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60話 卒業も受験も



そうこうしてるうちに三年生が卒業の時を迎えていた


県立神城南けんなんの卒業式は2月の下旬なので卒業生にとって三学期は短い

受験組は三学期は殆ど学校に来ていなかったので尚更短く感じてるんじゃないかな


年が明けて共通一次試験があったりなにかと受験も追い込みだったりして大変な時期だ

三学期に入ってからは学校で継人のこと見かけてすらいなかった

わたしには継人の合格を祈ることしかできなかったから近くの神社へ合格祈願に行ったりもしてた

結果はわかってるんだけど、なんだかそうでもしてないと落ち着かなかったから


公立の大学の合格発表はまだってことで卒業式当日を迎えてもまだ進路の決まってない卒業生もいた

継人もその内の一人だった…

なんだかついこの間の中学の卒業式みたいだな、なんて思ったりもした


わたしたち一年生は卒業式には参加しなかったけど、わたしは部活って名目で学校には行ってた

継人たち進学組は入試こそ終わってたけど合格発表はまだってタイミングの卒業式

進路の決まってない卒業生たちは不安もあっただろうと思う でも校内で見かけた卒業生たちはみんな晴れやかな顔をしているように見えた

やることはやったってことなんだろう


わたしがこっそり文芸部の部室を覗きに行くとそこには継人の姿があった

久しぶりに見た継人 卒業証書の入った[賞状筒]を振り回す姿はわたしの目に子どもっぽくも映る

部員の子たちと写真を撮ったりサイン帳を書いたりと和気あいあいとした雰囲気になんだか安心した

そんな継人にわたしは心の中で『おめでとう』を告げてた…


無事に卒業式も終わり、程なくして文芸部の友だちから継人が大学に合格したと聞いてホッと胸を撫で下ろした

わたしの知ってる出来事が知ってる通りなぞられてたことに一番ホッとした



三年生が卒業した後の学校内はガラーンとしているように感じた

単純に生徒の数も三分の一減ってるんだしね


三年生が入っていた新校舎も生徒が半分抜けた分まるで生気を失ってるかのように思えた


陽の落ちるのがまだまだ早い夕方には そのコンクリートの無機質さと相まって暗闇に佇む廃墟のように見えた


その新校舎の佇まいにわたしは少し怖さを感じた…

その『怖さ』は過去いぜんのわたしも感じていた想いだと瞬間、感じとった


わたしは変わってないんだ…なぜだかそう思えたことが心強かった…



卒業式が終わると終業式、つまり一年生の終わりまですぐだった

とにかくいろいろあった一年間だったけど近くに継人を感じられてた

この一年は少なくとも校内で一緒に過ごせていたから

だけどその継人ももういない

ユミも今は大切な人との時間でいっぱいいっぱいになってる

なんだかここにきてわたしは一人ぼっちになったような気がした

実際はそんなことないのに…

友だちだっている、家族だっている、なに不自由なく楽しく高校生活を送れている… なのに感じるこの寂しさ…


なにをすればいいのかわからない、そんな春休みをわたしは迎えていた







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