91話 それ言わせる?
だけど…わたしの想いとは裏腹に吉田くんはわたしにちょくちょくちょっかいをかけてきていた
マキは『あれはアプローチだな』なんて笑いながら見てたけど、わたしは笑えなかった
一度ハッキリさせなきゃ… そんな考えがマキに伝わったのか、それともわたしが迷惑がってると判断したのか、わたしにこんな提案をしてきた
「もし美紗緒が吉田のことうっとうしいとか思ってるんだったら わたしが力を貸そうか?」
「どうやって?」
ここは美紗緒の案を聞いてみることにした
なにせこういう問題には強そうな気がするし…
「美紗緒は誰か気になる人はいないの?」
ドキッとする質問、そのものずばりは森下先輩にも聞かれたことがある…
どうしよう… 大したことない質問のはずなんだけど…
色恋沙汰は女子高生には大好物な話題…
好きだ嫌いだは盛り上がる話しなんだけど、相手はマキだ… 下手なこと言えないし、だからと言って嘘はつけない…
「それが吉田くんの件となんか関係あるの?」
まずは今回の提案の真意をマキに聞いてみたかった
「あるよ! つまり美紗緒に好きな人がいるってのを吉田にわからせるの! そしたらやんわり諦めるんじゃないかな?ってこと」
ふむ、一応わかる作戦ではある…
「どうやってわからせるの?」
「わたしが吉田の近くで聞こえるように話す! 他の子にも協力してもらって」
なるほど、噂話大好きマキたちのグループなら可能ではあるな? ん? 待てよ? だったらわたしの好きな人がみんなに知れ渡るってこと!?
「そ、そんなことしたらわたしの気になってる人がみんなに知られちゃうじゃん!?」
「そうだね? そういうのやなタイプ?」
こういうところはさすがマキだわ…
どうすればいいんだろ…
「今のうちに美紗緒には好きな人がいるって釘刺しておけば 万が一吉田が告白とかしてきて美紗緒が断って吉田のこと傷つけるとかもなくなるんよ?」
マキの気の回し方に感心する
こういう気が利くところが人の懐に入っていきやすいタイプってことなんだろうな
「予防線、張っとこう! もしいないんだったら適当な名前でもいいじゃん? どうせ誰も知らないんだし!」
無責任に聞こえなくもないけど 確かにこの後もしなんかあったらわたし的にもよくないか…
「で、誰? いないの?」
「じゃ、じゃあ…な、な、な、永久さん…」
もうここは嘘つけなかった… 違う人の名前出すなんてマキに対しても継人に対してもできない
だったらどうせマキも知らないんだし、と継人の名前を出した
「だれ? それ?」
「誰でもいーじゃん! とにかく名前だすならそれで!!!」
恥ずかしくて顔から火が出そうだ
いい歳したおばあちゃんが言うことか!?
「ふぅ〜ん、永久さんね… オッケー任せとけ」
マキはぶつぶつと名前をつぶやきながらわたしから離れて行った
別になにも間違ったことはしてないつもりだけど、なんとなく恥ずかしかった…
わたしが蒔いた種でもないのに 想い人を言わされたあげく 下手したら広まりかねないって…
いったいわたしがなにしたって言うのよ…




