7話 美紗緒 中学2年生
そうだ! わたしは引き出しに入っていた手鏡を取り出す 真っ赤なプラスチックのフレームの手鏡 裏にはパティ&ジミーが描かれている大好きだった手鏡 二人が手を繋いだイラストを見ながら懐かしいと想いつつも、ドキドキしながら手鏡をゆっくりひっくり返し… 覗き込んだ
そこには紛れもなくわたしが写り込んでいた
寝癖でとっちらかってるショートヘアに、見覚えのある顔 美人ではないが愛嬌のあるかわいらしい顔だと思うし、そう思い込んでる!
わたしは右手でほっぺをつねったりして鏡に映った顔が自分だと確認する
⋯よかったぁ わたしじゃなかったらどうしようとおもったよ… ん? ん? んんっ!?
わたしはもう一度鏡を覗き込んだ!!
確かにそこにはわたしの顔が映ってはいたが…
「うわぁぁぁぁぁあああーーー!!!」
わたしは思わず叫んでいた 鏡の中のわたしは間違いなくわたしだったが それはわたしの知るわたしではなかった いや、知ってはいるけどちがう…だって鏡の中のわたしは幼い頃のわたし⋯⋯
さっきのノートにあったように、カレンダーに書いてあったように、まさに1978年! 昭和53年! 中学2年生のわたしなんだ!!!
なにがなんだかわからなく混乱するわたしのあたま
何度も鏡を確認して 実際に頭のてっぺんからつま先まで全部確認もした
パジャマを脱いで自分のからだをまさぐる
白髪なんて一本もなく、どこにも皺も肉の垂れた部分もなく、胸もぺったんこ、まだお尻も小さい
正真正銘のわたし… その事実に 心臓のドキドキバクバクが激しく なんなら少し頭もボーッとしてる
飲み込めない事態に内心オロオロしていると、
「どうしたの美紗緒? 変な大きい声だして? なんかあった?」
階下からわたしを気遣う母親の声が聞こえた
懐かしい母の声…
母はわたしが55歳の時に80歳で亡くなった…
とても優しい母だった
父はその2年前に亡くなったので まるで母が先に逝った父を心配して追いかけるように亡くなったような気がしてた
まさかこうして再び母の声を聞ける日がくるとは誰が思うだろう…




