56話 ユミからの相談
◇
二学期も終わりが見えてきたある昼休み、ユミから相談を持ちかけられた
お昼休みは部室で二人一緒に過ごすことが多かったので部室に他に誰もいないタイミングを見計らってたんだろう
もちろん相談の内容は感づいてた
男子とのことでわたしの意見が聞きたいとのこと
ユミは至って真剣だった
「ミサを親友だと思って聞きたいの…
こないだ、わたしB組の佐伯って男子に呼ばれてね、なんの用かな?って思うじゃん、そしたらわたしと仲良くなりたいって言われてさ…」
なるほど、じゃやっぱあの時一緒にいたのは佐伯だったんだ
「そんなこと言われても佐伯のことなんてなんも知らないし、そもそもこんなこと初めてだし、ちょっと考えさせてって返事したの…」
え?もう文化祭終わって一ヶ月近くなるよ?まだ返事してないの?
「最近は佐伯も『あの件なんだけどさ』ってわざわざ聞きに来るようになってて…」
過去にユミからこの相談持ちかけられた時は二人の出会いがいつ頃なんてわからなかったけど、もしあの文化祭の時だったら佐伯も確かに焦らされててヤキモキしてるだろうなぁ…
「それっていつ? 佐伯に告白されたの?」
「告白なのこれ? 確か文化祭の日だったけかな」
⋯やっぱり⋯ ユミも罪な子だなぁ… そんなことわかってないから余計に罪だよ…
佐伯もそれでもユミのこと想ってるんなら案外いいヤツなのかもね
「ユミの気持ち次第なんじゃないかな? 話くらいはゆっくり聞いてあげるとか?」
「わたしと会ってもなんかぶっきらぼうだし、あいさつしても目を合わせないし、接し方がわからないんよ…」
あぁーそうゆうやつね、性格にもよるだろうけど思春期の男子にはあるやつだわ
人前だと照れるとか、からかわれるのがイヤで避けちゃうとか…瞬の時もそんなことあったな?
「照れてんじゃないかな? 佐伯のやつ… だとしたらユミに声かけるの勇気出してるよね」
もうね、なんかこういう相談が歯痒いと言うか健気だと言うか… そりゃさ、この年齢だと初めての経験なのかも知れないしいろんな想いがあるんだろうけどさ、いましかできない経験もあったりするんだし背中押したくなるのが大人ってもんだよね…
きっと当時のわたしもそうしてたハズだったし
「ミサならどうする? 佐伯にこんなこと言われたら?」
そこ佐伯!? いや、佐伯はわたしには言わんだろ…
「わたしじゃなくてユミの気持ちだよ? 佐伯のことやなの?」
「別にやだとかはないけど…」
「じゃ他に気になる人いるとか?」
「それもない…」
じゃあなにを迷ってるの?って聞きたかった…
けど聞けなかった、それがわかってたらわざわざ相談なんかしに来ないだろうしね
「佐伯は仲良くなりたいって言ったんだよね?」
「うん…」
「それもだめなの?」
「ううん、そんなことないよ… だからあいさつもするし話しかけたりもするんだよ?」
まぁ意識してる佐伯からすれば返事がないまま接せられてるのは生殺しみたいなもんなのかもな〜
ん?意識?もしかして…
「もしかして、ユミもそんな佐伯の態度に返事できなくなってんじゃない?」
ユミは黙って小さく頷いた
なるほどね、ちょっと時間が経ちすぎたってわけだ
じゃあ簡単なことじゃん⋯
そんくらいわたしが間を取り持つよ!
初々しいってのは時に焦れったいもんだな
「わかった! んじゃわたしが佐伯を連れてくる!」
「どうゆうこと?」
「いまここに呼んで来るってこと!」
「えっ!?」
「時間が経ちすぎてるんだよ! でもお互いこのままだとモヤモヤだけしか残らないよ? だからちゃんと話そ?二人で?」
ユミはまた黙って小さく頷く
ちゃんと二人だけで素直に話せば解決する!
わたしは急いで部室を飛び出すと佐伯を探して連れてきた!
「ユミ! ちゃんと話しするんだよ!」
わたしはユミに向かって大きく頷くと、佐伯の背中をバンッと叩いて部室から出てった…
あとは二人の問題だ
茶道部の部室を後にして教室へ向かいながら ふとわたしは考えた…
「過去はこんな展開じゃなかったような…? それともわたしが忘れてるだけなのかな…?」
いつの間にかわたしは腕組みをしながら歩いていた…
◇
その夜、ベッドで横になって今日感じた違和感を思い出してみる
なんだかわたしの記憶が曖昧なのか、ユミと佐伯の一連の流れがどうもしっくりこないのよね…
今日のユミたちのことはアレはあれでいいと思うんだけど、過去とは違うと思う
わたしが佐伯を連れてきたりした覚えはないし、なんだろ…? なんかしたかな?わたし…
これまでだって過去と違うことはあったかもしれない
だけど今回ほど疑問を抱くことはなかったように思う
一抹の不安が頭をよぎる…よぎったけど… 寝てた⋯




