表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大きな、温かい手  作者: オムラ
番外編
13/14

本編02の前あたり

やまなしおちなしです





お仕事も一段落つき、私は庭へと向かった。そこでベルクが私を待っている。本日はベルクのお仕事がお休みの日。ベルクが私の先生になってくれる日だ。

キッチンから庭に続くドアを開けて、庭で一番大きな木の元へ向かう。木の根元あたりにベンチがあり、それに座って本を読んでいるベルクがいた。

小走りでベルクの元に駆けていくと、ベルクも私に気付いた。読んでいた本を閉じ、私を見て、僅かに口角を上げている。最初は身体も大きくて無表情にしか見えなかったから、少し怖かったんだけど、良く見るとすごく優しい顔をしていることに気付いた。それに、たぶんだけど前より無表情では無くなった気がするのは気のせいだろうか。


ベルクのいるベンチに着き、隣に座ろうとした、のに、どうしてこうなった。


説明しよう!今私はベルクの足の間で、ベンチに座っている。そしてベルクは私のお腹の前に手を回している。つまり、後ろから抱っこされている状態だ。

うおー何これ!前に夕方の公園のベンチでいちゃいちゃいちゃいちゃしたカップルがしていたなあ。

と、思っていたらいつの間にかベルクの手には絵本が。……完全に日曜日の父親と幼い娘のパターンですね。わかっていましたけどね。


顔だけ後ろに向けて、ベルクを見る。立っている時よりも近い距離にある顔。でも、やっぱり少し遠い。本当にベルクは大きい。

ベルクはやっぱり少しだけ口角を上げて、体格同様大きな手で私の頭を撫でた。少し面映ゆくて、直ぐに前に向き直る。ベルクは頭をポンと軽く叩いて、絵本を開きなおした。

うーん完全に子供扱いしているよね。でもしょうがないのかもしれない。察するにこの国?世界?の人は総じて身長が高いらしいので、私の身長は子どもサイズなんだろうな。

小学校のころから他の子よりも身長が高くて、そんな扱いを受けたのは本当に幼少期だけだったから、何と言うかむず痒い……。

しかしベルクも私のことを子どもだと思っているようだし……良いよね。

恥ずかしいけれどその誘惑に打ち勝つことができずに、それまでピンっと姿勢正しくしていたのを解いた。つまり、力を抜いてベルクに思いっきり凭れた。


うん、なんかすごく「すっぽり」という言葉がしっくりくる。さっきまで私の背中とベルクのお腹の隙間に冷たい空気があったのが、すっかりなくなって、今は私の身体がベルクの温もりに包まれている。安心感、なのだろうか。すごく、眠くなってきた。というか、もう…………


















寝てしまった。

ユリの勉強に、と思って絵本の読み聞かせをしようと思っていたのだが、ユリは一文字も読まぬ内に眠ってしまった。

今日も朝から頑張っていたみたいだし、疲れていたのだろう。顔を覗き込むと、口を半開きにして気持ちよさそうに眠っている。

自然と口が緩むのがわかった。ユリと生活し始めてから、笑うことが多くなった。お婆に指摘されるまで気がつかなかったが、意識すると確かにそうだった。

ユリの挙動は何故か目が離せない。家に居る間、ユリが仕事をしていない時はほとんどユリと共にいる。

ユリを見ていると、一緒にいると、何故か癒される。

今まで子どもと触れ合う機会が少なかったから知らなかったが、子どもとはこれほど愛らしいものなのかと思った。


ユリは先ほどは開いていた口を閉じ、もごもごとさせている。何か食べている夢でも見ているのかもしれない。

ここで動いたら起こしてしまうだろう。幸い今日は良い天気で、外の気温も丁度良い。もう少しここでゆっくりしていくか。

持っていた絵本を脇に置いて、ユリが来る前まで読んでいた本を再び読み始めた。






久々の大温手でした。

ありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ