表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

種も仕掛けもない

作者: 溜せうゆ
掲載日:2026/05/15

 休日の公園にて、一人で手品の練習をしている青年を見かけた。


 少し近づいてみると、すぐにその彼が日本人ではないことがわかった。


 よくあるシルクハットから鳩を出す手品を何度も繰り返していたが、一息ついたところで声をかけてみた。


「やぁ、精が出るねぇ。お兄さんはプロの人かい?」


「ハイ! コニチワ。ワタシぷろチガウ」


日本に来てまだ日が浅いのだろう、どうやら日本語は片言のようだ。


「なら、まだ見習いってことか。手品はもう長いのかい?」


「テジナ?」


「あー、マジック。マジックを始めてからどれくらいだい?」


「オゥ、まじっく! まじっく、ウマレテスグネ! ワタシノクニミンナソウヨ」


「生まれてすぐたぁ、そりゃまたすごいねぇ。しかもみんなときたか。ずいぶんと変わったお国柄なんだなぁ。どうだい今ここでひとつ披露してみちゃくれねぇかい?」


「オーケーオーケー!」


 こちらの希望が通じたのか、彼は後ろを向いてなにやらごそごそと準備を始めた。


 そしてそれも整ったようで、こちらを向き直り、にかっと笑いながら親指を立てて見せた。


 応じてこちらも親指を立てると、こちらも準備完了と受け取ったようで、早速演技を始めた。


「エー、タネモシカケモゴザイマセン。コレまじっくスルトキイウキマリ。オシエテモラッタ」


 誰に習ったのか、手品師の決まり文句を言いながら白いハンカチをひらひらとやってみせる。


 そしてそれをシルクハットに収め、帽子の横っ腹を軽く二度ほどたたくと、数羽の白いハトが飛び出し、青い空に羽ばたいた。


「おー、やるねぇ! なかなか見事なもんだな、こりゃ!」


 ほめつつ彼の肩をたたくと、照れたようにはにかみながらサンキューサンキューと繰り返した。


「ところで、あのハト飛んでっちまったようだけどいいのかい? そのうち帰ってくるんならいいんだけど」


 もうどこに行ったかもわからなくなったハトのことが気になって聞いてみた。


「はとダイジョーブ! イッパイイルカラ!」


「まぁ、たくさん飼ってるんなら少しくらいいいのかね」


「イエス! コノナカイッパイイマス」


 彼は帽子を指さしながら言うが、当然帽子の中は空っぽだ。


「この中? なんもないじゃないか」


「ノー! ココカライクラデモはとダセマス。コレワタシノまじっくネ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ