73話 ある夏の出来事
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ある夏の放課後…
授業を終えたわたしはいつものように茶道部へ向かっていた
誰ともなく早く授業が終わった人が部室の鍵を開け、窓を開けて部屋の換気をすることになっている
今日はクラスの担任が午後から出張で帰りのホームルールがなかったわたしは職員室に立ち寄り部室の鍵を取るとそのまま部室へ向かった
そりゃわたしが一番だよね…部室の窓を開け換気をする 暑いとは言え部室は日陰になってるので窓を開けていればまだ過ごしやすい
あっちの世界じゃ夏の暑さは地獄だったな…
まだ過去の暑さはホントにマシだったんだなと実感する
みんなが来るまでまだ時間はあるだろう、と少し掃除でもしながら待っていようかと考えていた時…
ー ガチャ ドタドタッ ー
部室のドアが開く音がしたかと思うと騒がしい靴の音が聞こえた
誰かが慌てて部室に入ってきたみたいだ
一年生が遅れたと思って焦って入って来たのかな?と思ったわたしは
「慌てなくていいよー!」
と声をかけた… けど… シーンとした空気感…
わたしは畳の部屋から部室の入口をひょいと覗いてみた
薄暗い入口付近に見える人影
真っ白なポロシャツに短いスコート、そこから日に焼けた手足が顔を出してる 動きやすいようにポニーテールにくくられた髪型
その人影は隠れるようにして入口から外を警戒していた
「だれ?」
わたしの声に驚いたように小さく飛び上がった人影は、ゆっくり振り返った
「マキ!?」
思わず驚いて大きな声を出したわたしに
マキは唇の前で人差し指を立てた
わたしは無言で頷くとゴクリとツバを飲み込む




