暗黒少女
ライトノベル風味にしてみました。では頭を軽くしてお読みください。
「わたし、ずっとあなたのことが好きだったの」
あ、うん。ぼくもキミのことはずっと気にしていたんだ。
だって、容姿がねえ、すごく目立つからさあ。
「だから、結婚しない?」
そうだね。ぼくもずっとそうしようと思っていたんだ……って、結婚するのかい?
それば随分と急ぎ足だね。もうすこしこう、時間の経過というものに任せてみてはどうだろう。
「あなたねえ、このときを逸したら、次があるかどうかわからないのよ。善は急げ、と言うでしょう」
急がば回れ、とも言うけれど。
それにさあ、ぼくたちまだ高校生なんだよね。結婚なんてまだ無縁の年齢だよ。
「あら、そうやってあなたはいつまで童貞を気取るつもりなのかしら。さっさとわたしとエッチしたりして脱童貞をしましょうよっ」
そんなに目を輝かせてストレートに言われると、なんだかものすごく親近感が湧くんだよなあ。
「最初は男の子がいいわあ。名前はなににする?」
もうそこの領域まで行くのかい? やっぱり早いよ。
「早くないわ。わたしは次郎がいいと思うの」
ふつう、一番に生まれてきた子どもは太郎だと思うけど。
そもそもシンプルすぎて重みが感じられないね。
「なにを言うの。そんなことを言ってはいけないわ。全国の太郎さんにお詫びを言いなさい。などという冗談はさておいて、太郎とはもっとも優れたものの代名詞なのよ。そんなことも知らないで、よく太郎という名前に重みがないと言えるわね。全国の太郎さんに謝りなさい」
いやいや、なんでそこまで太郎に執着するのかな。
だってきみは子どもの名前を次郎にしたいんだろう? なら太郎なんてどうでもいいじゃないか。
「マジレスカコワルイ。ネタとして受け取りなさいな。そんなこともわからないくらいにあなたは廃れてしまったのね。まったく嘆かわしいことだわ。ああ、こんな人と結婚していいのかしら。将来が心配だわ。収入とか大丈夫かしら」
いえいえ、結婚を申し込んだのはあなたですよね。だから時間をおきましょう、と言ったのに。
「あっそう。なら金輪際、顔も合わせないで会話もしないで吐息も混ぜ合わせないでお互いを空気以下の存在として認識しましょう。というか、認識しなくてもいいんじゃないかしら」
それはまた急だね。きみはすこし頭を冷やしたほうがいい。
「そうやって達観しているところも嫌いなのよ。もう死んじゃいなさいよ。最後に地べたに這いつくばってわたしに愛を求めなさい。簡単に足蹴にしてやるわ」
きみって頭に血が上っているとかそういうまえに性格がねじまがっているね。
ぼくもそういう人とは過ごしたくないよ。じゃあお望みどおりに別れよう。
「さようなら」さようなら
それからぼくは本当に彼女が見えなくなった。