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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
第二.五章 旅立ち前夜編
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【#038《医療の町「メティア」へ》】


「それにしましても医療の町【メティア】ですか」



ハーベルトは道中呟く。現在、良夜一行は魔力調和の薬【エレクシア】を作ってもらう為に、医療の知識に長けている住民が複数住むメティアへ向かっていた。

その意味は良夜の能力制限を無くす為だ。ドラゴンの龍激砲を防ぎ、竜の(うろこ)をも貫く霊源結界が復活すれば、仲間達にとっても利点となる。


不満等ない筈なのだが、ハーベルトの表情は険しかった。



「どうした?あまり気乗りしないって感じだな」



良夜はその表情の真相が知りたくなり、ハーベルトに問う。



「気乗り……ですか。確かに気乗りはしませんね。サオトメ等の為に、魅紅御嬢様に足を運ばせるのもそうですが……」


「おい、こら!等の為って何だ、等の為って!」



ハーベルトに引っ掛かる言い方に、良夜は突っ掛かるが、横で聞いていた魅紅がハーベルトのセリフに疑問を持つ。



「“そうですが”って、他にも理由があるの?」


「……えぇ、魅紅御嬢様はメティアのもう一つの名前は御存じでしょうか?」


「もう一つの名前……?」


「はい!」



魅紅が答える前に、いきなり会話に入ってきたユウが手を上げて主張をする。


そして誰かに振られる前にユウは勝手に答えた。



「医療の町!」



ユウは自信満々に答えた。皆は「……」と黙って、ユウに対して(大丈夫か?)と哀れみの目を向ける。



(確かに私は医療の町メティアと説明はしたけど……上名は通称って事が分からないの?しかも、自信満々に……)


(自信満々に子供のような間違い発言とは……)


(この世界に詳しくない、俺でも分かるぞ……。なぜあんなに自信満々に言えるんだ……)



この時、魅紅・ハーベルト・良夜の心は一致した。



(痛い{わ/ですね/な}、この子……)


「? ? な、なに?何なんだよ、その若干引き気味な反応は!」



三人の哀れみの反応に、流石のユウも気付いたらしく、言い様のない不安を覚えるが、ぽんっと両肩にケイとシンが手を優しく置いてきた。



「風代、相変わらず空気読めないな」


「渕垣君!僕は空気読めるよ!」


「カザヤン、お前は喋るな」


「伊座波君!?酷くない!?」



更にカイがユウの事を無表情に見詰めている。



「な、何だよ……如月君まで」


「……強く生きろよ……」


「まさかの人物にまさかの励まし!?」


「ユウ、うるさいぞ。静かにしろ」


「それは無理だろうな、風代バカだし」



宰の注意に捕捉をしたリュウの意見を聞いた宰は、しばらく考えた後━━━



「それもそうだな」



諦めた。



「園臣さんと倉崎君!?諦めないで!まだバカにされた方がマシだよ!」



そこで良夜から止めの一言が入る。



「いや、バカにされてるから」


「え?…………あ」



ユウも少し考えた後、最終的には皆揃って自分をバカにしていることに気付いた。



「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」


「クルゥ━━━━━━!」



ユウが悔しさと怒りに満たされ、だけど下手に逆らえないストレスもあり壊れてしまう。その奇声がドラゴン(変身魔法により小型化した)の対抗心を燃やし、可愛らしい高い声で鳴いた。



「か、可愛すぎる!」



魅紅が良夜の頭に乗っているドラゴンに触りたそうにしていた。



「リューネ、あんな野蛮で貧相のない奇声と張り合っちゃ駄目だぞ?」


「クルゥ」


「よしよし、聞き分けが良くて助かる」


(早乙女め、もうカザヤンの扱い方が分かって来てやがる……!恐ろしい子!)


ケイが秘かに一目置いていた事を知らず、良夜はドラゴンの頭を撫でてあげていた。ドラゴンも気持ち良さそうに凄く喜んだ。



「良いわよね、その子の言葉が聞けて。ていうかリューネって、その子の名前?」


「似合ってるだろ?龍種ードラゴンー竜ーリュウーメスーリューネって考えた!ちなみに、日本語化させて竜音とも駆けてるんだぜ?」


「単純に見えて、ちゃんと考えられてるわね!?」


「と言いますか、話がだいぶ脱線しましたね」


『あ』



ハーベルトの言葉に、二人はハッと思い出したかのように、脱線前の会話を思い出した。



「ご、ごめんなさい」


「わりぃ……」


「全く……。魅紅御嬢様にも深く関係している話なのですよ?」


「私に?」


「えぇ、なぜなら、今から行こうとしている医療の町メティアとは、屯朶(しゅぜん)一族が作り上げた村なのですから。別名、屯朶の里と言われています」


「シュゼン?何か凄いのか?」



理解できていない良夜だが、魅紅は衝撃を受けたような表情をしていた。



「うそ……屯朶ってあの?」


「はい、あの屯朶様です」



良夜は二人の反応が気になり出す。魅紅やハーベルトがここまで驚くなんて余程の事なのであろうと言うことが分かったからだ。



「そのシュゼンって、結局何なんだよ?」



その問いに魅紅が答えた。



「……私の家系、天塚一族は知っているわよね?」


「ああ、大体の歴史はお前やハーベルトから聞いた。昔の戦争で活躍したとか言う強大な力を持った一族ってことまではな」


「他にも二家、天塚に匹敵する力と戦績を上げた強大な一族がいたのよ。それが屯朶一族と日之影一族、この二家合わせて私達は、御三家と呼ばれているわ」


「屯朶一族!?天塚一族と同等って、それは化……ヤバイぐらい強いんじゃないのか?」



そこで「化物並の強さじゃねぇか」と言おうとしたが、何かの危機を察知したので直ぐに言葉を変えた。



「確かに屯朶の能力は恐ろしいものよ、使い方によっては。でも、驚きなのは戦争終結後、行方が分からなくなった屯朶一族が医療の町として有名なメティアを作ったと言う事の方よ!」


「仕方ないのです。初代屯朶一族当主で有られる真透(まとう)様は、名誉や地位によって有名になるのを嫌う方でしたから。初代当主天塚焔(ほむら)様が協力して、行方を(くら)ませたそうです。その事実を知れるのは、代々当主を受け継いだ者のみで、まだ魅紅御嬢様は受け継いでいないので、知らされてないだけです。私は知っているのは現当主であられる緋女(ひめ)様が、こっそり教えて下さったからです」


「お母様……相変わらず軽すぎるわ……。でも、まだ受け継いでいない私に教えても良かったの?」


「はい、一族の喪失やメティアへ向かうともなれば、隠しきれるとは思えませんし、何より今は緊急事態ですから」


「……そう。でも、話してくれてありがとう。おかげで交渉が(うま)く行きそうだわ」


「交渉……ですか?」


「えぇ……あ!」



魅紅は目の前へ向いた時、道の先に小さくだが村が見えてきたのに気付いた。



「ひょっとして、あれがメティア……屯朶の里?」


「はい。間違いありません。昔、緋女様に連れられて来た時のまんまです」


「思ったより早く着いたわね」



そう言う魅紅の表情は、真っ直ぐメティアを見ていて、何かを決意したかのような自身に満ちた楽しそうにしていた。



『to be continued』

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