【#117《Brain Control事件ⅩⅠ final》】
奈落の一人が更に手を伸ばす。
「……ミ……ク……」
そんなことお構いなしに、魅紅の体を揺する。
「ミク……ねぇ……」
更は魅紅の名を呼ぶが返事がない。体を揺らしても反応がない。
「うそ……ミク……」
涙を流す。それは魅紅の死を理解してしまった証拠でもある。
「あ……ぐ……!」
更の回りに三角形の結界が張られる。魅紅を殺したと思われる謎の技だ。
「今度は君の番だ」
(なんで……ミクが死んでる?そんなことってあるの?でも息してないし……そもそもなんでこんな目に?誰のせい?レンもタクヤもクロコもミクも誰がこんな目に?ア、ソウカ……コイツラカ!!)
その時、更の回りの空気が鳴り響いた。
「これは殺気!?」
更の体から白い炎が出現していた。さらに白い魔法陣が足下に展開されていく。
「よくも……よくも!よくもォオ!」
更から発せられた白炎は奈落の予想を遥かに上まる速度で結界に直撃した。
(何!?結界が溶けて……いや、浄化されているのか!となると、光性質か!にしてもこの白い炎……まるで生きてるかのように……!)
「返して……奪った皆を返してよーー!」
その時だった。奈落の結界を溶かし尽くした白炎が、奈落を狙おうとした瞬間、消えてしまった。
「炎が消えた!?」
「何はともあれ、奴は三日月の陣をも破る実力者だ。子供と思って油断するな」
「わかっている。危険だ、確実に殺す」
奈落から油断が無くなる。本気で白折更を殺そうと構えを取る。
更は地面に倒れ、息を激しく切らしていた。
「はぁ……!はぁ……!魔力が一気に吸われ……!
それは白炎だよ。
その時だった。どこからか男の声がしてきた。
「あなたは……だれ……はぁ……!」
「僕は支土」
その男は支土と名乗った。
「しど……?」
「ねぇ、君。僕と一緒に来ない? どうせ“ここ”には何もない。全員が亡くなって、一族にも帰れない筈だよね?」
「全員……。 レンも、タクヤも、クロコも……それにミクまで……」
辛い事を思い出し、涙が零れそうになった時、支土が優しく拭いてくれた。
「どうする? 僕と来るかい?」
「……一緒にいく……」
「そう。君の選択は間違っていないよ。生きる事こそ、仲間に返せる恩さ」
「……」
支土が更の手を引っ張り、そこから離れようとした所で、今まで無視されていた奈落の三人が支土の前に立つ。
「誰だか知らないが、目撃者は消させて貰う」
「退いた方が良い。僕は君らに用はない」
「我ら奈落に対して、その大言壮語。万死に値する」
奈落が呪文を唱え出す。
「はぁ。忠告はしたからね。顕れろ、断罪の剣〝ディストピア〟」
魔法陣が支土の右手に出現する。その魔法陣から大剣が現れる。
その剣から放たれる圧倒的な波動は、空間をも支配していく。
その剣を見た奈落が驚嘆する。
「き、貴様……!その剣は法否天の━━━!」
その先の言葉は言えない。言う前に一振りされた支土の斬撃が、奈落の三人をこの世から消し去った。
その後に支土と更も姿を消す。
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支土と更が去ってから一時間後。
「おい!しっかりしろ!大丈夫か!?」
「……?」
魅紅は男に上体を起こされたまま、目を覚ます。
そう。魅紅は生きていた。
そして、男は仕事上の関係で施設の調査をしに来ていた。そこでたまたま魅紅を見つけ、介抱していた。
「……いっ……」
「怪我がひどいな。名前は分かるか?直ぐに治療院に連れていってやる」
「わ……た……しは……あまつ……か……みく…………」
そう言うと、魅紅は眠ってしまった。
身体が蓄積されたダメージ回復の為、眠らせて回復に身体の昨日を回す。
「あまつか……あの〝天塚一族〟のことか。そう言えば、魅紅と言う一人娘がいたと聞いたことがあるな」
地図を確認して、天塚一族がある場所を確認する。
「やれやれ。こう言った仕事は下請けの仕事だろうに。何で国連三大隊長たる俺が、こんなことを……」
と言いつつも、彼は嫌そうな顔をせず魅紅を優しく背負って歩き出す。
後にBC事件と呼ばれるこの件と施設は、国連軍の預かりになった。
次回へ続く!!