【#096《諦めない強さ》】
更新が遅れてしまいました。
今回のタイトルって、いろいろな事で使えますよね。
【昼、都市クレイシス・情報管理局前凍結広場】
良夜side
ヒュースが受けてきた苦しみを理解した。
なんで夜魅に協力しているのかも。俺はヒュースを助けたい気持ちになった。ちゃんとした人生を全うしてもらいたい。
それは、夜魅では駄目だ。
「俺はお前を止める!本当の居場所を作ってやる!」
決意は固まった。ヒュースは複雑な表情をしていたが知らない。
「……そんなの……意味がわからないよ……」
「ヒュース、お前の全力をぶつけてこい」
「……? ……なにを」
「その上で俺は攻撃をしない!全て防ぎ切ってみせる! そして全て防ぎ切れたら、夜魅から抜けてくれ。新しい居場所を見付けるから」
「本当……なにがしたいのかわからないよ……私なんかの為に……でも、約束は守る。どのみちこの一撃を防がれたら、私に勝ち目はない」
「はは、それを聞いて安心した。 さあ、来い!」
ヒュースは本気モードへと入った。肌で感じて分かる。瞳も威圧感も、今までの比ではない。
「私の最大の一撃……」
ヒュースから放たれる吹雪が、空に収集し凝縮していく。
パキパキパキと巨大な氷の塊が形成されていく。
「おいおい……まるで、氷山の一角だな」
比喩ではなく、言葉通りの意味だが……。
「……氷雪系上級魔法“真天氷崖球”! 総重量150tにも及ぶ質量……これで終わり!」
150t……!? はは……、街に落ちただけで大損害だな……。
まあどのみち全力を受け止めるって言ったんだ。今さら引けねぇ!
「霊源結界・壱ノ型“羅生”!最・大・展開ッッ!!」
落ちてくる氷球に両手を向け、俺の持つ最強防御術を展開させる。
やがて氷球は羅生に衝突する。激しい衝撃波の後に、とてつもない重みが全身に圧しかかる。
「ぐっ……ぬぉ……!」
ヤバい……想像以上に重い……!
まるでビルを支えているような感覚だ。結界が保っているとは言え、これはキツい!
足が地面に沈む。氷球が落ちてもいないのに、徐々に足元の地面がへっこんでいき、クレーターが作られていく。
「……耐えてる」
(……一撃でぺっしゃんこにするつもりだったのに……あの銀色の壁、すごく固い。だけどやっぱり私の勝ち)
くそ!分かってはいたけど、勝てそうにないよなぁ……!
向こうは最初の一回魔力を使って氷球を作り出せば、後は重力の法則によって攻撃は魔力無しで続行される。
それに対して上からの重圧に耐える俺は、常に霊力で結界を維持し続けなければならない。
いずれは俺の霊力が切れて結界も解ける。そうなれば、俺はR18指定制限が掛かるような姿になってしまう。
だが手はある!と言うよりは賭けだが。
結界の形を薄いピラミッド状に展開した。少しではあるが、あの質量で重力に従って結界に衝突した時、亀裂を入れる事に成功している。深さ10m程だが。このまま羅生で少しでも亀裂を深くしてから、全霊力を使って参ノ型“破錐”を撃ち込む。
上手くいけば氷球を真っ二つに割れるが、成功率は低い。この賭けがどう転ぶかは分からないが、勝負なんてのは博打みたいなもんだ。ここで賭けに出た判断に後悔はない!
ピシッ!
『!?』
俺とヒュースが異変に気付いた。
「ちっ……賭けに敗けたか……」
最悪な展開だ。亀裂が入ったのは結界の方だった。俺の霊力が切れかけていたのだ。
(強度よりガス欠が先かよ……。やはり魔力と霊力が、まだ調和が取れてなかったか……)
仕方無いことだ。舞が作ってくれた、俺の体内にある魔力と霊力の循環を調和するエクシリアは、飲み続けて徐々に調和するものだ。
まだ二回しかエクシリアを飲んでいない状態で、逆によくここまで霊源結界を使えたと思う。
よく漫画とかにあるピンチに覚醒でもあれば便利なのにな……。
「……そろそろ結界も限界のはず。あきらめて」
「勝利宣言か……。そうだな。ただで際少ない勝率が更に減ったんだ。敗けは確定だろう……だがな」
「……?」
言葉に続きがあることに、ヒュースは疑問を感じているんだろうが、その通りだ。俺はニヤッと笑って告げてやる。
「日本人は諦めが悪い人種なんだよ、良かれ悪かれな!覚えておけ!参ノ型“破錐”!」
「!? 何を考えているの……!?」
珍しくヒュースが感情をあらわにしている。
まあ、そりゃそうだ。結界を解いて、攻撃に出たんだからな。
「俺は覚醒だなんて都合の良いものは信じない。ただ諦めない!それだけだ!!」
━━━瞬間、普段は銀色の光を発する結界エネルギーが、紫へと変色する異変が起きた。
次回へ続く!!