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59話 必要なときにいない


その日はうちに帰ってからもなんだかずっとそわそわしてた

母の作ってくれた夕飯の味もよくわからないくらいに

大好きな筑前煮だったのに…


落ち着いてゆっくり考えてみたかった

ドキドキについて…

ホントのところは天使?に出てきてほしかったけど

こっちが望んでも出てきてくれたためしはなかった


お風呂も夕飯も終え両親には少し疲れたと言っていつもより早目に部屋に戻った

わたしは机に向かって引き出しから紙と鉛筆を出す

ふと、デスクマットの下に入れてる似顔絵に目が行く

[映画とかだと歴史が変わると絵や写真も消えてっちゃうとか演出あるよね…]

なんて思いながら薄くも消えてもない絵を見て安心する


「消えてたまるか!だってわたしにはしっかり記憶があるんだから!!」なんて誰に言うともなく声が出た


わたしは思いつくままわたしが覚えてる高校生での出来事を書き出していった

とは言ってみたものの…自分でも驚く程覚えてることが少なかった

県立神城南けんなんへ合格したこと、一年生はユミと同じクラスだったこと、ユミに彼氏ができたこと、茶道部だったこと、二年生でマキと同じクラスになって知り合ったこと、三年生の時にマキに継人を紹介してもらったこと、卒業してから短大に進学したこと、…ってこれだけ?!

実際その時にならないと思い出せないし、その時になっても『こんなんだっけ?』くらいにしかならない

それだけわたしの『日常』として日々を過ごしてるんだから当たり前と言えば当たり前なんよね


ただ、ハッキリとこれは違う!と言えることもある

絶対に森下先輩とあんなに話したことない!

そもそも名前くらいしか知らない先輩だったんだよ

それがなんで⋯⋯⋯!?


⋯⋯⋯ちがう、そうじゃない!!


大っきく違ってるところがあった⋯

つい自分が楽しくて日常化してしまってたこと

過去いぜんとは違ってしまってるところ⋯

つまり、それは、わたしが


『幽霊部員じゃなくなってること!!』


正直、過去いぜんのわたしは茶道部に入ったまではよかったけど、思ってたのと違った活動内容に夏休みを境にフェードアウト気味になっていってた

つまり、幽霊部員だったんだ…

それが、つい茶道部が楽しくて部活がある時はずっと参加してる…

もしかして…このことがわたしが知らない展開に結びついちゃってるとか…

やばい!やばい!やばい!やばーーーいっ!!!

そんなの望んでない展開だし! え、でも現在いまのわたしが望んでんのか…

だとしたらひどくない? わたしが現在いまを楽しもうとするのもいけないってことなのかな?

でも、まだなにか大きく違うことが成立してる訳でもないし、これ以上おかしなことになんなきゃいいだけだもんね… ってか万が一にもそんな展開にはならないけどね! 分別のついたいい大人なんだから、わたしは!!!

だから普通にいい子に今まで通り茶道部だって楽しめばいいんだよね、きっと…


てかさ、こんな時くらい天使?も説明にこいよなー





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