【#120《地下第二階層へ》】
【夕方、シュレイ遺跡、地下1階層・隠し通路】
「なんと言うか……拍子抜け過ぎる……これが一度入ったら永遠と先に進めない円環通路なのか」
どんな魔法的仕組みがあるのかと不安反面、期待もしていたのだが、まさかただ一週しているだけの通路で、しかも攻略法が壁を破壊すれば先に進める道が出てくるなど、単純過ぎてがっかり感が否めずにいた。
そんな良夜と破壊された壁を見て、ポカーンとしているユメと千種が遂に口を開いた。
「いやいやいや、拍子抜けって君ね、さっきも説明したけと、この遺跡内で能力が使えるなんて本来有り得ない事なんだよ?」
「そうですね……しかも、この壁ってアダマンタイトで造られた超硬質性です。中級魔法以下では破壊は不可能ですし、現在のアルカティアに存在する一般的道具では傷一つ付ける事が叶いません」
「そんな固い壁だったのか……?」
だが、それなら今まで突破されなかったのも頷ける。
魔法が中心で回っているアルカティアならば、その魔法を封じてしまえば基本的に無力と同じだ。
そして魔法文明によって発達を遂げなかった一般技術の道具では、ダイヤモンドより遥かに固いアダマンタイト性の壁は壊せない。
仮に良夜がいた地球でならば、科学技術を持って破壊するのは簡単だったに違いない。
魔法と科学、条件次第では同等の力を発揮することに人類の技能には感嘆せずにはいられない。
希に舞や魅紅(例外的な良夜など)のような魔法に分類されず、魔力を使用としない異常能力や希少能力所有者が、突破に成功出来るのかもしれないが、能力者なんて世界にも20人は居ないと言われている。
普通、こんな辺境の遺跡等には来ないだろう。
だから、入るのは困難出るのは簡単と言う伝説が生まれたのだろう。
「ユメちゃん、先に進む?」
「そうしたいのですが……ここから先は未知の領域です。万全を期さないと」
千種とユメが破壊された壁の先にある通路を見る。
警戒しているようだが、そこに良夜(頭に乗っかっているリューネも)と舞が二人の横を通って、抜け穴を潜り出した。
それに続いてヒュースも入っていく。
「「ちょっ!?」」
「せっかくここまで来たんだ。引き返すのは無しで頼む。俺達には時間がないんだ」
連れ拐われた魅紅を早く助けに行きたい、そんな衝動が良夜と舞の足を早く進めた。
「心配しないで、ユメちゃん、千種さん。この先も生物の存在は感知されなかった。罠とかあっても良夜くんが守ってくれるし安全だよ!」
舞の表情には恐れが一切なかった。
そんな姿、真美大隊長が亡くなった報告を聞いた彼女達が舞を引き取りに屯朶の村へ行った時に比べたら、人が違うかのように見違えていた。
その様子にユメと千種も、不安は消し飛び嬉しさを感じていた。
「強くなりましたね。故郷に帰りたいと国連から出ていく時は、まだ亡くなった家族が忘れられず、辛そうな顔で故郷でしたのに……」
「うん……今の舞見ていると、真美さんを思い出すよ」
「ですね」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一行は先へ進むと、地下へ降りる為の階段が出てきた。
「遂に地下第二階層へ進めるのですね……」
先が見えないぐらい深く地下へと下っていく階段は、まるで奈落の底へと案内されるのではないかと不安になる。
「風が抜けてるな……音がする」
階段を降りてる途中で、ヒュォォと言う風の音を聞き取っていた。
それを聞いた一歩後ろを歩いているヒュースが、良夜の裾をクイクイと二回引っ張った。
「良夜さん、良夜さん……これ……」
「どうした?リンシェ」
ヒュースが右手を見せてきた。透き通るような白い肌を持つ、綺麗な手を見ていると握りたくなる衝動に駆られる。
だが、直ぐにその考えを止めた。
ヒュースの手のひらから氷吹雪が発現していたからだ。
それには全員が驚く。
「リンシェ……!魔法が使えるのか!?」
「うそ!?だって魔法無効化装置が……」
千種も直ぐに魔力を込める。すると風が発生し球体へと凝縮していく。
「発動……出来た」
ユメも目を瞑り、魔力を発動しようとすると……身体が黄緑色に発光し出す。
「……どうやら地下第二階層には魔法無効化が施されていないようですね……」
今までは魔法が使えないから不安だったが、そのリスクが払拭されたのだ。
二人から安堵の溜め息が出た。
「なあ舞……今の二人のも魔法何だよな?」
「うん、そうだよ。千種さんは風系魔法の応用で空気を操る事が出来るの。あ、でもユメちゃんの魔法は分からないんだ。見たことがなくて……魔力を感じたから、魔法なのは確かなんだけどね」
「そう……なのか……(ユメ(ちゃん付けは本人立っての願いで無しにさろた)から感じた魔法……とてつもなく強大な気がしたんだが……まさかな。子供で一兵士にそこまで強力な力を使う者がいたら、国連と言う組織がパワーインフレしちまうもんな)」
謎の解釈を遂げた良夜は、皆と共に気にせず地下へと降りていった。
そして、降りた先には巨大な扉があった。
次回へ続く!!




