私の思いが切符に
僭越ながら、前書きから入らせていただきます。このお話は、フィクションではありますが、「ありがとう」の言葉には、その人の思いがいっぱい詰まっていて、受けた【恩】=【愛】の感謝を言葉にそれを乗せていて、たとえ言うのが遅くなったとしても、言わないよりかは、断然いいと私は思っています。
「ありがとう」以外もそうですが、言葉には力があります。それは魔法のような力で、心に変化を与えます。私はそう思っています。堅苦しい挨拶となってしまいましたが、気軽に読んでいただけたらと思います。
まるで海底のように暗く、沈没船が沈む死の海域のような私の心。太陽が差し込まず、温かさも感じないその心に、いつかは光が差し込んで、私が進みべき未来を指し示してくれると、そう信じている。
静まり返った駅のホームで、一人ぽつんと椅子に座って、あの頃の思い出を浮かべながら、悲しさに浸っていた。ふと気づいたら、次が終電になっていた。遠くの方で明かりが見え、微かな汽笛が聞こえた。その電車は、なんだか不思議な感じがして、もしかしたら、過去に戻れるのでは、そう思ってしまった。
他の乗客が居ないことに、終電だからそうなのかもと、思っていたけど、車窓から見えた案内標識で、その認識が間違っていたことに気づいた。過去駅ってどういうこと……。新しくできた駅ってことかな……。イヤイヤ、それはないよね。だって、そんな新しい駅ができたって話、聞いてないし……。わけがわからなくなった。
トンネルに入ってから1時間経ったけど、まだトンネルの中だった。降りかかる不思議に、もうこれ以上は気にしないよう、これは長いトンネル、長いトンネルと、自分に言い聞かせた。出発してから3時間後に、ようやく過去駅に到着した。
「ここがあなたの終着駅です」
車掌が私の方へ来て、そう言い残し、去っていった。私が車掌のその言葉の意味を知ったのは、後になってからだった。
駅の構内は、現実世界とはかけ離れているバーチャルのような感じで、思わず唾を飲み込むほどの美しさがあった。見蕩れている場合じゃない、ホームから出ないと、そう思って、改札口を探すも見つからない……。歩いても歩いても、改札口にはたどり着けない……。そんなのって……ガクッと、崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込んだ時だった。
「どうしたの、出れないの。ここから出るには、専用の切符が必要だよ。胸に手を当ててごらん」
周りには誰も居ない、だけど聞き覚えのある声……まさかの私……イヤイヤ、マジで……こわ。でも、怖がっている場合じゃないよね。その言葉を信じてみよう。私はその言葉の通りに、胸に手を当てた。すると、鮮やかな七色の輝きを放つ切符が出てきた。その切符を見て、開いた口が塞がらなかった。
切符を手に取ったら、駅の構内がグルんと回転し、駅の構外に変わった。う、そ……信じられない。目を2度パチクリしてしまった。それに夜だったはずなのに、夕方になっているしで……今日はもう疲れたよ……。
わけもわからずに降りた場所は、私の地元だった。ここを南下したら商店街で、その通りを抜けて右に行った先に、私の実家がある。実家の方が、私の勤め先に近く、帰りが遅くなった時は、実家の方に帰っていた。今日も帰りが遅く、また聞いてほしい話もあったので、実家に帰るつもりだった。それなのに……フゥ……。
ココは私の地元……地元だよね……。私の知る地元でないというか、どこか懐かしい感じがする。それに、あの駄菓子屋って、店たたんでたよね……。私が働き出してからの景色とは、ずいぶんかけ離れていた。変わったというよりも、過去に戻ったような感じがした。
懐かしいな……この河川敷の横をよくおばあちゃんとふたりで歩いたっけ……。私、ここから夕焼けを見るのが好きで、おばあちゃんといろんなこと話して……あれ、おかしいな……涙が……。
私、後悔してることがあって、最後におばあちゃんにありがとうって言えなかった。私が最後に見たおばあちゃんは、ベットの上で、あの時のおばあちゃん、幸せそうな表情をしていた。
もし、ココが過去なら……ううん、違う、過去であってほしいって思う。でも、ココが過去だとすると、私がおばあちゃんに会えば、未来が変わってしまうかも。それで、最悪な結末だったら、それはそれで嫌だから、私は手紙でありがとって、伝えることにした。
「おばあちゃん、ありがとうって、言えなくてごめんね。今でもおばあちゃんこと、大好きだよ。私の心に、今もおばあちゃんの愛がぎゅっと詰まってて、どんな時でも最後まで、私の味方でいてくれたの嬉しかったよ」
思い出に浸りながら、手紙を書いた。私のありがとうが、おばあちゃんに届きますように……。
私はその手紙を直接、おばあちゃんの家のポストに入れた。その直後、行きと同じでまた、グルんと回転して、景色が変わった。ココは……電車の中……。
「どうでしたか、あなたにとっては、良い駅でしたでしょう。あなたの表情を見てたら、そう思います」
車掌が私の方へ来て、そう言い残し、去っていった。たしかにそう、この駅がなければ、私はずっと後悔したままで、私にとってのこの駅は、後悔とさよならできる終着駅だって、今は分かる。
「お客様、お客様、大丈夫ですか」
えっ、なに……あれ……。
「大丈夫です。ごめんなさい」
私……電車に乗ってたよね……あれって、夢……イヤ、でも……。今までのことは、現実味があったから……私、疲れてるのかな……。
この不思議な体験、それがたとえ夢であったとしても、私は嬉しい。おばあちゃんに直接会って、伝えられなかったけど、伝えられないまま後悔が残るよりかは、断然いい。帰宅中もおばあちゃんとの思い出に浸りながら帰った。
「未来ちゃん、ありがとね」
今、おばあちゃんの声が聞こえたような……イヤ、そんなわけないよね。やっぱし私って、疲れてるのかな……。
私はこの先もずっと、おばあちゃんのことが大好き。心にぎゅっと詰まったおばあちゃんの思い出があるからで、それは私の一番大事な宝もの。ありがとね、おばあちゃん。
最後まで見ていただきありがとうございます。これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。




