶一族が喪失した手掛かりがあれば良いんだけど……」
隣のページには、まだ話しには続きがあった。
だが、そこからの文字は今までのピシッとした字とは違い、やけに走り書きをしたような感じで、ページもしわくちゃになっていた。
97ページ目【緊急事態が起きた。この村に魔族が襲ってきた。ばばぁ(ペンで横線訂正有り)初代当主、穂乃香の残した書物に情報がある魔族だった。それは魔族掃討作戦で討ち取られた筈のこの世に四体しかいない最高位の上をいく四外魔王の一人、廡魔クリュリオス】
「━━━!?」
明らかに魅紅の顔色が変わった。廡魔と言う名を聞いたからか、畏怖しているような表情をしている。
「廡魔……四外魔王が生き残ってたんて……!」
「知ってるのか……?」
「前に話したわよね? 人間と魔族の全面戦争が行われたって。人間は御三家と言うアルカティア最高戦力を投入したのに対し、魔族側は四外魔王と言われる魔族の最頂点である四人の魔王を戦線へ出陣させてきたのよ……。決死の末、御三家の当主達が討伐したとされているけど……まさか生き残りが居たなんて……」
「その魔王ってのは、強さ的にどのぐらいなんだ……?」
「……強さを図る事なんて無理よ。魔王と言うのは魔法倫理教義会が定めた魔族の強さを表す最高位種であるLV6を上回る規定外の存在。伝説級の中でも超常種と言われる古代龍や真祖吸血鬼にすら匹敵すると言われている程なんだから……!」
良夜はまだアルカティアについて知らないことが多い。いくらアルカティアに置ける危険例を挙げられても理解するのは難しい。
だが魅紅の説明を聞いていくと、その存在がどれだけ恐ろしいものなのかは良く分かった。
(手が……震るえている。あの震えは伝承を信じ恐怖している者の震えではない……喧嘩している時、元々俺の事を知ってるいる奴が、先輩に無理矢理連れてこられた奴の震えだ……。魔王と言う存在と何かあったのか……?)
二人は心を落ち着けてから、さらに次のページを読み進める。何ページも何ページも、1ページずつ余す事なく、最後の113ページまで。
「そん……な……」
「嘘だろ……こんなことって、あるかよ……」
「こんなの……酷すぎるわよ……」
そして、真実を知ることになる。屯朶一族の悲しくも切ない、悲劇の真実を━━━。
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その日の深夜、屯朶三姉妹も寝静まり、各方面から情報を持ち帰ってきた仲間達も、それぞれの布団に寝転がりながら、目を瞑って寝たふりをしていた。
それは魅紅の立案で、三姉妹には聞かれたくないと言うことで、念話と言う思念を相手の脳内に飛ばす魔法を使って報告会を開くためだ。
《にしても念話だっけ?魔法って凄いよな……これなら携帯要らないじゃん。金も懸からないし、持ち運びの必要もないし、電波も関係なしとか科学では実現不可能だな》
《良夜の世界にある科学がどういうのかは分からないけど、距離限界はあるのよ?ね、ハーベルト》
《はい、御本人の魔力にも寄りますが、平均魔力要領が行う念話の距離限界は約500mぐらいです。私や御嬢様・園臣様の魔力と操作技能なら2~3kmは固いですね。勿論、こぞ━━━早乙女良夜が使う念話等せいぜい5cmが限界でしょうが》
《まて、こら。5cmなら最早、小さい声でも話せる距離じゃねぇか》
《フン、仮にも“m”が着いているだけマシだと思って下さい》
《おいおい似非執事様よ~、mはmでも横に“C”と“K”が付くだけで天と地の差が生まれるんだぜ?》
《ハッ!何を馬鹿な事を。C(チャイルド=小僧)の貴方には相応しいスペルでは有りませんか》
《念話だから思ってること全部筒抜けなってるからな!?何気にうまいこと言ってるのが、よりムカつくなぁ!》
《私は天塚一族の筆頭執事。ユーモアなジョークすらも完璧にこなせなくては筆頭は務まりません》
《お前にとっての執事イメージが気になるわ!》
《はいはい、念話で喧嘩しない!頭が痛くなるから!さっきから他の人達が着いて来れなくなってるじゃない!》
《ご、ごめん……》
《すいません、御嬢様……》
声だけではあるが、良夜とハーベルトが落ち込んだのが分かった。
《それじゃあ本題に入るわ》
『to be continued』
どもども、焔伽 蒼です!
等と元気よく挨拶している暇があるのなら謝罪を……僕の力不足ながら更新が遅れてしまったことを、ここにお詫び申し上げます。
で、最近思ったのですが……一人称を良夜にしていれば良かったですよぉぉぉぉ!作者視点は結構難しいですね…!ですよね!?
とりあえず次の話を作りだしますね!