【#040《夜魅の傘下組織》】
魅紅達は屯朶の村であるメティアを探索する前に、再度魔力感知を行った。
それも二度目のは、相手の魔力を感知する一度目と違い、自分から魔力をソナーのように薄い波として放ち、魔力だけではなく生体反応までも感知出来る方のを使った。
だが、その結果は一度目と変わらず、魔力も生体反応も一切なかったようだ。
「誰も居ないと言うことかしら」
「御嬢様、私が探索して来ましょう。少々御待ち下さい」
ハーベルトは瞬脚で村を見回りに行った。
「私達も近場から探して行きましょう。居ないなら居ないで、その原因を突き止めるわよ!」
「それが良い。ただ待っているのも、悪いからな」
「その前にさ……」
「何?」
「何だ?」
魅紅と宰が自分の方へ向くと、良夜は後ろの方へ顔を向け、積み重なる骸を見ながら言った。
「こいつら、どうすんの?」
その骸は煙を出しながら、真っ黒に焦げていて、服も切り刻まれていたユウ・シン・ケイの三名の姿があった。
余りにもふざけ、うるさかった為、宰と魅紅に制裁を受けたのだ。ちなみにリュウは、宰の命令で消失したカイを探しに出ていっていたので、惨事は免れていた。
「ほっときなさい。探索は私達だけで出来るわ」
魅紅と良夜、ハーベルトと宰は二人組に別れて村を探索しに向かった。
すると四人が居なくなっている事に気付いたユウが、ケイとシンに尋ねた。
「あれ……伊座波君、渕垣君、僕ら以外のメンバーはどこに行ったの?」
「あ、いつの間に……」
「俺らが争っている間に勝手に行くとかひでぇ!?」
三人はヤバいと判断し、すぐに村へ入って行った。
「……旅の人かな?」
皆が去った入口側で、少女が目撃していた。
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屯朶の村から2km離れた所に、カイは暗黒エネルギーを足場に空中で立ちながら、地上を見下ろしていた。
「……北西に十数の人の気配……西南には数十か……さて、遊ぶか……」
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━━━同時刻、屯朶の村より東に3000km以上離れた所に「灰街」と言われる、建物全てが焼かれた痕があり、人が住めなく無人となった廃墟地区がある。
そんな廃墟となった建物の中に、小さめな宮殿のような建物があった。屋内の一番奥にある広間、そこに複数の人間がいた。ここは犯罪者組織“夜魅”の拠点。12人のB級犯罪者やA級犯罪者から構成されていて、その驚異は犯罪大組織並と認定されている。
一般人こそ手をかけてないが、賞金目当ての賞金稼ぎや、逮捕しようとする帝国軍の人間を百人近く殺害している。
その少数精鋭の夜魅が最近になって仲間を━━━正確には自分たちに手を貸してくる配下を作り出していた。
「風林字、守備はどうだい?」
夜魅リーダー【最上支土】、A級犯罪者。
「問題ない。イレギュラー際無ければだが」
夜魅参謀【風林字】、A級犯罪者。
「イレギュラー。闇裂く光のようなことかい?」
「ああ。役目を果たさないどころか、奴らの仲間になる始末だ。新たに加えた傘下組織もアテには出来ない」
「強力な賞金稼ぎを騙して戦力にしたのは良かったと思ったんだけどね」
「そもそも、その作戦事態が危ういがな」
「ちなみに現在、僕ら夜魅に協力してくれる組織はどのくらいいるんだい?」
「全6組織内124名、D級犯罪組織【煉獄キャスターズ】D級犯罪組織【覇軍】C級犯罪組織【鬼頭会】C級犯罪組織【Blood Poison】B級犯罪者チーム【殺戮兄弟】……そして、特A級犯罪者【最氷・ヒュース】だな」
風林字は最後の名を言うのに戸惑いがあった。また、その名を聞いた支土も驚きの表情を見せた。
「最氷・ヒュース……だって?」
「そうだ。西陸の方で知らない者は居ない程の人物。“白き衣を羽織り、冷血な青泊の瞳をした少女、通りし道には草木一本余すことなく凍結させる冷酷無比な絶対零度、最氷がヒュース”と唄われる程に名を馳せた犯罪者だ」
「特A級と言う事は、闇裂く光と同等って事だね」
「多と個の差があるがな」
「戦力としては申し分ない……と言うか、夜魅に入れるレベルだね」
「ちなみに“煉獄キャスターズ”と“覇軍”には、闇裂く光の抹殺に向かわせている。女と数の差は有利に働く筈だ」
「確かにな。戦闘特化の彼らでも、女性と圧倒的な数の前では実力も発揮することは出来ないだろうね」
「一応、保険として夜魅の誰かを付かせようとも考えたが」
「その通りだよ。夜魅にはまだやるべき仕事があるからね。人員を割くわけにはいかないのさ。傘下組織らの実力、お手並み拝見と行こうじゃないか」
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「……はぁ……この程度かよ……」
カイは実に詰まらなそうな表情をしながら、山となって積み重なる人間の上で萎えていた。
「……こいつら確か覇軍つったか……人数だけは多かったが一人一人がザコ過ぎるんだよ……」
カイは一人で、覇軍総勢40名を蹴散らしていた。
「……片方の方は……なんかめんどい……後は他の奴らに任せて、俺は寝る……」
カイは人間山をほっぽって、近場の木陰に入り眠ってしまった。
『to be continued』