表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の不確定能力(アンノウンスキル)  作者: 焔伽 蒼
第一章 世界邂逅編
14/140

【#008《良夜の危機(ピンチ)》】

夢奈は魅紅を浴室へ案内してから、着替えの服を貸してくれると言う事で、二階の自室へ行った。

夢奈を見送ってから、感謝しつつ魅紅は来ている服を脱ぎ、身体を一度シャワーで洗い流してから湯船に浸かる。

オレンジの色と匂いが気分を良くさせる。当然ながら入浴剤等と言う洒落(しゃれ)た品があるのはノーマジーぐらいだ。


アルカティアは、特に自分が住んでいた城は、大きさこそここの何十倍もあったが、それはただ広いだけだ。湯船に色や香りを付ける等と言う発想そのものがなかった。

ノーマジーの文明には驚かされてばかりだ。



「この世界で普通の生活出来たら幸せ何だろうな~……」



そんなことを呟く。それは願望だった。願望、つまり魅紅はこの世界に長い出来ない事を分かっていた。


家出と言ったって、いつまでも帰らない訳じゃない。心を休ませたい、少しでも自由を味わってみたい、ちょっとは父にも生活の環境を改めさせたい、そう言った気持ちでした家出だったので、数日自由を堪能したらしっかり謝罪して戻るつもりだった。

それに魔力がないと言う事は、身体にどんな異変をもたらすかも分からない。

当然ながら、良夜や夢奈に世話になるわけにも行かない。

だからこそ、今だけでも、この一時の自由を、幸せを楽しもうと思った。



「……わがままだよね、私」



苦笑して呟く。そこで魅紅はある物に気付く。それは目の前にある装置だった。

ボタンが2つ程有り、そこには英語でONとOFFと書いてあった。そして、ボタンの上には「ジェットバス」と書かれていた。



「何だろ?」



普通浴場にボタン等ない。それ故に気になってしまった。子猫並の様に、好奇心(本能)がままにボタン(ON)を押した。



━━━━━━━━━━━



良夜は食器を洗い終え、最後に台所周りを濡れた雑巾で拭いていた。



「湯沸し器付の蛇口に、食器乾燥機まであって、なぜ食器洗い器が存在しないんだ」



雑巾拭きも終わり、手を(ぬぐ)ってから夢奈に、全員が風呂へ入った後に、自分ももらって良いか聞きにいこうとした━━━ところで、重要な事に気付いた。しまった!俺はとんでもないミスを犯したんじゃないのか……!?と。



「常識的に考えれば、客として俺は風呂を最後に貰うものと思っていたが……!魅紅や夢奈が入った後に入る方がまずくないか!?論理的と言うか倫理的に!いや、待てよ……俺が入った後の湯に、女子を入らせるのもどうかと思うぞ!くっ!どっちが正解なんだ!」



彼女が居なかった者特有の壁にぶつかる良夜。実際の答えは友達同士なら後湯。異性同士なら相手に聞く(基本は先湯)である。一般的には。



【にゃあああああああああああああ!】



その突如鳴り響く叫びに良夜はビクッとする。



「な、なんだ!?」



声は浴室の方からしていた。そこには魅紅がいる。まさか敵かと思い、急いで浴室へと向かう。


しかし、浴室の扉に手を架けようとした瞬間、良夜はハッと気付く。



「おぉっと、危ない危ない……このパターンは、よくある開けたらそこには裸の彼女がパターン。甘いぜ!俺はそんなドジは踏まん!まずはノック━━━」



ガララッ!



ノックしようとしたらスライド式の扉が勢いよく開かれた。扉を叩く予定だった右手は、とっさに引き戻せず中から出てきた裸姿の魅紅の谷間にジャストフィットする。


ふにゅうと柔らかい感触を味わうが、魅紅は気付かずそのまま良夜の胸にしがみついた。



「な、な、なぁ!?」



魅紅の胸の谷間に挟まれた右手は、しがみつかれた際に自分の体と挟まれるように圧縮されたため、抜くことも出来ない。


いや、それ以前に目の前にある全裸の少女。そこに注意は行ってしまう。


白く細いしなやかな身体、紅い髪の隙間から見えるお尻、更には自分の右手と上半身にはふっくらした成長途中の美乳の感触、良夜の理性が弾け飛びそうな程に魅紅の身体は最高のものだった。



「いやいやまてまて!落ち着け!落ち着くんだ、俺!心頭滅却をしろ!」


「ど、どうかしたんですか!?今悲鳴が━━━!?」


「……あ」



心頭滅却する間も無く、次なる事態が良夜を襲った。魅紅の悲鳴を聞いて、二階から急いで降りて来てくれた夢奈が、良夜に裸の魅紅が抱き付いている光景を目撃してしまう。



「あ、あの、その、お邪魔しました!」



そう言って二階へかけ上がってしまう。



「待って!誤解するのは分かるけど違うから!その誤解、誤解だからぁー!」


「ふぇ?」



良夜の叫びで、我に帰った魅紅が冷静さを取り戻す。



「……」



自分のあられもない姿と、目の前にいる良夜を交互に見る。



「……落ち着こう。まずは深呼吸をして、考えを整理させるんだ」



そう言うと、魅紅は素直にスーハーと深呼吸を行う。そこで気付く。胸元に違和感がある。と言うか手がある。なぜか良夜の右手が、自分の胸に挟まれているのだ。



「……ッッ!?」


「しまった!?」



魅紅はカァーと顔を深紅に染め上げていく。



「い、い……」


「い……?」



瞬間、魅紅の右手が紅く光る。まるで炎を纏っているかのように。



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」



謎の力を付与された魅紅の平手……掌打は良夜の顔面に放たれる。

良夜なら結界で身を守ることも出来たが、唐突な攻撃な上に右手に未だ伝わる感触に集中することが出来ず、その夜━━━爆発音と銃弾のようなパァァァンと言う音と何度めか分からない叫び声(悲鳴)がこだました。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━



異世界アルカティア、天塚一族の本城がある辺境の土地“アースレイク”に帰ってきたハーベルトは、現在緊急事態に追いやられていた。



枯れた大地が爆発する。辺りには爆発により巻き上げられた煙で視界が悪くなっていた。


その中に身体のあちこち怪我をしたハーベルトが、息を切らして身構えている。



「ハァ!ハァ……!油断していました……っ!あるじや主戦力である魔導騎士団が居ない所を狙ってくるとは!天塚のセキュリティは情報面も完璧に管理されている、となると誰かが情報を流したとしか思えませんが━━━!?」



そこでハーベルトは何かに気付き、その場から高速で移動した。その瞬間、さっきまで立っていた場所が爆発する。



「危ないですね……爆発系の魔法……いや、あの地面に出来た痕は、破壊と言うよりは消滅に近い気もしますが……(どのみち私の魔力は、転移門(ゲート)のせいでほぼ底を点いている……部が悪いですね!)」



歯噛みをするハーベルト。転移門(ゲート)とは、次元と次元を繋ぐ次元転移魔法の事だ。アルカティアからノーマジーへ開ける際は、大気の魔力を使うから個人の消費はないが、逆にノーマジーからアルカティアへ帰る際は、大気に魔力が満ちていない為に、個人の魔力を使用しなければ発動しない。

莫大な魔力を使う転移門(ゲート)を使った後のハーベルトは、通常の20%未満の力しか使えないでいた。



(それに敵は一人ではなさそうですし……あの爆発系魔導士以外にも3人……いえ、4人程気配を感じますからね……!)



ハーベルトの魔力感知では、天塚一族へ襲撃してきたのは全員で5人と感じた。



「仕方ありません……このようなタイミングで御呼びするのは心引けますが━━━」



ハーベルトはそこから炎系転移で離脱した。


炎に包まれて消えたハーベルトを見ていた白いローブを被った人間がいた。その周りには白いマントを羽織った男4名が立っている。


リーダーらしき白いローブを被った人間が言う。



「如月カイ、新たな任務だ。奴の後を追うんだ。隠れている天塚一族の者の居場所を掴め」


「……」



如月カイと言われる者は、言葉こそ話さなかったが、目で分かったと合図を出し、ハーベルトの後を追った。



『to be continued』


どもども、焔伽(ほとぎ) (あおい)です!


もしかしたらタイトル的に、良夜がシリアスな危機に陥ってしまうと思ったかもしれませんが、分かってあげてください。良夜にとっては……これも危機だったのです!

勿論、一般男子から見たら「死なば諸共!欲を満たして失う命も美徳なり!」かも知れませんがねっ!「」内のは、ある友人が僕に言い放った名言(?)です。


ちなみに第一章はですね、本題である異世界・ハーレム要素がありません。第一章そのものが長いプロローグのようなものですので。

予定では第一章は、10話で終わるつもりです。第二章からは、異世界ファンタジーな物語になっていきますので、しばしお待ち下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ