めぐりくる春
遠い春の日。
ちょうど、メジャーデビューした頃。
彼女は私に訊いた。
「なぁ、会えてよかったと思う?」
いつものように、ほんわかした口調で、目の前の美しい彼女がいった。
「え?」
唐突な質問に驚く私。
「だから……会えてよかった?」
彼女は重ねて訊ねる。
「バンドのメンバーとですか?」
私と彼女は同じバンドの仲間であり、親友でもある。
「違うよ。私たち、二人」
真面目な顔で訊かれる。
「会えてよかったですよ。当たり前じゃないですか」
私は答えた。
「そっか」と彼女。
彼女は頭がいいから。そして少し変わっているから。私は彼女の意図するところがよくわからない。
「どうして、そんなこと訊くんですか?」
だから訊いてみた。
彼女は作詞用のノートから顔を上げて、その丸くて澄んだ目で私のことを見るといった。
「なんとなぁくよ。なんとなく。たまにそんなふうに考えることってない?」
「まぁ、あるかも……」
「どうして?」
ずるい。完全に彼女のペースだ。
だけど私は答えてしまう。
「私の曲じゃなくても、きっと素敵な詞を付けられるし……。
私の歌じゃなくても、上手に演奏できるし……。
別に私はいらないかな、とか思ったりしてるんです」
彼女は才能の人。私と会っていなくてもよかった気がする。
少しだけ悲しくなって、目を伏せた。
「なにいってんの」
彼女はケラケラと笑った。
「目に涙いっぱい溜めてまで、いわなくてええよ、そんなこと。
私は会えてよかったに決まってる。
その才能もその声も、かわいい顔だって、唯一無二のものやないの。
他のコには代えられへんよ」
「……ホントに?」
彼女は大きく頷いてくれた。
もうすぐ12回目の春が来る。
バンドがメジャーデビューした季節から12年。
彼女が私を必要といってくれた時からも。
花粉は大嫌いだけど。
私の大好きな春が来る。
どうでしょう?
ふにゃふにゃですね。←
かわいい歌姫と美人な作詞家さんのお話です。
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