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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
第二章 異世界渡航編
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【#023《元S級賞金首vs特A級賞金稼ぎ》】

(さて、どうしたものでしょうか……)



ハーベルトは額に汗を滲ませながら考える。



(……恐れ入りました……まさか、ここまで隙が無いとは)



ハーベルトは先程から居合いの構えを取る宰に、接近して蹴りを打ち込もうとしていたが、武道を極めた者に見えるようになる軌道線を宰が作り出していた為、攻撃へ移れずにいた。


しかし、宰も同じでハーベルトの軌道線に攻撃を止められていた。



(何より恐ろしいのは、瞬脚で背後に回っても、彼女の居合いによる間合いが真後ろまで届くと言う事……かといって上から攻めても、結界突入時に見せてしまったせいか、対策を取られていますね。跳んだ瞬間に、空へ上がられる前に斬り落とされる。となると……)


(流石は元S級犯罪者……私の手を読まれている上に、どんな角度と速度を持ってとしても、紙一重で交わされてしまう。ならば……)


((速度を持って、相手の思考を上まる!))



その瞬間、宰とハーベルトが立っていた位置から姿を消す。


ドンッ!


気付くと二人がいた位置の中間地点に二人はいた。


砂ぼこりが立ち上る。瞬脚で移動した二人は中間地点に移動して、宰が抜刀する。だが、その刀をハーベルトは、脚で地面に叩き落とした。


宰は下段から、ハーベルトの足を斬ろうと振るが、ハーベルトはすでに瞬脚で移動していた。



(ハーベルトの姿が見えない……連続瞬脚をして、姿を捕捉されないようにしているのか……ここまで無音・無気配とは)



ハーベルトが扱う特殊な瞬脚。魔力爆発による加速時に起きる衝撃や魔力の気配を完全に消し去る技。これが使えるのは、アルカティア広しと言えども、ハーベルトぐらいしか使えないだろう。



(彼女は私の“無型瞬脚”を見切る事は出来ないようですね……なら!)



ハーベルトは宰の背後に回った。



「!」



誰もが気付けぬ程の速さで回り込んだ筈だが、宰の眼は後ろにいるハーベルトを捉えていた。



「園臣流“枯葉かれは流し”!」



抜刀された刀は、ゆらゆらと枯葉が水を流れるような曲線を描き、後ろにいるハーベルトを斬った。腕の柔らかさと、刀の長さ、また刀を持つ手の複雑な動きが360度を斬撃範囲にしているのだ。



「む!?」



だが宰は気付いた。ハーベルトを斬った感触がないことに。



「確かに斬った筈だが━━━!?」



すると斬られたハーベルトの姿が、ボヤけていき、やがて姿を消した。



「瞬間加速による残像か!?」



ならば本物はと辺りを探してみるが、どこにも見当たらない。



「まさか!」



宰は急いで上空を見上げる。そこにはハーベルトが空へ向かって翔んでいる姿が見えた。



「いかに私の速度が貴女の知覚を上回っても、近付けば制空圏内に入ってしまえば、すぐに反撃されてしまう。そこを利用させてもらいました」



ハーベルトは宰が自分を捕捉して斬りつけて来る前に、通常より瞬脚の速度を上げて、刀が身体を斬る寸前で更に宰の背後に回り、空へ跳躍したのだ。



「近過ぎてはまた制空圏に捕捉されてしまうし、遠過ぎても残像がバレて跳躍する時間がなくなってしまう。大変でしたよ、貴女の制空圏のギリギリ外を図るのは」



ハーベルトは50m以上上がった空中で、方向転換をした。



「“跳脚(ちょうきゃく)”!」



ハーベルトは新たな瞬脚、魔力を脚に纏って虚空(風)を蹴って、地上へ向かって落下する。

そして身体を半回転させて、かかとおとしの姿勢に入った。



「会得困難と言われている跳脚まで使えるのか!面白い!ならば、私もそれなりの技を持って迎え撃とう!園臣流奥技“開花閃撃(カイカセンゲキ)”!」



宰の刀身がピンク色に光出す。そのまま抜刀した刀は、閃光となってハーベルトを迎え撃つ。



「「はああああああああああ!!」」



そして、2つの攻撃がぶつかりあった瞬間、爆発を巻き起こした。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



ハーベルトと宰の戦いが激化してきた時、宰の側近倉崎リュウは、魅紅を連れて、その場から離脱していた。



「放して!放してよ!」


「駄目だ。万が一にもお前が取り戻されない為にも、この地を離れる」



魅紅を抱えたまま、森の中を駈ける。



「この……!いい加減放しなさい!“爆炎”!」



魅紅は右手から火球を放つ。だが、その火球はリュウに触れる瞬間、右へ逸れてしまった。



「また……!何なの、その力は……昨日も私の攻撃を流したわよね!」


「おとなしくしてくれ!面倒は起こしたく無いんだ!」


「散々振り回しておいて言えた台詞!?」


「とにかく従ってくれ!」



元々、仲間を助ける為に誘拐されたり、事情も分からず移動ばかりしたり、宰が口からもらした「魅紅に対する誤解」があったりと、イライラしてきた所に、リュウと言う慌てるだけでハッキリしない男に対して我慢も限界を迎えようとしていた。



「モタモタしないでくれよ!こっちは急いでるんだぁ」



ブチッ



その時、魅紅の中で何かが切れる音がした。



「ああもう!必死過ぎるわよ!緊張感に欠けるわ!事情を説明しなさい!そもそもモタモタって何!?」


「え、え……?」


「モタモタしているのは貴方じゃない!振り回される気持ちにもなってみなさい!こう言う言い方は良くないけど言わせて貰うわ!貴方ダメ!失格よ!賞金首失格!向かないわ!」


「あ……はい、すいません……」



状況的に見ればリュウの方が有利なのだが、それを魅紅の怒気とも覇気とも似た気に圧されて、逆らう等と言う気持ちが湧かず、黙って魅紅に説教タイムを満喫するハメになったリュウであった。



『to be continued』



こんな終わり方ですが、ふざけているわけではないのです。by作者


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