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煙
たばこの煙が君の魂だとしたらどうだろう。
改札口を出た先で、君の口からじわじわと魂が漏れでてくる。
そこに君の意識はすこししかなくて、君はそれには気づいていなくて、
何年もたってから知る。
そしてやっぱりたばこを吸うのだろう。
わたしはお酒を飲むけれど魂を溶かしている気分になる。
すこしづつ氷に水をかけているような、そんな気分だ。
凝り固まった魂はだんだんと流れていき、わたしはそれを見逃して、
手遅れになってもいいやってなる。
そしてやっぱりお酒を飲むのだろう。
大人になったのはとおい遠い昔の話だ。
それは初めてキスをした時かもしれないし、はじめてひとりで電車に乗った時かもしれない。
あの時に感じたあれこれやそれらはいまでも残っているのだろうか。
それとも、溶けてしまったか。それとも、薄れてしまったか。
くだらない。
魂の価値なんて、くだらないさ。
なるようにしかならないと知ってしまった。
ほんの昔、それに気づく5秒間だけわたしは限りなく無敵だったのに。




