50話 どうしよっかな
帰り道、ユミは文芸部についていろいろ話してたけど、わたしの頭には全然入ってこなかった
こういうとこわたしの悪いところなんだよな…ってわかっていても考えごとに頭の中支配されてるといつもこうなってしまう…
どんな感情に支配されてんのかハッキリしない自分に少し苛立ってさえいた
バスを降りてユミと別れて一人になったら尚更だ…
気を使うことがない分よけいにぐるぐる堂々巡り
家へと続く帰りの坂道も足取りが重かった
夜、ベッドに横になって自分の気持ちを整理する
ぐるぐるぐるぐる回ってる想いをきちんと理解しなきゃ
⋯で、だ… まずこのモヤモヤの正体だけと、一つ言っときたいのは決して『やきもち』なんかじゃないってこと! 継人はわたしの夫になるんだし妬く必要なんてないから…
自分に対してだけど、まず一番に否定しておかなきゃ
じゃあなんなんだ?ってことなんだけど、たぶん文芸部に入るかどうかなのかな?って思ってる
入ったらどうなるんだろう?とか考えたりしてたし、なにより継人の傍にいることができるなぁ〜なんて思ったりしてたし
でもね、それについてはやっぱりないかなー?と…
いろいろ考えてたからこそドキドキもしてたんだろうしモヤモヤもしてるんだろう
だけどね、今日部室で継人と西田茜さんとの距離を見た時、なんか複雑な気持ちになったんよね
部長と副部長なのはわかってるんだ、わかってるんだけど、なんかねー
こんな60も過ぎたおばちゃんがそんな気持ちになる訳ないって思っててもね、不思議⋯
だから、やっぱ文芸部に入るのはやめておこうかな、と。
継人と西田茜さんを見る度にこんな気持ちになるのもイヤだし…
なにより継人には継人の高校生活を送ってもらいたいしね
なんにもなけりゃ高校生の時は出会ってないんだし 最終的にはわたしと結ばれるんだし…
てか結ばれないと困るし… 子どもや孫ちゃんたちに会えなくなっちやうしね
ニ度目の人生とか言うとなんだか楽ちんとか思っちゃいそうだけど、なかなかどうして、結構な縛りがあったりして痛快なものにはならないんだよね…
そりゃ縛りにしたってわたしの望みが『孫ちゃんたちをまた抱きしめたい』だったりするからなんだけど…
大人になってるたって現在のわたしはやっぱ高校一年生のわたしなんだな…
ものわかりがいいふりしたって、やっぱりどこかもどかしく、それでいていい子ちゃんしてみたり…
親への配慮、友だちへの配慮、周りへの配慮…
そんでもって継人への配慮…
なんも考えてなくて未来も知らなくて一生懸命生きてただけのわたしに戻りたい… 戻ってるんだけど…
未来だと死んじゃってるし…
⋯⋯⋯結局現在を一生懸命生きるしかないってことだけは過去も未来も同じってことか…
眠りにつく前にはヘビーな考えだったけど、いつの間にか寝てた… カラダは正直なもんだった…




