63話 森下先輩
二人残されたわたしたち…
「なんだろうね、でも先生たちも4月からの新年度の準備とか忙しいだろうしね」 ズズッ⋯
森下先輩がお茶をすすり、お茶菓子をつまみながら話しかけてくる
「そうですよね… 市原先生あんなに楽しい人だなんて思いもよりませんでした」 ズズッ⋯
わたしもお茶をすすり、お茶菓子をつまみながら話しを続ける
「重命さんも、もうすぐ二年生だね」
「ホントだ、確かに」
「後輩たくさん入ってくるといいね」 ズズッ
後輩? そっか後輩が入ってくるかも知れないんだ! ってことはわたしも先輩の立場かぁ~
これも幽霊部員だった過去にはなかったことになるのか… 嬉しくも なんか複雑⋯
「森下先輩はどうして部長や副部長はやらなかったんですか? みんな推薦してましたよ?」 ズズッ
「あー、そういうの苦手だから」
「進学しないんでしたっけ?」
「ううん、進学組だよ」 ズズッ
「だったら内申点とかあるんじゃないんですか? 部長とかしてたら?」
「そうだね〜 でもいいや」 ズズッ
なにを話すとでもない会話が続いてた
聞いたことにはなんでも答えてくれる森下先輩
なんとなく伝わってくる人柄から先輩がどうして部長を辞退したのかがわかる気がした
「僕はね茶道が好きなのかもしれない」 ズズッ
「好きだと思いますよ? 楽しそうだし、なにより森下先輩の所作は綺麗だと思いますし⋯ そういうのってちゃんと茶道に対しての理解が深くないと出てこないと思うんですよ」 ズズズッ
わたしは普段から思ってることをとくに意識もせずに話していた
⋯と、急に森下先輩が静かになった
どうしたんだろう?と森下先輩の方を見ると、
先輩は目を輝かせてわたしを見てた




