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異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
第二章 異世界渡航編
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【#015《賞金稼ぎ集団“闇裂く光”》】

深夜1時00分。夜の虫が鳴き、風が草木を靡かせ、静かな音を奏でる。

そこに不協和音が混じる。駈けてくる音。数人の足音が宿屋ラ・フェイスに向かって近付いてくる。

彼らは“闇裂く光”と言われるアルカティア切っての特A級の賞金稼ぎ集団だ。


級の基準は教議会が定めたモノで、賞金首を以下のランクとする。


S級(怪物級とも言われている)罪状・実力等の規模が違う。故にアルカティアでもS級は、過去・現在含めて12名程しか認定されていない。

賞金稼ぎにも同じS級しか相手をしてはいけない規定がある。


A級(大犯罪者・犯罪大組織等が該当)S級に比べて、A級はそれなりにいる。殺人数や犯罪の規模がずば抜けている者にしか与えられない。

中にはAとSの狭間にいる者もいる。

賞金稼ぎには例外があり、組織で総合がSに匹敵するならば、全員で討伐を条件でS級犯罪者を捕まえる権利が与えられる。それが特A級と言われる者だ。


他は以下の通りである。


B級(殺人数が5人以上で、実力も手練れの犯罪者)

C級(普通の犯罪者・一応殺人も含む)


D級(小物)


等があり、それらの級を討伐又は捕縛した者が、賞金稼ぎとしての級となる。


故に闇裂く光は特A級。

実際の構成人数は6人だが、いまラ・フェイスに向かってるのは4人。これだけでも充分に脅威である。その全員がA級の実力だからだ。

━━━しかし、その4人が足を止めた。



「これはこれは、何時間振りでしょうか? 今宵は満月で、優雅に星空を眺めていたのですが……御客様がいらっしゃるとは」



喋っているのは、満月を背にメガネを光らせるハーベルトだ。



ツンツンヘアーと細い目が特徴の男が口を開く。



「お前は、あの時の……」


最初にハーベルトがノーマジーからアルカティアへ戻った時に、襲撃してきた闇裂く光との乱戦を覚えていたのか、ツンツンヘアーの渕垣(ふちがき)シンが言った。



「天塚の執事だな」


「そういう貴方は、渕垣シン……二つ名は夢幻のシンでしたね」


「知ってるのか?」


「勿論知っていますよ。昔の私がね」



ハーベルトは皆が理解出来ない言葉を吐く。そして、左から順に見ていく。



「伊座波ケイ“光閃のケイ”、風代ユウ“虚無のユウ”、如月カイ“暗黒のカイ”……これらの豪華メンバーを知らないのは、田舎者ですね。まあ、最後のは賞金稼ぎではなく“賞金首”だった人間ですが」



その言葉に、角刈りIN天然パーマと言った特殊な髪型をした風代ユウが驚いた様子になる。



「そこまで知り尽くしているなんて……!流石は名高い天塚一族の筆頭執事だけはあるね」


「いや、俺らの名はかなり売れてるから、知ってて当たり前だろ」


「伊座波君!?」



伊佐波と言うただ髪を伸ばしているだけで、コレといった特徴のない容姿の男が風代にツッコム。



「知ったかしない方が良いぞ、カッコつけにはならないからな」


「渕垣君にカッコつけとか言われた!?」


「……キメェ……。……風代キメェ……」


「如月君まで!?て言うか二回も言わなくても!」



四人が変な言い合いを始めてしまう。そんな様子を見たハーベルトは、素直な感想を漏らす。



「仲が宜しいんですね」


『よくない!!』



一致乱れぬ返答が帰ってきた。



「……さて、御話もそこまでにして、始めましょうか?」



ハーベルトは架けていたメガネを外し、胸ポケットへしまう。そしてスゥ……とハーベルトはその姿を消した。まるで夜と同化するように気配すらも完全に消した。



『!?』



闇裂く光の四人は警戒しだす。



「気配が完全に消えた……」


「渕垣君!執事はどこに行ったの!?」


「なぜ俺に聞く!?」


「それはせきに━━━君なら出来るよ!」


「責任!?いま責任って言おうとしたな!?あれか?見付けれなかったり逃がしたりしたら、責任を俺に負わせようって魂胆か!」


「ソンナコトナイデス」


「棒読みアリガトヨー!」


「ガザヤン!フチヤン!遊んでる場合か!それとフチヤンは、能力がら俺達より空間把握が得意だろ!研ぎ澄まして見付けろ!」



渕垣と風代のケンカに呆れた伊座波が一括した。

風代は「ほらぁ~」とドヤ顔で渕垣を見下ろし、渕垣も悔しそうに「後で覚えてろ……」と文句を溢し、魔力を練り出した。



その瞬間、渕垣の腹部に衝撃が走り、気付くと宙に舞い上げられていた。


伊座波と風代は、渕垣の名を叫び心配そうにするが、如月だけは見向きもせず小さく笑った。



「ぐっ!」


「いだぁっ!」



謎の衝撃は伊座波・風代にも襲う。直ぐに辺りを見回すが、ハーベルトどころか誰の姿も見当たらない。

ただ衝撃が何もない所から襲ってくる。


渕垣・伊座波・風代は、警戒して探りを入れるがハーベルトを確認することが出来ない。


しかし、その中で如月だけが状況を掴めていた。



「……なるほど……“瞬脚”か……」



その言葉に伊座波が反応する。



「瞬脚!?バカな……そうだとしたら速すぎる!」


「……そうだな……確かに速い……」



瞬脚(しゅんきゃく)、アルカティアの超高速歩行術。脚に魔力を込めてブースターとして爆発させることで、超高速移動を可能とする技。止まる時も、魔力の爆発をブレーキとして使用する。

また、連続瞬脚を可能にするために、魔力のアクセルとブレーキを上手く繋げる技能“瞬転”と言うのもある。


そして、これらには移動する際に必ず発生する魔力振動がある。大抵の魔導士は、その魔力振動を察知し高速移動を追うことも出来るが、ハーベルトが扱う瞬脚は闇裂く光の中でもずば抜けた実力を持った如月カイですら見切れなかった。



「……面白い……」



そう言うと如月は、暗黒エネルギーを足に纏い、空へ浮かび上がる。空中へ浮遊した如月は、滞空上に暗黒物質を球状に集束していく。



「……目で追えないなら、隙間なく破壊すればいい……“黒連弾”……」



数十もある暗黒の球体が一斉に周囲一帯に降り注ぐ。


墜ちた球体の分、爆発していき徐々に辺りが破壊されていく。

ハーベルトや仲間も巻き込めながら。



(くっ!なんと言う力技……!)



ハーベルトが姿を現す。



「……出てきたか……流石に足場を崩され、絶え間無く一帯を攻撃されれば、自慢の高速移動も出来ないだろう……」



フゥと苦笑したハーベルトは、素直に如月の発言を認めた。



「えぇ、無口な貴方がこう言った過激な手段を取るとは意外でした」



そこでハーベルトは如月から目線を下に移して「しかし……」と言葉を挟む。



「彼らは良いのですか?」



そこには如月の攻撃に巻き込まれて、死屍累々となった闇裂く光のメンバーがあった。

如月は見向きもせず言う。



「……構わない……」



『to be continued』

お待たせしました。どもども、焔伽(ほとぎ) (あおい)です!


今回は本編と同時に、人物記録も更新しています。天塚魅紅の挿絵とPRですので、ご覧ください。挿絵は例のユー・ジンエーさんが描いてくれています。


それでは次回!

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