76話 作戦
◇
わたしはマキを連れてテニスコートへ向かう
そこには楠木先輩らテニス部員たちがいるから
茶道部からテニスコートはすぐそこだ
旧校舎を出て少し階段をあがるだけ、そこに楠木先輩はいた
「こんにちは、楠木先輩いますか?」
わたしは5〜6人ほどテニス部員が集まって談笑しているところへ話しかけた
もう楠木先輩がいるのはわかっていたけど初めて話すことになるので知らないフリをした
「楠木はわたしだけど、あなたは?」
「二年生の重命美紗緒です」
「その重命さんが、どうしたの?」
「楠木先輩に対して謝りたいと言ってる同級生がいまして…」
「謝る? わたしに?」
「ほら、マキおいで!」
マキはゆっくりと階段の下から姿を現した
「あ! あんたは!」
楠木先輩はマキを見ると表情が険しく変わる
「わたしはマキの友だちです さっきマキから楠木先輩に謝らなきゃいけないの、と相談を受けました」
んっ? とわたしの話しに興味を示す楠木先輩
ここはなんとしてもわたしが収めなきゃいけないって気持ちだった
「事情はどうあれマキのとった行動は、彼氏の男友達が楠木先輩の彼氏だってわかっていたのなら軽率な行動だと思いました」
「悪気がなかったにしてもマキだって拒否できたはずだと、わたしはマキを責めました」
わたしの話しを楠木先輩は黙って聞いてくれていた
わたしはマキに目配せをして反省の態度を示すよう促した マキは俯いて両手を揃えうなだれているかのような態度をとった
「あんたはいつも男子相手に調子のいいことばっかり言ってるから勘違いされんのよ!って、そんなぶりっ子ばっかりしてるんじゃないの!って」
不服そうなマキの表情が思い浮かぶけど いまは仕方がない
「相手が楠木先輩の彼氏さんだってわかってたら尚更でしょ、って、一生懸命テニスを教えてくださってるテニス部の先輩に対して恩を仇で返す気なの?とも
ふわふわしてるから男子に勘違いされるのよ!自業自得なんだから!」
あることないことだけじゃなく、普段思ってる不満もこの際だから全部マキにぶつけてた
「ここで楠木先輩に思い切り叱られたらいいんだわ!
それか、許してもらえる訳ないだろうけど楠木先輩に謝るだけ謝ればいいんだわ!!」
「まぁまぁ、大泉さんも悪気が合ってやったわけじゃないだろうから…」
少し楠木先輩に懐柔する様子が見て取れた
もう少しだ!と思ったわたしは更にマキに畳み掛けた
「もう少し目の前の自分の楽しいだけにとらわれるの控えなさい! 周りもよく見て相手の気持ちも考えるの!」
ちょっとキツイ言い方になったかもしれないけど、これくらい言わないと楠木先輩が同情してくれないんじゃないかと無理矢理キツく言った
だけど… それに反応してたのは楠木先輩ではなく…
「なんかさっきから聞いてたらわたしのことめちゃくちゃ言ってない…? わたし美紗緒になんか迷惑かけた??」
えっ…? マキもしかしてキレてる??




