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89話 その名は吉田



始まった頃は「長いなぁ」と思ってた夏休みも終わりを迎える頃となると「短かったなぁ…」と印象も変わる

楽しい時間なんてそんなもん…

なんにもない普段の日常はなんにも考えずに楽しめてた


花火大会以来マキともすごく近くなれたし部活帰りに話す機会も一層増えた

一抹の不安と言えば進路だったけど、わたしの気持ちは変わらない…

そのことに関してはまだまだこれからと言ったところかな


きっとここまでは順調に来てるんじゃないかな?


あ、でも少し心配なのが…

マキとの時間を結構わたしが占めてるような気がするんだよね…

過去いぜんのこと思い出せないけどマキの周りには常に男子はいたような気がする

マキの寂しさをわたしが埋めすぎちゃってるのかな

でも、それってマキにはいいことなんだよね⋯

正直そこだけが心配だ…

マキは継人をちゃんと紹介してくれるのか

そのためにもマキには彼氏がいないとなんよね

焦らない焦らない、まだ時間はあるんだから…



二学期が始まって二週間ほどが経った頃

驚くような出来事が起こった

二時間目の授業が終わった休み時間のこと…


「重命さん、二年生になってから少し成績落ちてきてない?」


少し鼻にかかるような高音の持ち主、常に成績上位のクラスメイトの吉田くんがわたしに声をかけてきた

実際どんどん得手不得手えてふえてがハッキリしてきてた

と言うのも、高校生になってからの勉強は中学の時と比べるとやはり難しくなってて、いくら二度目の勉強とは言え理解するのが難くなってきていた


「う、うん、、やっぱり苦手がハッキリしちゃってきてるのよね… 一生懸命やるしかないんだけどね」


正直わたしのチートも風前ふうぜんともしび状態だった


「もし、よかったら僕が教えてあげようか? 一年生の時から君の成績には注目しててね 特に塾やなんかに行ってないように見えるのに神城南けんなんでそこその順位の君に興味があったんだよ」


げ? よりによって勉強で? もうそんな伸びしろないよ… 仮にもし今以上に出来ちゃったらそれはそれでまずいし…


「君も進学志望だよね? ともに切磋琢磨して頑張ろう!」


話したいだけ話して吉田くんは去っていった

吉田よしだ一也かずやくん、クラスじゃ常に成績一番、学年でも10位以内にはいつも入ってた


「ねぇ、今の吉田よね? 美紗緒になんの用だったの?」


トイレから戻って来たマキはわたしと吉田くんが話しているのをじっと見ていたみたいだっと


「うん、一緒に勉強しないか?だって」


「美紗緒と!? なんで? どうして?」


「わかんないけど わたしの成績が落ちてるのが気になるとかなんとか…」


マキは吉田くんの席へ目を向ける

わたしもマキと同じように吉田くんの方を見た

吉田くんを中心に数人が取り囲んで話してるのが見えた…







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