壁と壁でつくるもの
壁のようなお前と私のやり取りは、だんだんと弱まる。
ここは、お前のような人間の歩く場所じゃない。
四方を囲まれていないと落ち着かないやつらめ。
視界を覆われないと不安で仕方のないやつらめ。
誰かに許されるためだけに生きているやつらめ。
支柱を無くした蔦め。
灰色を気取っているくせに!
艶のなくなった肌を擦り合い、
ふやけ始めた指を絡め、
下水の中で抱き合っているやつらめ。
天井を見つめ、汚れを貶し合っているやつらめ。
子どもを愛し、見下しているやつらめ。
私はお前の悪口を言う。
私はお前のことが嫌いだ。
灰色を気取っているくせに!
ハイヒールを履いて、つばを吐く奴らめ。
壁を批判してほくそ笑むやつらめ。
壁に塗りたくった泥に気づかないやつらめ。
美徳を咀嚼せず、飲み込み、げえげえと吐く。
どうして、お前はそうなのだ。
気分が悪い。
壁が壁を囲み、町は段々と区画されていく。
更地だった場所には道がつくられた。
四角くなった場所はとても綺麗だ。
壁の中にはざらついた息が見える。
壁にぶら下がったものを、私は見ている。
歯を磨きながら、私は息を呑む。
壁にぶら下がっている、何の変哲もない鏡。
なあ。
灰色を気取っているくせに!
うるさいやつらめ。
本当にうるさい。
どう生きたっていいじゃないか。
なんでそんなに怒っているんだ。
なにがお前を悲しませるんだ。




