【#010《魔力と霊力の暴走》】
良夜達の居る町は、都会の角にある団地で、日のある内は車両や人の行き交いが多いが、夜になると一変して静かになる。
町を照らすのは、間隔置きされている街灯と星達の光りのみで、それ以外の光はない。
そんな町の夜空に、明らかに異質な光が発せられている。それは戦う三人の男によるものだ。異界のお嬢様を助ける為に戦う良夜・お嬢様をお守りする為に戦う執事ハーベルト・天塚一族のお嬢様を殺す為に戦う賞金稼ぎ組織“闇裂く光”の一員如月カイ、その中で現状最高の攻撃力を持つカイの暗黒魔法が夜空を照らす。
迫り来る暗黒エネルギーによる光線、宇宙にすら干渉するその力は凄まじく、大気をもはね除け破滅の力が良夜を狙う。
「霊源結界“羅生”!」
しかし、そんな攻撃も良夜が造り出す銀色に輝く結晶のような壁は、暗黒の力をも防いでいた。
「……俺の攻撃を二度も防ぐか……お前、その力は何だ……」
「霊源結界……命名したのは別の人だがな。お前らが使う魔法とは違うと思うぞ?」
良夜は「なにせ……」と言葉を紡ぎ、カイだけではなくハーベルトや魅紅にも聞こえるように言う。
「地球には魔力なんて満ちてないからな」
「……」
(魔力を使わない能力……希少能力と言うやつかもしれませんね……)
「そうよね……でも、それじゃ良夜のその力は何なの?」
「……希少能力、じゃなさそうだな……」
カイが言った言葉が知らない単語だった良夜は首を傾げるが、直ぐに答えを教えた。
別にここに居る者達に話しても、これからの人生に支障はないだろう。何せ全員別世界の住人なのだから。
それがあったから教えても良いと良夜は判断した。
「魔力は満ちてないが、この世界の人間は稀に霊力と言うのを体内に宿して生まれて来る時があるんだよ」
「……霊力……」
「聞いたことがないわ……」
カイと魅紅が疑問に思う。良夜は説明を続けた。
「お前らの世界に幽霊とか妖怪的な存在が居るのかは分からないけどな、こっちにはそう言った人外が居るんだよ。そう言った存在を滅したりする力を霊力と言って、普通じゃ有り得ない力を起こす事が出来る」
「その霊力によって小僧……貴様は、先程のような結界を造り出したと」
ハーベルトが質問風に聞く。良夜は「ああ」と肯定し、直後に「ただし」と付け加える。
「俺の霊力は“ある人”が言うには、許容量が膨大らしくてな、そこいらの霊能者や退魔師より余程強力な霊術を使えるんだってよ」
「で、でも、聞いたことがないわよ!力を外からではなく、内から放出するなんて……」
「確かに。我々は外に存在する魔力を身体に取り込んで、魔法を発動する力にする……。しかし、小僧の理論では内にある力を媒体にして霊術と言われる力を発動する。真逆ですね」
「核が生んでるって事よね……?」
「恐らくは……。可能性論ですが」
ハーベルトと魅紅が試行錯誤していると、カイはさっきまでの無表情とは違い、どこか楽しそうに良夜を観察していた。まるで獲物を見付けた豹が飛び付くタイミングを計るように。
「まあ魅紅や似非執事の言ってる事は未だ理解出来ない事ばかりだが……」
良夜はカイの方を見る。
「お前はやけに嬉しそうだよな。俺には分かるよ。その目は、喧嘩好きが強い相手を見付けてウズウズしている奴の目だ」
良夜は背の高さや、鋭い目付きから喧嘩は日常の一部になる程絶えない生活を送っていた。
中でもたまに来る実力者等は、良夜の内なる力を肌で感じ、強者と闘える喜びで嬉しそうにする人間もいた。
きっと如月カイは、そう言った人間と同じ表情をしているのだろう。
「……“黒崩球”……」
カイは右手に暗黒物質を、左手に暗黒エネルギーを集束させる。
「……っ!」
良夜は即座に感じ取った。
━━━アレが何かは分からない!だが“アレ”を完全に発動させてはいけない!
そんな予感がした。それから良夜は直ぐ行動に移す。
己の中にある霊力を引き上げる。良夜の両手には銀色の光が放たれていく。ここまで霊力を絞り出すのは初めてだ。昔に車の衝突事故時にガソリンに火が着火した時、瞬時にこの結界を使って爆発を押さえ込んだ。
━━━だけど、それじゃ足りない!
それは肌で感じて分かった。カイは両手に集めた暗黒の力を一つに組み合わせ、高エネルギー体を造り出した。
「……町ごと消えろ……」
瞬間、野球ボール程に凝縮された2つの暗黒の力は、臨界点を迎えたかのように拡大爆発を起こす。
夜の町空に凄い勢いで黒い球体が膨れ上がっていく。
━━━アレに触れてはいけない!
良夜だけではなく、ハーベルトや魅紅も感じた。
「間に合え……っ!霊源結界“肆ノ型・封滅”!」
パシィン!と良夜の両手から放たれた銀色の光は、膨れ上がる黒い球体を囲むように展開されていく。
黒い球体を円状に囲む銀色の線状は、まるで木星を囲むリングのようだった。
そして、銀色のリングは黒い球体を包むように球状の膜を造り上げる。
「……俺の奥技が止められた……」
顔こそ無表情だが、ハーベルトは見抜いた。僅かにだがカイの頬の筋肉がひきつっている。
(……あの暗黒のカイが引いている。あの良夜とか言う小僧、S級の魔導師にすら匹敵しますね……しかしっ!)
ハーベルトは不安を覚えた。それは魅紅も同じだった。
「まずいわ……このまま行くと、力と力が反発しあって暴発する……!」
確かに良夜の結界は強力だ。強力だけに、封印魔法クラスの攻撃すら防ごうとしている。だからこそ、中の暗黒の球体と、それを囲む霊力を帯びた結界が不可思議な反応を起こし出していた。
「……」
「なん…だ……!?」
そう、銀色の結界と黒い球体が同化し出して来ているのだ。魔法と魔法が同化するのは普通ない。だが、今は魔法と霊術・魔力と霊力のぶつかり合いだ。
お互いが未知の力同士な為に、どんな未知の現象が起きるか分からない。
風が吹き荒れる。先程まで静かだった町が嘘のように、銀色と黒の光に町は照らされ、そこから放たれる風圧に木々や窓どころか電柱すら揺れだし、流石に異常に気付いた住民達も何事かと外の様子を見に来て、謎のエネルギー体を見て騒ぎ出している者等も現れている。
「マズイ!目立ち過ぎてる……!」
「良夜!その技を止めて!このまま行くと、暴発するわよ!?」
魅紅が良夜の側によって静止を促すが、良夜は冷や汗を掻きながら答える。
「悪い……何だか止められないんだよ……」
「え? どういうこと!?」
「力の放出が止まらないんだよ!」
「恐らくカイの魔力が引き寄せているのでしょう」
「ハーベルト!」
ハーベルトは魅紅を庇うように前に立つ。
「カイの暗黒魔法の根源は引き寄せる力……未知の力に触れて、それを取り込もうとしているのかも知れません」
「冷静に説明してないで何とかしてくれ!」
その時だった。風向きが変わった。先程まで外へと放出していた風圧が、今度は引き寄せる風になって周囲のモノが黒と銀の混ざった球体に吸い込まれてしまっていく。
その力は球体の近くにいた者達、つまりカイ・良夜・魅紅・ハーベルトをいの一番に吸い寄せる。
「……チッ……」
「きゃあああ!」
「魅紅御嬢様!」
「くっ……そぉぉお!」
皆はそれぞれ吸い寄せる風に抗ったが、その勢いは凄まじくカイとハーベルトを呑み込む。
「ハーベルト!いやああ!」
カイはもっとも球体の近くにいたせいで、ハーベルトは度重なる魔力の消費で抗えず、球体の中へ消えていった。
良夜は魅紅の手を掴んで、側の電柱に右手で掴まるが、体は球体の方へと引き寄せられ、鯉のぼりのように浮き上がってしまう。
「手を話すなよ!」
「ハーベルトが……ハーベルトがぁ……」
魅紅は涙目で球体の方を見ていた。
「……っ!?」
良夜は一瞬だが、何かを聞き取った。
(いま……近くから悲鳴がしなかったか……?しかも聞き覚えのある━━━)
その瞬間、手に暖かい水が当たった。
なぜ暖かい水が飛んできたのかは分からない。しかし、その水滴のせいで電柱を掴んでいた右手が滑りやすくなってしまい、電柱から手が離れてしまったのだ。
「そんな……!」
そのまま良夜は魅紅と一緒に球体の方へ引き寄せられていく。
(逃れられねぇ!一か八か!霊源結界“弐ノ型・霊装”!)
良夜と魅紅の身体に銀色の光が宿る。結界の力を身体に纏う事で、防御力や身体強化を行う霊術だが、あの球体に入ってどこまで持つか分からない。
無いよりはマシだと言う苦肉の策だった。
そして、二人は球体の中へ消えていき、魔力と霊力を持った者が消え去った為、球体も収縮していき、町の夜空から跡形も無く消え去った。
残ったのは、人々の騒ぎ立てる声だけだった。
━━━この日、良夜や魅紅達アルカティア人を含む五名の人間が姿を消した。
『to be continued』
予定より遅れての投稿になりました。
今回で第一章が終章します。次回からは第二章開幕ですが、まだ新章突入と言えるほどではありません。一章と二章はセットみたいなものですから。後編だと思ってください。
さて、主人公もヒロインも消え去ってしまいましたが、アンノウンスキルはどうなるのでしょうか?先行き不確定です。タイトルだけにアンノウンです、あっはっはっはww
はい、すいません。寒いです。寂しいです。ちゃんと今後のストーリーは確定されているので安心してください。それでは次回で!




