49話 部長と副部長
「ねぇ、君たちもなんか描いてってよ! せっかくクラブ体験来たんだから」
違う部員さんが椅子を引きながらわたしたちに座るよう促してくれる どうやらさっきの女の人がいろいろ指示を出してるみたいだ
「なんだか高校見学の時を思い出すね〜」
ユミは椅子に座って机に向かう
確かにあの時と同じような展開…違うのはそれぞれみんな年齢を重ねてること
「ほら、ミサも座ろうよ! せっかく来たんだし」
ミサに急かされるようにわたしも座る
少し目を離した隙に継人がいなくなってた
「なんでも好きなの描いていいから! 別に絵じゃなくてもいいし、詩とか川柳でもいいよ」
「あの〜、あの人はどういった人ですか?」
わたしは部員さんに思い切って例の女の人について聞いてみた
「えっ? 誰のこと?」
「あの端っこの髪の長い女…」
「あーーー、部長のことね、西田茜さん、うちの部長だよ」
文芸部の部長なんだ!? それでいろいろ指示出してるように見えたんだ… 継人と二人で部長と副部長か…
「ほら、そこのが部長の作品 すごくない? あの人はきっとプロの漫画家になるんじゃないかなぁ?」
部員さんが指をさしたのはさっき見たとても上手なマンガだった
「さすが部長さんですね! あのマンガほんとにすごく上手だと思いました!」
プロの漫画家と聞いたユミが興奮気味に話す
それでもわたしにはそんな話し頭に入ってこなかった
モヤモヤしたものを忘れたくてわたしは紙に鉛筆を走らせてた
描き慣れた線を知らない間にひいてると絵が描けてる
意識しなくても描けちゃうもんもある…
「へぇ~うまいもんだ! これなら僕にもわかるよ! キキとララってやつだろ?」
「そうですよ、キキララかわいいんですよね〜」
わたしは絵を描きながら愛想で答える
だってまだ描きかけだったから、
「あの時は突然僕の名前を呼ばれたような気がしてびっくりしたよ! 勘違いだったみたいだけど?」
えっ!? わたしは慌てて振り返った!
いつの間にか継人が後ろに立ってわたしの描いてる絵を覗き込んでた
「いつの間にっ!?」
ん?と少し驚いた表情を見せた継人
「君はいちいちリアクションが大袈裟だね?」
クスクスと笑いながら
「さっきは言い忘れたてたんだけど あとで、これにお二人さん記入願えるかな?」
わたしとユミは継人からアンケート記入用紙なるものを渡された
『クラブ体験についてのアンケート』
なるほど、さっきのは部長にこの指示を出されてたのかな?なんて思った
その後も数名ちらちらとクラブ体験に来ている生徒がいた
継人は忙しそうに動いてたし、部長の西田茜もあちこち動き回ってた
一通りやることやったわたしたちは文芸部を後にした




