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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
第二章 異世界渡航編
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【#030《魅紅を狙う人物とは》】

良夜は部屋を出ていくと、いつもより足元が覚束(おぼつか)ないのに気付いた。



「あれ?」



思うように力が入らないせいか少しフラフラする。そこで意識がはっきりしていき、倒れる前の事を思い出していく。



「そうだったな……ドラゴンと戦った時に霊源結界を使っていたら、徐々に力が抜けていって……それから━━━!?」



眠るように落ちてしまった。あの時、最後に見たのは魅紅の顔だった。その記憶が戻ってくると不安要素が出てきた。



「魅紅はどこだ?あの後はどうなったんだ?側には闇裂く光の連中もいた……!」



次から次へと出てくる不安要素に、良夜は焦りを感じてくる。



「誰かいないのか……!?」



とにかく誰でもいい。今の状況を知りたい。そんな思いになっていると、下の方から話し声が聞こえてくる。


良夜は急いで降りて、状況を聞こうと応接間のドアを開けた。



「すいません、ちょっと聞きたい事が━━━」


「おはよー、良夜君!」


「ふむ、目覚めたか」


「……」


「あ、良夜!身体大丈夫!?動いても平気なの!?」


「……」



良夜は目が点だった。ドアを開けた先には異様な光景が展開されていたからだ。


良夜は心の中で軽く笑った後、(バカな。ないない。それはないなぁ、流石に)と流し、今一度目を擦って(さっさと眠気を飛ばさなければ)と思いながら、再び目を開けて、目の前の光景を視認する。



「大丈夫かい?良夜君」


「ふむ、寝惚けているのだろう」


「……。……」


「ねぇ、良夜……本当に大丈夫なの?」



と、さっきと同じ人物が話し掛けてくる。一人は無言のまま見ているだけだが。



良夜は再び頭を抱える。また同じ光景を見てしまい、まだ夢の中なのかと思うようになってくる。



(だっておかしいだろう。なんでドア開けるなり、いきなり闇裂く光の風代が親しげに挨拶してきて、その後に敵ボスの女に景気付けられ、なぜか如月には凝視され、そして(しま)いには魅紅が敵方と普通にティータイムをしているんだよ!しかも良夜君って友達か!ボスさんも部下の奇怪な行動を止めろよ!あと如月はなんでそう嬉しそうに俺の事を見ているんだよ!怖ぇーよ!そして魅紅!俺が心配している時に何してんの!?敵ボスさんとのティータイムが様になってますけど!?)



良夜は心の中で総ツッコミをしていた。そして出した結論は、極めて単純なものだった。



「すいません、まだ夢の中みたいなので、部屋に戻って二度寝します」



バタンとドアを閉めて、(次覚めた時は現実であってくれよ)と思いながら部屋へ━━━



「あれ?目ぇ覚めたんだ?名前はー良平だっけ?」


「早乙女良夜だ。伊座波はホンットーに人の名前を覚えないよな」



━━━戻らせてはくれなかった。



「はは……今度はお前らか。俺の夢の中とは言え、こうも総出演してくるとは……一ああ、一人知らない奴も部屋にいたが!」



良夜の逆ギレ気味な言葉に、伊座波と渕垣はポカーンとしていた。ちなみに、一人知らない奴とは、倉崎リュウのことである。彼らの中では、一番影が……と言うか、キャラが薄いせいか覚えにくいというのと、実際今まで一回も面識がなかったからが原因だろう。



「おい、伊座波いざなみ、こいつまさか……宰から説明受けてないのか?」


「みたいだな」


「……?(説明?)」



いろんな意味で警戒心むき出しの良夜を、二人は引っ張って応接間へ連れ戻した。


ドアを開けると魅紅が向こうからも開けようとしたのか、勢いに押されてよろけた。転ばなかったのは、鍛えた反射神経と運動能力の賜物たまものである。



「あ、良夜!良かった……いま説明しに行こうと……」


「あぁ……頼む。マジ、説明頼む……」



流石の良夜も夢か現実かくらいは分かる。ただ寝て起きた後の状況が、自分のキャパシティを越えてしまっていた為、現実逃避をしていただけなのだ。


だが流石に、魅紅が心配そうにしているから、現実逃避を止めて、しっかり受け止める事にした。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



それから説明を受けた。そこで分かったのは、まず闇裂く光側に誤解があった事。

どうやら天塚の人間が失踪したのを、魅紅が殺したと言う情報を依頼者クライアントから聞かされ、拘束し引き渡す依頼を受けたらしく、そこの誤解を魅紅とハーベルトの説明により納得。闇裂く光のボス園臣が言うには「二人の眼は嘘をついていない」らしく、すんなり信じてくれたみたいである。


そして誤解が解けた事によって、敵対する必要が無くなり、今は新たに生まれた“闇裂く光に誤情報を教え、魅紅を捕まえて来るように言った人物は何者なのか”と言う問題を審議するために、現在一緒に行動をしているの4である。



「なるほどな……。魅紅は心当たりとかないのか?」


「狙われるような事をやった覚えなんてないわ」


「しかし、狙う理由なら数知れません」



ハーベルトが深刻な表情で言った。



「狙われる理由?」



良夜の疑問に答えたのはハーベルトではなかった。

園臣(そのおみ)(つかさ)が漏らすように答えた。



「家柄の問題だな。天塚は世界規模で有名な御三家の一角だ。そこの姫様ともなれば、犯罪のネタとしては最高峰のものだろう。園臣家もその仕事柄、暗殺者(キリング)始末屋(スイーパー)等の客人は絶えなかったからな」



園臣についてはすでに聞いたから分かっていた。園臣家は武器を片手に悪即斬を柱に正義を貫く戦闘一族だった。だがある日、秩序を守る筈の元老院が悪道に走った為、それを断罪しようとして、逆に権力と元老院直轄の不正規暗殺部隊“奈落”によって壊滅させられた一族。



(一人だけ生き残ったんだよな……)


「同情なんていらないぞ。私達に敵を断罪するだけの力がなかっただけだからな。それに1人なのは早乙女も一緒だろう」



見事に心を読まれた事に驚いた。あと早乙女と言う呼び方を止めて欲しいとも言おうとした良夜だが、その前に園臣の今の発言に対して言わなければいけない言葉があった。



「一緒じゃない……。園臣の所は家族が子供を守っている!だが俺の親は守るどころか、教育放棄して消えたんだぞ!一緒にしたらアンタの家族に失礼だ……っ!」



皆は唖然あぜんとしていた。良夜が家族の件で、こんなにも声を荒げるなんて思わなかったのだ。

それは良夜自身も荒げるつもりはなかったらしく、直ぐに冷静になり皆の視線が気になり出す。



「とにかく、アンタの家族は立派だよ……もっと誇るべきだ」


「……誇る……か。ふ、今までにない考え方だな」



その場にいるのが辛くなって来ている良夜は、椅子から立ち上がり「ちょっと休む……」と言って、部屋を出ていこうとする。



「早乙女……。ありがとう」



その時、闇裂く光のメンバーはぎょっとした。あの無愛想で厳しくて、笑うこと等ほとんどない宰が柔らかに笑っていたからだ。


それに気付けたのは、普段の彼女を見ている仲間たちだけだ。ハーベルトや魅紅は勿論、良夜からだってその笑顔が特別なものだと言う事に気付いていなかった。



「宰様が笑うなんて……天変地異の前触れだ……」



等と言うユウの空気を読まない発言が入り、それに宰は反応し笑顔は直ぐに消えてしまった。



ゴゴゴ……!



「ユウ……久しぶりに模擬戦をしよう。勝敗条件は、どちらかが意識が無くなるまでだ!」


「え……?……あ!」



ユウが自分の発言の馬鹿さに気付いた時には既に遅かった。宰からは闘気が満ち充ちていた。



「た、助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


『無理』



自業自得のユウのヘルプコールに対して、皆は即答するのであった。



『to be continued』


どもども、焔伽(ほとぎ) (あおい)です!


今回は会議だけで1話が終わっちゃいましたね。退屈な方にはすいません。


そして、今回で第二章終章&30話達成記念となりました!サプライズイベントはないですが……。今は期限的に余裕がないので(笑)


次回からはヒロイン級の新キャラも登場する第三章の開始です!お楽しみに!

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