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85話 マキの吐露



「うちさ、母子家庭でさ、ママ夜の仕事行ってんの」


マキに出されたお茶をダイニングで飲みながらわたしたちは二人だけの時間を過ごしていた

胸のつかえが取れたかのようにマキは話し始めた


「ママは、休みの日は一日家で寝てるか、アフターとかなんとか言って出かけるの」


このくらいの年齢になれば意味もわかってるんだろうな…


「わたしが小4の時に親離婚してさ、名字変わって からかわれて、学校転校した… だから母子家庭だなんて誰にも話したことなかったんよ」


うん、未来あっちのわたしは知らなかったから…あれだけ仲がいいって思ってても話してくれてなかったんだ…

未来あっちじゃ離婚してもバツイチみたいな言葉があるけど、過去こっちは離婚してるってのがまだ後ろめたさに繋がるような時代があった


「アニキいるんだけど、ちょっと年離れててさ、今は働きながら一人で暮らしてる」


「じゃあ今はおかあさんと二人だけってこと?」


こくりと静かに頷くマキ

理解はしてるんだろうけど、やはり寂し気だ…


「中学の頃からかな、女子より男子のが簡単に仲良くなれた… 調子いいことばっか言ってりゃ男子はチヤホヤしてくれるじゃん? そういうとこ見てる女子からは煙たがられるんだけどね…」


なるほど、本心からぶりっ子したり男の目を気にしてたわけじゃなかったんだ

持ち前の人懐っこさは男女関係なく発揮できたとしても、男子相手に調子のいい部分ばかりが目についちゃってたのか…


「それは、やっぱりどこか寂しいから?」


黙って頷くマキ

きっとこうして心の内を話せることなんてなかったんだろう


「ずっとひとりぼっちのような気がして… おもしろい、楽しい、ってことしてないと自分がつまらない女みたいに感じて…」


「だけど、楽しいって思って過ごしてても家に帰ってきたら一人ぼっちで寂しくて寂しくて… 誰でもいいから一緒にいてくれる人、友だちが欲しかった…」


お茶を飲んで、ため息をつくマキ…

知らなかった、マキのこんなところ

わたしの知ってたマキはほんの一面だった

現在いまのわたしにはマキの言ってることが驚くほど理解できるし、同じように感じることができる

17歳って言ってもいろいろで、やっぱりまだ子どもなんだって感じることもある…

自分も17歳を経験して、17歳の子どもを育てて、だからこそ感じれる視線や視点がある


それが現在いまのわたしなんだ…

人生経験の積み重ねがわたしの理解をより深いものにしているんだ、とあらためて実感する


「どうして、こんなことわたしに話すの?」


「だって美紗緒は…優しいから…」


マキの言った『優しい』にどれだけの意味が込められてるかはわからない

ただ優しいだけの男子もいただろうし、その優しさに翻弄されることもあっただろう

マキがわたしに感じてくれている『優しさ』ってなんだろう、短いマキの言葉がわたしには深く響いた


「だから… だからね、、、ごめんなさい… あの時、根暗だとか言っちゃって…」


覚えてたんだ…

わたしの目を見れないのか俯きながら話しを続ける


「そう言うのがおもしろいのかなって思ってた… 笑えるのかな?って… 美紗緒や茶道部の子のことなんて考えてなかった…」


「で、ずっとひっかかってたのね?」


わたしの声にハッとなって顔を上げたマキ

こくんと頷いて意志をみせた

わたしと仲良くなればなるほど ひっかかってたものは大きくなってたんだろう


「根暗な茶道部員があなたに華やかな浴衣を着付けましたよ~!!」


しんみりムードを吹き飛ばしゃうくらいのおどけた声をわたしは出した!

マキのびっくりした表情はすぐに笑顔に変わる!!

マキはわかってる! 素直になってる!

やっぱり笑顔が一番かわいいんだよ、マキ!


「ほらね、美紗緒は優しい!!」


にっこり微笑むマキの目尻に光るものが見えた気がした


「だって 友だちだもん!!」


わたしの言葉に安堵し、ほころぶマキの笑顔…

光るものは頬をつたってた…














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