62話 茶道部にて
◇
ー 次の日
お昼を食べてから家を出た
お昼ごはんは焼きそばだったので青のりが歯についていないよう念入りに歯磨きもした
集合時間は14時だったので少し早目に行動してた
今日は学校に茶道部の気まぐれ部活動へと向かう
要は堅苦しい部活動じゃなくお茶を点ててお菓子をいただくってだけ
日頃の作法なんかをどれだけ活かせるか、みたいな感じで、まぁその後は茶話会になだれ込むみたいな
茶話会は顧問の市原先生が茶道をもっと身近なものとして捉えてほしいって導入してる感じだった
もちろん部員同士の親交を図るって意図もあるんだろし、なにより部員みんなの楽しみでもあった
なんだか久しぶりに感じる登校に少しウキウキしてた
だんだんと季節が春に近づいてるのを感じる気候もわたしのウキウキを後押ししてくれる
坂を下ってる間の景色もバスから流れる景色も少しずつ春の色を思わせるそれになってた
普段はユミと一緒に登校してるので一人で学校に向かうこと自体が珍しかった
とは言え三学期に入ってからユミはほぼ茶道部に顔を出していなかったので今日もおそらく来ていないんだろう…
寂しくもあり、彼氏ができるとそういうもんか、と納得してるところもある…
◇
学校に着くとわたしは部室へと急いだ
茶道部は旧校舎にあって校門からは少し離れてる
まだ一年生なんだしできるだけ早く着いて用意もしなきゃと思って走った
部室の前までくると明かりはもう点いていた
もう先に誰か来ているみたいだった
わたしは挨拶を出しながら元気に部室のドアを開ける
「こんにちはー! おつかれさまです〜!」
ドアを開けて少し歩くと立て込んだ和室がある
宿直室っぽい感じと言えばわかるかな?
初めて見た時には古い建物の中にあっては立派な作りに感じた
逆に考えると古い時代の方が茶道も重んじられてたのかな?なんて思えたほど
そこには十畳ほどの畳が敷かれていてそこでお茶を点てたりしていた
「こんにちは、どうぞ」
優しい声でわたしを迎えてくれたのは市原先生だ
「こんにちは」
市原先生の奥からちょこんと顔をのぞかせたのは
森下先輩だった
わたしは靴を脱いで和室に上がった
あれ?まだ他には誰も来てないのかな?
畳には市原先生と森下先輩としかいなかった
「まだ他には来てないんですね?」
「あぁ、それね… 僕が思いつきで提案しちゃったもんだから参加者は市原先生と重命さんと僕だけなんだよ…」
そうなんだ… なんかわたしが暇してたみたいでちょっと恥ずかしいじゃん…
「先生は春休みでも学校には来てるみたいだったから快くOKしてくれたのに申し訳なくって… 重命さんだけでも来てくれてよかったよ」
逆にわたしが来れなかったら中止にできたんじゃないかと思うと微妙な立場だなとも思った
わたしは市原先生と森下先輩と一緒にお茶を点てた
いつもと違うくだけた雰囲気がなんだか心地よかった
持ち寄った茶菓子を食べながらのお話しは茶道の豆知識や裏知識に留まらず先生たちの裏話まで多岐にわたってわたしを大いに楽しませてくれていた
普段見せない先生の表情や笑い声に市原先生への親近感もわいていた
ーピンポンパンポーン♪
『市原先生、市原先生、至急職員室までお戻りください』
二度、三度と同じ内容のアナウンスが流れた
なにごとかと耳をすませて聞いていた市原先生も自分が呼ばれていることに気づくと立ち上がり靴を履く
「いけない、つい楽しくて話し込んじゃった 最後の戸締まりは先生がやっておくからアナタたちも適当な時間になったら帰ってね いてもいなくても先生はもう一度部屋を覗きには来るから」
そう言い残すと先生は鍵を持ってそそくさと部室を後にした




