67話 出会いと別れの季節
「重命さんはどうなの?」
「なにがですか?」
「好きな人とかいるの?」
それほど親しくなくてもこんな質問ができるところが森下先輩らしかった
この人ならこんなこと聞いてきてもおかしくないって思えたし、この人だから腹も立たないんだろうなとも思った
「そうですね、いると言えばいます」
「そうか、やっぱりね」
「やっぱり?」
「いや、ほら重命さんは愛想もいいし、愛嬌もあるし、なんだか母性みたいなのも感じるし」
最初の二つはいいとして、母性はだめでしょ、年下なのに… いや、上だけど…
「だれなの?うちの生徒?」
「言う訳ないじゃないですか!! それは秘密です!!」
やっぱりね、こういうとこは無神経…
当時は感じてなかったけど、高校生って言ってもまだまだ子どもだったんだな… 森下先輩が特別なだけかもだけど
「ふーん、そういうもんか… あ、ほらバス停!」
理由のわからない納得の仕方をしてた森下先輩も気づいたらバス停に着いていた
「じゃあここで帰るから、後は気をつけて帰ってね」
「ありがとうございます!おつかれさまでした!」
わたしは大袈裟にお辞儀をしてみせた
「こちらこそありがとう! いろいろと参考にさせてもらうね」
手を降って帰ってく森下先輩の後ろ姿を見送ってた
悪い人じゃないんだよね、ちょっと変わってるけど…
なんて思いながらバスの時刻表を見る
(あと5分か…)思ったよりもすぐだな、と前を向くと
反対側のバス停が目に入った
んっ? ふいに反対側のバス停に立っている女の子に目が行った…見た感じ同じ歳くらい…
私服なので同じ学校の子かどうかはわからなかったけど、なんだかその子はじっとこっちを見ているように感じた…
えっ?! マキ??
わたしが目を凝らして確かめようとした瞬間、向かいのバス停にバスがやってきた
バスに隠されるように消えるマキらしき女の子の姿
バスが走り去ったあとにその姿はなかった
(そうだ、二年生になればマキと出会うんだ…)
春は出会いと別れの季節⋯
そんな言葉が一瞬頭をかすめた…




