83話 マキんちへ
◇
花火大会当日、浴衣を着たわたしは午後からマキの家へ向かっていた
マキの家で浴衣の着付けを手伝うために
初めて訪れるマキの家… 過去も何度かマキの家には行ったことがあった
ただ、いつも両親はいなかった…と言うかマキ以外誰にも会ったことがなかった
確かお兄さんはいるとは聞いてたけど見たことがない
もしかしたら今日初めて会えるかもと内心ドキドキしていた
ー ピンポン♪
懐かしい風景… でもずっと思い出すこともなかった
未来じゃマキは遠くに引っ越しててマキの実家に来ることなんてなかったから
マキが出てくるまで周りの風景を見ながら自分の記憶と擦り合わせていた
ー ガチャリ
「美紗緒! すごくかわいい浴衣じゃん!! 素敵!! あがって!!」
勢いよく扉が開いたかと思うと元気なマキの声が聞こえた
わたしの浴衣姿にいささかテンションが上がってるように見えた
「おじゃましまーす!」
わたしは家の中に聞こえるように大きめの声で挨拶しながら入って行った
「いま、誰もいないからー! 遠慮なくどうぞー」
わたしはマキについて家の奥へと進む
見るともなく見えてしまうマキの家の生活感…?
だけど生活感をあまり感じない
整然と片づけられた家の中… 整理されていると言うよりは必要最低限の物しか置かれてないかのように閑散としているようにも見えた
「美紗緒、ここ入って!」
マキが襖を開けて部屋にわたしを通す
そこには古い和箪笥が一つと大きな鏡の鏡台があった
「それにしてもかわいい浴衣だね、おかあさんのかな?」
わたしの浴衣に興味津々なマキ
わたしは中学生の時に買ったものだよと答える
確か中1の頃だったような記憶…
「早速で悪いんだけど、これ…」
マキは和箪笥に乗っかってた長持ちを足元に下ろした
長持ちの上蓋を開けて一枚の浴衣を取り出す
かわいらしいアサガオがあしらわれた浴衣
おかあさんが昔着ていたものらしい
大切に保管されてたであろうことが浴衣の状態から見て取れた




