58話 それって?
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三学期が始まると三年生のいる新校舎はシンと静まり返ってるように見えた 進学組の多い校舎の北側なんてとくに… この頃はまだ大学への進学組と就職組が半々くらいだったんでクラス毎の差こそあったけど三年生の入る階はとくに緊張感が漂ってるように見えた
わたしは継人の受験結果こそ知ってたけれど気がかりでもあった
まさかここで結果変わったりしないよね?なんて…
わたしの方はとくに変わりない日常を送ってた…はずだった…
はずだったんだけど、思いもよらぬ出来事が起きた…
いつものように部活も終わり茶道部の後片付けをしていた時のこと… この日、ユミは部活を休んでたので後片付けをしながら一人で帰る準備もしてた
「重命さん、これちょっと片付けてもらってもいい?」
茶道の道具を片づけてた森下先輩(男子)に呼ばれて片づけを手伝う
茶道部自体はそんなに部員も多くなく三年生も卒部している今は準備と後片付けも少し負担が増えていた
使う道具の量自体は変わらないしね
森下先輩は茶道部では数少ない男子部員だ
『大人しそう』『優しそう』を地でいく見た目と性格でいつも最後まで残って後片付けを引き受けくれていた
その茶道に向き合う姿勢は「茶道を愛してる」と言っても過言ではなく、みんなが茶道をしているのを嬉しそうに見ていた
「重命さんは茶道好きなんだね」
「以前はそんなことなかったんですけど今は興味ありますね〜」
森下先輩とは今までゆっくり話す機会もなかったけど今日はいつの間にか二人きりになってたのでおしゃべりしながら後片付けをしていた
森下先輩はおばあちゃんの影響で小さい頃から茶道に親しんでたみたいで県立神城南に茶道部があったことから入部したんだって
おばあちゃんも喜んでくれて森下さんも入部して満足だったみたい
意外におばあちゃん子で優しいところがあるんだ
茶道についても詳しくて、わたしの質問にもスラスラと答えてくれて話しも弾んでた
「お手伝いありがとう 重命さんと話して楽しかったよ また茶道について話そうね」
森下先輩は笑顔で優しく語りかけてくる
今まで話してなかったとは思えないくらい距離が縮まったような気がしてた
「こちらこそありがとうございます」
わたしは丁寧に挨拶すると、さようならと言って部室を後にした
ほんの少しだったけどなんだか楽しい時間を過ごせたような気がした 不思議とふわふわした気分⋯
いつ以来かわかんないけどちょっと懐かしい雰囲気に青春ぽいものを感じてい…た?
んっ⋯? えっ? ちょっと待って…? こんなことなかった!! 過去はこんなことなかった!!!
さっきまでのドキドキとは違うドキドキがわたしを襲う… ユミがいないと帰り道は一人だ 一人ってことは気を紛らわせるための話し相手もいないんだ
なんだか急に怖くなって一人帰り道を急いだ…




