表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
第二章 異世界渡航編
35/140

【#029《良夜vsドラゴン》】

爆発が再び起こる。龍激砲を放ったドラゴンは、これで目の前の敵を倒したと判断し、その場から飛び去ろうとした。


また龍激砲の直撃を食らった魅紅や宰達は命を諦めていた。


魔力も満足にない状態では、魔法障壁を展開することま出来ない。助かるわけがない。万が一死ななくても、虫の息だろう。


そんなことが頭を巡っていた。



(え……?)



そこで二人は違和感に気付いた。


━━━なんで思考していられる?


確かに龍激砲は放たれ、そして着弾し爆発した。


━━━ではなぜ痛みすらもない?ひょっとして死んだのか?死後の世界にでもいるのか?


二人は最悪を想定して、恐る恐る目を開けていく。だが開けた先に見えたのは、死後の世界でも、死にかけた状態の自分達が居る訳でもない。


そこにあったのは魅紅に取って見知った人間だった。前にも似たような事があったなぁと考える。

それを思い出すと、不思議と安心感が出てきた。

だから魅紅は笑って、優しく彼に告げる。



「遅いよ……良夜」


「悪い!遅れた!」



頼りない発言なのに、良夜の背中は大きく見えた。しかも、良夜の身体からは輝かしい銀色の光が纏われている。



「良夜、能力使えるようになったのね!」



そう、龍激砲の直撃を受けた無事だったのは、良夜が霊源結界“羅生”を使って完全に防いだからだった。



(ノーマジーの能力者か……まさかドラゴン・ブレスを完全に防御し切るとは……)



良夜が防いだ地面だけは無傷だが、周りはクレーターが作られているほどの爆発だった。しかも、その大きさは一発目の比じゃない。



「ちょっと待っててくれ、魅紅。今ドラゴンと決着を付けてくる!」


「え?一人で!?」



無理だと止めようとしたが、良夜はすでにドラゴンへ向かって跳躍していた。


ドラゴンも黒煙の中から何かが向かって来るのに気付いていて、既に臨戦体制を取っていた。


そして黒煙を退けて出てきた良夜は、拳に力を入れた。



「霊源結界“霊装”!らぁっっ!」



ドラゴンは爪や翼で良夜を狙うが、それらを羅生で防ぎながら間合いに入り、腹部に拳を打ち込んだ。



ドォッ!とドラゴンの腹から背中にかけて衝撃が走る。良夜の拳は、龍の(うろこ)を砕き、肉体部分へダメージを入れたのだ。



「ゴ……ァ……!」



ドラゴンは悶絶しそうになる。だが、苦しみながらも千羽刃(ウイング・スレイグ)を放ち抵抗してきた。



「さっきのより威力の弱いのが、俺の羅生を破れるとでも?」



良夜はドラゴンの攻撃を防ぎながら地面に着地した。



「結界の防御以外の使い方を見せてやる」



羅生の結界が良夜の目の前に六角形状に展開される。



「霊源結界“参ノ型・破錐(はきり)”!」



その瞬間、結界を構成しているエネルギーのみが鞭のようになってドラゴンに向かって放たれる。


それは銀色の雷のようにも見えた。

そして、破錐(はきり)はドラゴンの身体に当たり、その瞬間破鎚はドラゴンの体を貫いた。


身体に穴を開けたわけではない。どういう原理かは分からないが、破錐の力のみが身体を通過するように貫いたのだ。


ドラゴンを一瞬苦痛の叫びを上げると、身体から力が抜けたかのように滞空を止めて、地面へ落ちた。



「……良夜が、ドラゴンを倒した……?」



魅紅は一部始終の戦いを見ていたが、本当に倒すとは思ってなかっただけに驚愕(きょうがく)だった。


「待て!様子がおかしい」



宰がそう言うと、良夜はふらふらと揺れながら、地面に倒れた。



「良夜!?」



魅紅は慌てて良夜の元へ駆け寄る。そして、膝で支えながら、両腕で良夜を抱えて除き込むと、凄い汗を掻いて苦しそうに息を荒げていた。



「はぁ……!はぁ……!すまん……ちょっと休むは……」



そう言うと良夜は、魅紅の膝の上で寝てしまった。



「寝ちゃった……」



スゥスゥ気持ち良さそうに寝ている良夜を見てみると、魅紅は安心して優しく頭を撫でた。



「ありがとう。助けに来てくれて」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



良夜は思い出していた。その昔、まだ良夜が幼少の頃、愛する父と母と一緒に過ごした日々。

優しく、強くてかっこいい父に対しては、憧れの感情を抱いていた。

誰よりも自分の事を大切にしてくれて、時には厳しく怒ってもくれるけど、いつもその後に優しく抱き締めてくれる。

大好きな両親。だが今は居ない。死んだのか、消えたのかは分からないが、6つ目の誕生日の時に両親は失踪した。


思い出せない。いつも両親の失踪した日の事を考えると頭の中が真っ白になる。まるで思考力を奪われたかのように。


だけど、何かが引っ掛かる……。両親は去る前に何か言ってなかったか?


思い出せそうな気がする。「……あ……て……あ……」、まだ正確には思い出せない。「……あ……てぃ……あ……」、やはり引っ掛かる……、なんだ?どこかで聞いたような……昔ではなく、つい最近に……そこで父が最後に言った言葉が繊細に蘇るような感覚にがした。



ピピピッ!ピピピッ!



「は!?」



良夜は目覚めた。どこか懐かしい匂いがする。



「畳の匂い……」



良夜は起き上がる。辺りを見回す。そこは宿屋のラ・フェイスだった。



「俺……いつ帰って来たんだ?」



ラ・フェイスは地球の日本の造りによく似ていて、良夜に取っては懐かしく親しみ深い宿屋だった。


朝日が(ふすま)から射し込む。辺りには誰もいない。



「頭がボーとするな……誰か居ないのか……?」



良夜は部屋を出て、誰か居ないか宿内を探しに行く。



『to be continued』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ