【#132《ユメ・千種vs黒羽》】
魅紅の話を聞き終えた良夜は、「そういうことか……」と納得していた。
「だから、私の友達を……助けて……っ!」
「分かった」
即答だった。
「となると白折も助けなきゃな。やっぱり支土は倒さなければ駄目な気がするな」
良夜は他にも支土とは話したい事も出来たと思考する。
どのみち戦うはめにはなりそうだがと、ため息をするが直ぐに決意をする。
「悪いんだが、その白折の説得と相手を頼めるか?」
「うん、私も更とは話し合えたいし、それは私がやるべき事だから」
「頼む。俺は支土の相手をする!」
「分かった!あ、あの、良夜……?」
再び支土達のいる場所へ向かおうとすると、魅紅に呼び止められた。
振り向くと通り過ぎ様に魅紅は言い逃げをするように言う。
「ありがとう。良夜、かっこよくなったね」
「へ? あ、うん……え!?」
振り返ると魅紅はすでにいない。いくら魔力を回復させたからって、速力に魔力を使わなくてもとも思う。
「って待て!まるで今までカッコ悪かったみたいな……!」
そう言うが、内心はドキドキしていた。
「くそ……やっぱカッコ悪いな、俺……」
顔を赤らめながら魅紅の後を追った。
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その頃、岸辺の方では宰vs暁美(明依)・ユメor千種vs天歌・舞orリューネvs黒羽が戦いを開始し、その内一つの戦いに決着がつこうとしていた。
森の中で爆発が起きる。
「っ!これほどの実力をしていたとは!」
爆煙の中から現れた黒羽はグチる。
「国連の幹部とは言え、俺の領域内において、ここまで自由に動けるとは想定外だ!」
黒羽の魔法は影、領域とは黒羽が展開する〝影縛結界〟、自分の陰を広げ領土を作り、その中に入った者を陰の中に引きずり込み束縛する魔法だ。
厄介な木々喝采を使うユメを捕らえたまでは良かった。
だが、ユメは木々喝采〝千草花〟と発した瞬間、今まで黒羽に手も足も出せなかった千種が、全く異なる戦いをし出した。
「全く。避けないで欲しいな、早く君を倒してユメの拘束を解きたいんだからさ」
千種は木の上に立ち、黒羽を見下ろす。千種の瞳や髪が緑色に発光していた。
「今度こそ当てる!」
千種が手を木に触れると、緑色の発光が渡っていき、枝やつたが伸びて黒羽を襲い出す。
黒羽は陰を使った防御を展開するが、そのつた等は形をぐにゃっと変えて、防御を避けるように黒羽を狙った。
「くっ!またか!」
それをかする程度に留めて避けたが、苦悶の表情は消えない。
(奴の魔法は空気を操るだけじゃなかったのか?それなら天歌と同じだから対策は取りやすいと思ったが……くそ!本当の力は樹木操作だったとは!)
「また交わしたか……(私がユメの恩恵を預かっていられる時間は限られているし……そろそろ決めた方が良いよね!)」
千種は決して樹木を操る魔法を使える訳ではない。
ユメの木々喝采〝千草花〟は、千種にユメの魔力を送り続けることで、一時的に木々の支配権を譲渡する技だった。
その間、ユメは魔力を送り続ける為、いつか魔力切れを起こすし、当然他の木々喝采は使えない。
ユメが何らかの危機で身動きが取れない時に、最終手段として使う荒業だった。
だがこれはユメに取っても、千種に取っても技の一つであり、互いに信頼しあった上で行える技だから、立派な一つの魔法とも言える。
「空気と木々喝采を合わせれば、こんなことも出来るのよ」
木々から無数の葉っぱが手裏剣のように飛び出す。
「葉も操作出来るのか……!おおおおおお!」
全方位から襲い来る葉を防ぐ為、陰を自分の回りに集めて球状に囲っていく。出来たのは巨大な球だ。
葉っぱは全て防がれたが、これは千種の計算の内だ。
「バカね。自ら逃げ場と視界を無くすなんて」
気付けば千種から緑色の発光が消えていた。
「千種さん、お疲れ様でした。おかげで解放されました」
ユメを縛っていた陰は、全て防御の為に使われてしまった為、ユメが解放されることになったのだ。
「それでは私もお見せしましょう。取っておきの拘束技を。木々喝采〝樹齢花〟」
その瞬間、地響きが発生。
黒羽が閉じ籠る球状の陰を囲うように、辺りの木々が集まっていき、一つの樹へと合体しようとしていた。
異変に気付いた黒羽が球を解き放ち、逃げようとするが、ユメの技の方が圧倒的に早かった。
千種がボソッと「魔力量の差よね」と呟くが、黒羽には聞こえない。
そして気付けば、辺りの木より三倍も大きな樹木が完成。
黒羽はその中心に閉じ込められてしまった。
「終わったわね、ユメ」
「はい。魔力・体力がなくなりかけたら、改めて拘束して国連へ連行しましょう」
そう言って、二人はパンっとお互いの手を打ち合った。
次回へ続く!!