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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
第二章 異世界渡航編
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【#031《良夜の苦悩》】

良夜は応接間を出て(ユウの悲鳴が聞こえたがスルー)部屋へ向かおうと階段を上がろうと角を曲がると、ドンッと何かにぶつかった。



「ひゃう」



何やら可愛らしい鳴き声が聞こえた。視線を下に反らすと、そこにはミイシャがいた。

この宿屋【ラ・フェイス】の使用人だ。肩ぐらいまである茶髪に、ひょこっと癖毛のような小さなツインテールが特徴的だ。ここの女将の一人娘で、年は12歳とまだまだ子供だ。


見たところ布団が床に散らばってしまっている。あれは良夜が使っていた布団だ。

どうやら良夜が目覚めて、応接間でゴタゴタやっている間に、布団を片して干してくれようとしたのか小さな身体で、大きな布団を持って来ていたから、良夜が曲がって来た事に気付かずぶつかってしまったのである。布団が邪魔で前が見えていなかった、と言うのもあると思われるが。



「あぅぅ~……す、すいません!前が見えなくて……すいません!」



二度謝った……。本気で申し訳なさそうに、深々と頭を下げている。こちらにも否があるのだから、そこまで謝らなくても良いのだが……と思う。



「いや、俺の方こそごめん。周りを見てなかった」


「あぅ……お客さまに気を使わせちゃいました……」



一段と落ち込んでしまった。しゅーんとしている姿が愛らしく、頭を撫でたくなったが、流石に失礼かと思い話題を反らすことにした。



「ひょっとして、俺が寝てた部屋掃除してくれてた?」


「……あ、はい!気持ち良く過ごして貰いたくて、お邪魔でしょうか?」


「いや、逆だ。嬉しいよ。俺は気分転換に外の空気でも吸って来るから、綺麗に頼むよ」


「はい!ガンバりますっ!楽しみにしていて下さいねっ」



さっきまでの暗いテンションが一転。明るくなって布団を持ってパタパタと小走りしていった。



「感情の落差が激しい()なんだな。さて、俺も外に行くか(今後のことも考えないとな……)」



今後の課題、地球に帰る方法、魅紅の一族失踪の問題、闇裂く光との関係等、現在抱える課題は決して小さいものじゃない。どれをとっても、一筋縄には行かない問題ばかりだ。



「それと、あの紫色のオーラか……霊力や気力とは違う感じがするんだよな……」



あの無意識で使った力についても考えなければいけない。流石に頭が重い。どのみち外に出て、太陽の光を浴びながら自然の空気を吸うのはちょうど良かった。



「自然の空気に触れて、悩みを洗い流して貰うか」



この宿屋が街から離れている自然区よりに作られているのは、良夜の中で好ポイントだった。


良夜は外へ向かうため、応接間のドア前を通り過ぎ、玄関で靴へ履き替えると、応接間から魅紅が出てくる。



「あ、良夜。話があるのだけど」


「ああ~、ちょっと外で休憩してからにしてくれ……流石に色々有りすぎて疲れた」



今は話すより、とにかく外へ出たい想いが強く、魅紅の話は後にしてもらいスライド式の玄関を開けた。



ガララッ



「グルルル」


「……」



ピシャッ



ドアを即行で閉めた。



「んん? おかしいなぁ……今玄関を開けたら、デジャブを感じてしまったんだが。いや、まさかな。闇裂く光ならまだしも、ドラゴンがこんな所に居るわけないよな。うん、そんなことはない。絶対」



「あの……良夜……」


「いや、俺本当に疲れてるみたいだ。玄関開けたらドラゴンの巨大な顔がアップである幻覚を見ちまったよ」


「だから、あのね……」


「じゃ、改めて外ぶらぶらして来る」



再びドアをスライドさせる。



ガララッ(ドアをスライドさせた音)



「グルルルゥ」



ベロォッ(ドラゴンが舌で良夜を舐めた音)



「あぶっ!?」



良夜はドラゴンの大きな舌で、足元から頭の先まで一舐めでベトベトにされた。



「………………」



もはや言葉にならないとはこの事である。ベトベトな良夜はドラゴンと目が合ったまま固まってしまった。



「グル?」



何の反応もなく固まってしまった良夜を見て、ドラゴンが首を(かし)げる。



プツン(良夜の何かが切れた音)



「フッ……何でドラゴンがおるんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



良夜が壊れた瞬間だった。その後ろで見ていた魅紅は嘆息して呟いた。



「だから、話があるって言ったのに……」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



とある国の地下遺跡、地下300mまで深い迷宮で、人など絶対寄り付かないその場所に、十の人影があった。



「ご報告します。賞金稼ぎ“闇裂く光”を騙し、天塚魅紅の誘拐を行いましたが、結果は失敗。しかも、偽りの情報を与えた我々を、二組は協力関係になったと思われます」



メガネをかけた男性は、王席のような椅子に座っている男に伝えた。



「そんなことはどうでもいい。お前の録画した魔導水晶で見たが、奴は何者だ」


「わかりません。ノーマジーから来た能力者と、彼らの会話から推測は出来ますが……」


「ノーマジー……この世界とは違うもう一つの世界か。噂には聞いていたが、本当にあるとはな。あの未知の能力もノーマジーならではと言うことか」


「……それも、わかりません。彼については色々と不確定要素が多すぎますので」


「不確定……アンノウンか。興味があるな。見させて貰うか、不確定能力(アンノウン・スキル)をな」


「次はどうしますか?」


「最近入った傘下の者らを当てろ」


「はい。全ては我ら“夜魅(よみ)”が大願の為に」



賞金首の猛者が集まる大犯罪者組織━━━夜魅が暗躍していた。



『to be continued』

 

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