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大きな、温かい手  作者: オムラ
本編
4/14

02(台詞有)



一文だけです。どう載せたら良いのかわからず、大胆にいきました







ご都合主義で申し訳ないが、私がここに来てから数か月が経った。その間ありがたいことに熊さんことベルクの元に置かせてもらっている。

私が倒れて連れてこられた場所は森の中にあったベルクの家だった。家といっても極一般的な一軒家とかではなく、ヨーロッパ的なお屋敷といったほうが良い。部屋は十数個ほどあり、とても広い。


そこに住んでいるのはベルクともう一人だけで、その一人と言うのがお婆だ。

外見はとてつもなく魔女っぽい。鼻は鍵鼻で、いつも黒いマントを身につけている。けれど中身はとてもおおらかなおばあちゃんである。お婆はベルクのお世話係として、そしてこのお屋敷の管理も任されているらしい。私はこのお屋敷でお婆のお手伝いをさせてもらいながら、勉強をさせてもらっている。

今すぐにでも元の世界に変える方法を見つけたいのだが、この国、この世界に対する知識も何もない状態では全く身動きが取れない。と、いうわけでベルクとお婆の二人から教わって、日々勉強に励んでいる。





「おはやー、ベルク」

「おはよう、ユリ」




……やはり発音が難しい。まだまだ努力が必要だ。そんなことを考えながらしかめ面をしていたら、ベルクが私の頭を撫でてくれた。

ベルクの手は大きい。(というか、手に限らず全部大きい。身長は2メートルぐらいある。お婆も170弱ぐらいある。もしかしたらこの世界の平均身長はあっちと比べて大きいのかもしれない)大きな手で撫でてくれるのは、何だか子どもになったようで少し気恥ずかしい気もするが、ちょっと嬉しかったりする。

私はどちらかというと身長も大きく、加えて普段から落ち着いていて、実年齢よりも上に見られがちだった。

いつも周りからそう見られていて、そうあるべきだと考えるようになっていた。

けれどこの世界に何も知らないまま来て、頼ることしか出来なくて、甘えてばかりでいる。

ベルクは頭を撫でるのは毎日のようにしてくるし、ときどき子どもを抱っこするように片手で私を抱えたりすることもある。


決して軽くはない私を軽々と持ち上げるベルクは、所謂騎士というものらしい。

週5くらいで、イギリスの衛兵を思い起こさせるような制服を着て出かけて行く。その凛々しい姿はとてもかっこいい。とてつもなくかっこいい。

顔立ちも中々整っていて、すごくモテそうな気がする。気がするというか絶対モテるだろうね。

がっちり体系で、寡黙で。正直私の好みドストライクな人から優しくされたら、ときめかないわけがない。

今、こうやって精神的に狂うことなく前向きに頑張っていけるのも、素敵なベルクと優しいお婆のおかげである。

今日もかっこいい制服を着て出かけるベルクをお見送りしてから、お婆のお手伝いをして、勉強に励もう!











夜になり、私はベルクの帰りを今か今かと待っている。

今日の語学の勉強(完全に幼児向けのイラスト付きの本を教科書としている)で、とても良い言葉を教わったのだ!

お婆に言ったらとても喜んでくれた。きっとベルクも喜んでくれる、と思う。わくわくしながら私は待っていた。




「ただい」

「おきゃえり、ベルクっ!」




若干被ってしまったけれど、ベルクは嫌な顔を見せず、駆け寄る私を見て微笑むように目を細めてくれる。そしてすぐ傍まで来た私を片手で抱き上げた。




「ただいま、ユリ」




そう改めて言って、またその大きな手で撫でてくれる。その居心地の良さに一瞬眠気に襲われたが、それを振り払い、ベルクに言った。




「きよう、言葉、習う、した。私、ベルクに、言う。聞いて、おねあい」

「うん、勿論」




今日習ったことを頭の中で復習する。よし、大丈夫だ。ちゃんと覚えている。





「ベルク、いつも、ありあとう」




ありがとう、は前に習った言葉。比較的最初に教科書に載っていた。これからが本番だ。




「私、ベルク、すき」

「!」

「すき、いっぱい。私、ベルク、すき、いっぱい。ありあとう、ベルク。すき、いっぱい!」





よし、言えた。自分では見えないけれど、おそらく今自分は所謂ドヤ顔をしているだろう。

ドヤ顔でベルクを見る。しかし、そこには私が期待した反応はなかった。

ベルクは私がここにきてから初めて見せるような、目を見開いて呆けるような顔をしている。




「…ベルク?」

「……」




もしかして、何か変なことを言ってしまったのだろうか。おかしいな、ちゃんと覚えたはずなのに。

お婆に助けを求めようと、振り返ろうとしたときだった。微動だにしていなかったベルクが急に動いた。




「!?」




ベルクはゆっくりと顔を私の顔に寄せたかと思うと、そのままくっつけてきた。ただくっつけたと言っても、ベルクの唇が私の唇のすぐ横にくっついたのである。……ほぼキスじゃん!


あまりにも予想外の出来事に、今度は私が固まった。どれほどその状態だったのかなんてわからない。10秒だったかもしれない、もっと短かったかもしれないし、長かったかもしれない。

時間の感覚も麻痺するくらい驚いた。




「ごめん、着替えてくる!」




さっきとは逆に、勢いよく離れたかと思うと、ベルクは私を地に降ろした。そして早口に何か言った後、足早に去って行った。

一連の流れについて行けなかった私は、ベルクの後ろ姿が見えなくなった後も暫く呆然としていた。


私たちのこのやりとりを見ていたお婆が、ニヤニヤしていたなんて全く知る由もなかった。










一文の前後だけでも良かったのかな……



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